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転落の始まり side エリック
親が勝手に決めた婚約に反抗心があった。顔合わせに向かった相手の家の裏には魔獣が彷徨き、案内された部屋には5歳も下の無表情な少女がいた。ウエーブのかかる黒髪を下ろし、強い意思を宿すシトリンの様な金色の瞳。将来、美人になりそうな少女、ロゼッタは自分に向かって一度も笑わなかった。
交流のお茶会で会う度に条件を守れと言われ、嫌気が指して行かなくなったのは婚約して半年が過ぎた頃だった。獣臭いガキが婚約に条件まで付けて自分の気を引きたいのかと、交流の理由にしたいのかと勝手に思っていたし彼女にもそう告げた。只、彼女の持つ財力は申し分無く、そのまま婚約は継続してきた。
まさか、父上が頭を下げて申し込んだ婚約だったなんて、自分は何も知らなかった。三男の自分が少しでも楽して暮らせる様にと、親心から決めた事も。そして、魔獣に向けた笑顔を、自分に向けてくれない理由も知らなかった。
「もう息が上がったのか?情けない。基礎体力すら無いのか」
人を小馬鹿にしたような言い方に、カチンときたが、自分の口からはゼーゼーと息を吐く音だけが漏れた。
「その分では、婚約の条件の意味、理解しておらぬな?」
「い……み……」
微かに漏れた疑問は、大公様の耳に届いたらしい。呆れた表情をした後、大公様の横にいた魔獣を一撫でした。
「教えてやろう。何故、チャールストン家が君に条件を付けたのかを」
大公様の説明では、魔獣は人の心を臭いで感じとる。悪心を持つ者には決して懐かず、自分より弱い者には従わない。ギャンブルに手を出し女性と遊ぶ自分に、魔獣は懐かず従わないから条件を付けた事。そして、彼女はテイマーとして魔獣を従えるだけでなく、自分より余裕で獣騎士の訓練を受ける事も知らなかった。
「うそ……だろ」
思わす漏れた素の言葉に、大公様がため息を吐くと横にいた魔獣が睨んできた。二年もの時間があったのに、知らない事を改めて指摘され俯くしかなかった。
「お前が嫌がった婚約は、間もなく破棄される。訓練も今日で終わりだ」
「な……ぜ、ですか?」
驚いた自分の質問が、不快だと言わんばかりに大公様の眉間に皺が寄った。
「自分のしてきた事は何だ?彼女に歩み寄る事もせず、生活態度を改める事もせず」
一度、言葉を切った大公様と初めて正面から視線が合う。その瞳の奥に激しい怒りを感じて、体が震え始める。こんな瞳を見た事が無い。
「彼女に獣臭いと言ったそうだな。自分を受け入れない彼女が悪いとも」
震えを止めようと、自分の体に腕を回して押さえるが全く意味をなさない。気が付くと大公様以外の獣騎士達も、自分の回りに集まってきた。
「ロゼッタ嬢を獣臭いと貶した公爵家の息子って……お前か」
集まった彼等もロゼッタの味方だった。学園で受けた魔物との戦闘訓練なんて、遊びだと嫌でも実感する威圧と殺気。そして、国王陛下の次に権力を持つ大公様も……勿論、彼女の味方だ。
「その罪、自身の身を持って償え」
大公様は、悪魔の様な美しさで笑っていた。
交流のお茶会で会う度に条件を守れと言われ、嫌気が指して行かなくなったのは婚約して半年が過ぎた頃だった。獣臭いガキが婚約に条件まで付けて自分の気を引きたいのかと、交流の理由にしたいのかと勝手に思っていたし彼女にもそう告げた。只、彼女の持つ財力は申し分無く、そのまま婚約は継続してきた。
まさか、父上が頭を下げて申し込んだ婚約だったなんて、自分は何も知らなかった。三男の自分が少しでも楽して暮らせる様にと、親心から決めた事も。そして、魔獣に向けた笑顔を、自分に向けてくれない理由も知らなかった。
「もう息が上がったのか?情けない。基礎体力すら無いのか」
人を小馬鹿にしたような言い方に、カチンときたが、自分の口からはゼーゼーと息を吐く音だけが漏れた。
「その分では、婚約の条件の意味、理解しておらぬな?」
「い……み……」
微かに漏れた疑問は、大公様の耳に届いたらしい。呆れた表情をした後、大公様の横にいた魔獣を一撫でした。
「教えてやろう。何故、チャールストン家が君に条件を付けたのかを」
大公様の説明では、魔獣は人の心を臭いで感じとる。悪心を持つ者には決して懐かず、自分より弱い者には従わない。ギャンブルに手を出し女性と遊ぶ自分に、魔獣は懐かず従わないから条件を付けた事。そして、彼女はテイマーとして魔獣を従えるだけでなく、自分より余裕で獣騎士の訓練を受ける事も知らなかった。
「うそ……だろ」
思わす漏れた素の言葉に、大公様がため息を吐くと横にいた魔獣が睨んできた。二年もの時間があったのに、知らない事を改めて指摘され俯くしかなかった。
「お前が嫌がった婚約は、間もなく破棄される。訓練も今日で終わりだ」
「な……ぜ、ですか?」
驚いた自分の質問が、不快だと言わんばかりに大公様の眉間に皺が寄った。
「自分のしてきた事は何だ?彼女に歩み寄る事もせず、生活態度を改める事もせず」
一度、言葉を切った大公様と初めて正面から視線が合う。その瞳の奥に激しい怒りを感じて、体が震え始める。こんな瞳を見た事が無い。
「彼女に獣臭いと言ったそうだな。自分を受け入れない彼女が悪いとも」
震えを止めようと、自分の体に腕を回して押さえるが全く意味をなさない。気が付くと大公様以外の獣騎士達も、自分の回りに集まってきた。
「ロゼッタ嬢を獣臭いと貶した公爵家の息子って……お前か」
集まった彼等もロゼッタの味方だった。学園で受けた魔物との戦闘訓練なんて、遊びだと嫌でも実感する威圧と殺気。そして、国王陛下の次に権力を持つ大公様も……勿論、彼女の味方だ。
「その罪、自身の身を持って償え」
大公様は、悪魔の様な美しさで笑っていた。
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