[完結]貴方なんか、要りません

シマ

文字の大きさ
11 / 19

破滅の通告 side エリック

 大公様から訓練を受けた後、私は獣騎士の宿舎に泊まり込みをさせられていた。自宅とは違い自分の着替えや、部屋の掃除に洗濯等、今まで一度もしたことの無い事をさせられている。

「公爵家の子息に何やらせるんだよ」

 思わず愚痴が漏れる。こんな事をして何の意味があるのか分からないまま、サボれば懲罰があると言われて仕方無しに続ける。宿舎の裏で洗濯をしていた時、私の前に大公様が現れた。

「そんなやり方では汚れは落ちぬな」

 鼻で笑われてカッとなった自分は、まだ甘ちゃんだった。こんな事、生易しい物だとは知らなかった。

「文句がありそうだが、貴様がしている事はロゼッタは勿論、獣騎士は皆がしている」

 驚きで手が止まった。討伐遠征のある獣騎士は兎も角、貴族の令嬢がするはず無いと思って顔を上げると、視線だけで人を殺しそうな眼で私を見る大公様が居た。

「チャールストン家は魔獣の世話で忙しい。皆が自分の事は自分でやる。その上で勉学や訓練をする。貴様にその生活が出来るのか?」

 手に掴んでいた洗濯物が落ちるのも構わず、私は大公様の言葉を考えてみた。
 今の宿舎での生活をしながら仕事?ここで生活するだけで疲れる私に、更にやれと?どうして父上は、そんな家との婚約を進めた?

「明日の召喚状だ。婚約破棄が済めばそのまま帰宅すれば良い」

 茫然とする私に渡されたのは一枚の封筒。疑問だらけの頭の中に、帰宅の言葉だけはしっかり届いた。さっさと手続きを済ませて帰りたい、この時はそれしか頭に無かった。

「閣下も召喚される。そこで全てを終わらせよう」

「全てとは……他にも何か?」

 婚約破棄の手続き以外にも何かありそうな言い方が引っ掛かり、尋ねると大公様がニヤリと意味ありげに笑う。

「明日を楽しみにするが良い」

 それだけ言うと大公様は、振り向くこと無く何処かへ歩いて行った。あの表情は、きっと何かを隠している。何だ?……まさか父上の知らない何かを知っているのか?

「何れだ?ど……れが……バレた?」

 妊娠した女性達に金を渡した事か?借金か?借金取りは結婚してから返すと言ってあるから連絡ある筈がな……い?

「あの女達?……いや、平民が大公様と話が出来る筈……」

 言葉に出して考えた時、フッと会話を思い出した。


『これだけじゃ暮らしていけないわ!』

『煩い!もう金は無い!……あぁ、婚約者の家は金持ちだったな』

『えっ?婚約……者がいた?私を騙したのね!』

『知るか。チャールストン家に行けば何とかしてくれるかもな』

 あれは何時だ?私は確かに言った。チャールストン家に行けと、そこなら何とかしてくれると……遊びのつもりだった女に、避妊を忘れて妊娠させた事が何度かあった。その都度、手切れ金を渡して同じ様な事を言って追い返した。

「誰か一人でも本当にチャールストン家に行っていたら……?」

 私は……間違いなく廃嫡されて家から放り出される。その可能性にやっと気付いた私は、身体の震えがジワリとやってくる。

「私は……どうなる?」

 私の呟きは誰の耳にも届かずに消えた。

あなたにおすすめの小説

[完結]裏切りの果てに……

青空一夏
恋愛
王都に本邸を構える大商会、アルマード男爵家の一人娘リリアは、父の勧めで王立近衛騎士団から引き抜かれた青年カイルと婚約する。 彼は公爵家の分家筋の出身で、政争で没落したものの、誇り高く優秀な騎士だった。 穏やかで誠実な彼に惹かれていくリリア。 だが、学園の同級生レオンのささやいた一言が、彼女の心を揺らす。 「カイルは優しい人なんだろ? 君が望めば、何でもしてくれるはずさ。 でも、それは――仕事だからだよ。結婚も仕事のうちさ。 だって、雇い主の命令に逆らえないでしょ? 君に好意がなくても、義務でそうするんだ」 その言葉が頭から離れないリリアは、カイルの同僚たちに聞き込み、彼に病気の家族がいると知った。「治療費のために自分と結婚するの?」 そう思い込んだリリアに、父母がそろって事故死するという不幸が襲う。 レオンはリリアを惑わし、孤立させ、莫大な持参金を持って自分の元へ嫁ぐように仕向けるのだった。 だが、待っていたのは愛ではなく、孤独と裏切り。 日差しの差さない部屋に閉じ込められ、心身を衰弱させていくリリア。 「……カイル、助けて……」 そう呟いたとき。動き出したのは、かつて彼女を守ると誓った男――カイル・グランベルだった。そしてリリアも自らここを抜けだし、レオンを懲らしめてやろうと決意するようになり…… 今、失われた愛と誇りを取り戻す物語が始まる。

(完)婚約破棄ですね、従姉妹とどうかお幸せに

青空一夏
恋愛
私の婚約者は従姉妹の方が好きになってしまったようなの。 仕方がないから従姉妹に譲りますわ。 どうぞ、お幸せに! ざまぁ。中世ヨーロッパ風の異世界。中性ヨーロッパの文明とは違う点が(例えば現代的な文明の機器など)でてくるかもしれません。ゆるふわ設定ご都合主義。

どうしてか、知っていて?

碧水 遥
恋愛
どうして高位貴族令嬢だけが婚約者となるのか……知っていて?

酷いことをしたのはあなたの方です

風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。 あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。 ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。 聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。 ※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。 ※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。 ※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

婚約破棄のその後に

ゆーぞー
恋愛
「ライラ、婚約は破棄させてもらおう」 来月結婚するはずだった婚約者のレナード・アイザックス様に王宮の夜会で言われてしまった。しかもレナード様の隣には侯爵家のご令嬢メリア・リオンヌ様。 「あなた程度の人が彼と結婚できると本気で考えていたの?」 一方的に言われ混乱している最中、王妃様が現れて。 見たことも聞いたこともない人と結婚することになってしまった。

(完結)逆行令嬢の婚約回避

あかる
恋愛
わたくし、スカーレット・ガゼルは公爵令嬢ですわ。 わたくしは第二王子と婚約して、ガゼル領を継ぐ筈でしたが、婚約破棄され、何故か国外追放に…そして隣国との国境の山まで来た時に、御者の方に殺されてしまったはずでした。それが何故か、婚約をする5歳の時まで戻ってしまいました。夢ではないはずですわ…剣で刺された時の痛みをまだ覚えていますもの。 何故かは分からないけど、ラッキーですわ。もう二度とあんな思いはしたくありません。回避させて頂きます。 完結しています。忘れなければ毎日投稿します。

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。