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罰
カタカタと響く音。真っ白い顔の閣下は、陛下の言葉を聞いて何も言わなかった。
それは、無言の肯定。
私は心の何処かで『やっぱりか』そう思った。落胆と呆れの二つの感情しかない私は、多分、無表情で彼等を見ていると思う。
「婚約破棄の書類にサインをしろ」
陛下が閣下の前に書類を差し出す。大公様は別の書類をエリック様にも差し出した。それはエリック様が見捨てた女性達の要望書。彼女達は将来の為に子供の認知だけはして欲しいと言ったそうだ。認知はしても彼女達とその子供達には一生と会うなとも言われ、ガックリと肩を落としていた。
そして、陛下から二人に課せられた罰。それは……
「公爵家は当主を長男と交代とし、マリウス、エリックの両名は貴族籍の抹消と自領での魔物討伐の任務を科す。任務の期限は借金を完済するまでとする」
「そ、そんな!私は魔物と戦えない!」
陛下の言葉に反論した閣下の姿を見て、陛下と大公様が揃って大きなため息を吐く。その態度から罰を撤回されないと理解した閣下は、言葉にならない叫び声を上げると床の上に座り込んだ。その横でエリック様は頭を抱えて首を振って。
「嫌だ、嫌だ、助けてくれ、ロゼッタ!」
エリック様が涙目で私に助けを求めた。それは余りにも身勝手な気がする。だって……
「助けを求めた他者を捨てておいて、ご自分は他者に助けを求めるのですか?」
「あっ……いや、しかし……それは」
私の指摘に口を動かすが言葉にならない。ただ涙を流す彼等の姿を見ても何も思わなかった。愛情の反対は無関心と聞いた事があるけど……まさに今の私ね。2年以上、婚約していた相手に何も思わないわ。それよりも気になる事がある。
「あの、一つ質問しても宜しいでしょうか?」
陛下が頷いた事を確認してから、私は気になっていた二人の討伐について質問した。それは二人が討伐出来なかった時の対処。自警団や騎士団が機能していないのなら、街の人々に被害が出るかもしれない。関係のない人々が巻き込まれる事だけは避けたかった。
「その点は大丈夫だ。獣騎士団を引退した者を交代で見張りにつける」
大公様が仰るには引退したとはいえ、魔物討伐の能力は騎士団よりも高いが怪我等を理由に引退した方々だとか。討伐遠征すると数ヶ月、家に帰れなかったりするから、怪我をすると辛いものね。
「獣騎士団の任務は厳しいが、個々の能力的には申し分ないから安心して欲しい」
私が納得して返事をする横でエリック様が手を伸ばしてきたが、ネロが間に入り軽く噛みついた。
「っ!何故だ……今までは何もしてこなかったのに」
「それは、貴方が私に触れようとしたからです。次は腕がなくなりますよ」
そう言うとエリック様は自分の腕を抱えるように隠した。そんな事も知らなかったのね。
閣下とエリック様を兵士が部屋の外に連れ出して行く。絶望に染まる二人を見ても、私はただ虚しくなっただけだった。
「これで終わったのですね」
それは、無言の肯定。
私は心の何処かで『やっぱりか』そう思った。落胆と呆れの二つの感情しかない私は、多分、無表情で彼等を見ていると思う。
「婚約破棄の書類にサインをしろ」
陛下が閣下の前に書類を差し出す。大公様は別の書類をエリック様にも差し出した。それはエリック様が見捨てた女性達の要望書。彼女達は将来の為に子供の認知だけはして欲しいと言ったそうだ。認知はしても彼女達とその子供達には一生と会うなとも言われ、ガックリと肩を落としていた。
そして、陛下から二人に課せられた罰。それは……
「公爵家は当主を長男と交代とし、マリウス、エリックの両名は貴族籍の抹消と自領での魔物討伐の任務を科す。任務の期限は借金を完済するまでとする」
「そ、そんな!私は魔物と戦えない!」
陛下の言葉に反論した閣下の姿を見て、陛下と大公様が揃って大きなため息を吐く。その態度から罰を撤回されないと理解した閣下は、言葉にならない叫び声を上げると床の上に座り込んだ。その横でエリック様は頭を抱えて首を振って。
「嫌だ、嫌だ、助けてくれ、ロゼッタ!」
エリック様が涙目で私に助けを求めた。それは余りにも身勝手な気がする。だって……
「助けを求めた他者を捨てておいて、ご自分は他者に助けを求めるのですか?」
「あっ……いや、しかし……それは」
私の指摘に口を動かすが言葉にならない。ただ涙を流す彼等の姿を見ても何も思わなかった。愛情の反対は無関心と聞いた事があるけど……まさに今の私ね。2年以上、婚約していた相手に何も思わないわ。それよりも気になる事がある。
「あの、一つ質問しても宜しいでしょうか?」
陛下が頷いた事を確認してから、私は気になっていた二人の討伐について質問した。それは二人が討伐出来なかった時の対処。自警団や騎士団が機能していないのなら、街の人々に被害が出るかもしれない。関係のない人々が巻き込まれる事だけは避けたかった。
「その点は大丈夫だ。獣騎士団を引退した者を交代で見張りにつける」
大公様が仰るには引退したとはいえ、魔物討伐の能力は騎士団よりも高いが怪我等を理由に引退した方々だとか。討伐遠征すると数ヶ月、家に帰れなかったりするから、怪我をすると辛いものね。
「獣騎士団の任務は厳しいが、個々の能力的には申し分ないから安心して欲しい」
私が納得して返事をする横でエリック様が手を伸ばしてきたが、ネロが間に入り軽く噛みついた。
「っ!何故だ……今までは何もしてこなかったのに」
「それは、貴方が私に触れようとしたからです。次は腕がなくなりますよ」
そう言うとエリック様は自分の腕を抱えるように隠した。そんな事も知らなかったのね。
閣下とエリック様を兵士が部屋の外に連れ出して行く。絶望に染まる二人を見ても、私はただ虚しくなっただけだった。
「これで終わったのですね」
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