婚約破棄されたポンコツ魔法使い令嬢は今日も元気です!

シマ

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龍人の村編

閑話 学園の掃除 side アラン

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「アラン殿、君の報告書はじっくり読ませて貰った。私は実に不愉快な気分だよ」

 王弟殿下に呼び出され訪ねてみれば、開口一番にこう言われた。不愉快ってなんだよ。私にどうしろって言ってだよオッサン!
 言いたい事は腹の中に収めて、改めて王弟殿下と視線を合わせるとニヤリと左端の口だけを上げて笑っていた。

「私は前々から掃除をしたいと思っていたんだ。君には協力して貰いたい」

「私の様な若輩者に出来る事など少ないと思われますが、誠心誠意お手伝いさせて頂きます」

 私の返答をお気に召したのか悪どい笑顔で頷いた殿下は、部屋の角に控えていた騎士を呼び何かを指示する。指示が終わると俺に向き直り机の中から一枚の紙を差し出した。

「これは何かあった時の誓約書だ。君には重大な任務を頼みたい」

 誓約書の内容を確認すると“この部屋で見聞きした事を漏らさない”や“何が起きても責任は問わない ”なんて物騒な事が書いてある。これにサインさせると言う事は……

「私に何をさせる気ですか?」

「……黙ってサインはしないか。当然だな気にいったよ。君には自白魔法を容疑者全員に掛けて貰いたい」






 難しい自白魔法を使えだの自白の裏付けを手伝えだの。この数日、王弟殿下の使い走りにされて疲労困憊だったが、学園のゴミを消し去る事に成功した。学園長は辞任とニールセンさんへの損害賠償。不当な授業をした講師は全員、懲戒解雇と一部の命を危険に晒す様な事をした傍に者は騎士団へ突き出した。

「学園長は今頃、自宅で慌てているだろうな」

 そう言ったのは王弟殿下。学園長が辞任で済んでいたのは、この人が裏で手を回したからだ。講師はニールセンさんが魔力・知力共に高い事への個人的な嫉妬や妬みが多かったが、学園長は彼女の件以外にも不正入学斡旋に授業料滞納者への強制売春等、様々な罪が明らかになり被害者は数えきれない。

「あのクズ豚はどうでも良いですが、売春被害者の生徒達へのケアや不正入学者への対応はどうお考えでしょう」

「く、く、君もなかなか言うね。確かに元学園長より生徒達だな。不正入学者は再度、入試を受けさせ合格者は入学を許可し不合格は在籍抹消」

 在籍抹消とは元々、入学すらしていなかった事にされるという事か。まぁ、妥当だな。そう思って黙って頷くと、続けて滞納者への対応が記載された書類を渡された。

「被害者生徒はカウンセリングや通院治療費の保証。学費滞納者は成績評価で奨学金支給や教科書等の現物支給が決定した。後それとは別に学費半額免除制度を設ける」

 魔法関連の専門書は高価な物が多い。現物支給だけでもかなり助けになるはずだが線引きが難しい。王弟殿下と話し合い奨学金支給には返還義務があるものと無いものの二つを設けて試験させる。学費免除は親の経済状況の確認等、不正防止策を幾つか決め書類を纏め終わる頃には日が落ちて暗くなっていた。はぁ、ムカつくクソ殿下のせいで今日も残業じゃないか。

「おや、ご不満のようだなアラン殿。私の元で働けば講師より給料が上がるし出世も望めるのに」

 残業続きで不満が顔に出ていた私に、王弟殿下の茶化す様な言葉に苛立ちを覚えこめかみを押さえた。

「出世しなくて良いので、早く帰らせて下さい」

「は?……欲の無い事だ」

「そうですか。お分かり頂けたなら帰らせて下さい」

「噂通りの男だな。よし!明日は来なくて良い。しかし、明後日は朝から必ず来てくれ」

 俺は学園の講師であって王弟殿下の補佐官でも側近でもないんだが?どうせ言っても笑って話を流すと考えて私は、了承の返事だけすると書類に視線を戻した。



 そして、改めて朝から出向した私は、朝イチで王弟殿下より渡された辞令を読んで机の上に叩きつけた。


『辞令』

アラン・ホールズを本日付けで王弟クロード・ルーランドの補佐官に任命する



「これはどういう事でしょうか?」

「君の仕事ぶりは実に優秀だ。学園内も理解している」

「だから何だと言うのですか。取り消して下さい」

「期間は一年間だけだ。学園の掃除の後始末に付き合って貰う」

 執務室の大きな椅子に座って腕を組む王弟殿下は、真っ直ぐに私の目を見つめ返してくる。その目には強い決意が読み取れた。何が何でも改革させる気ですか。それは良いことですが巻き込むなよ!

「ニールセン令嬢が帰って来る時には、穏やかな学園生活がおくれるだろうなあ」

「何が仰りたい」

「君は彼女の様な生徒を二度と出さない為に必要な人材だと私は確信している」

 二度と出さない為と言われてしまえば断る選択肢は無い。覚悟を決めた私は一年の時限的処置として受け入れる事にした。

「さて、先ず君には不正入学者への意志確認と試験問題の作成を頼む」



オッサン、それは私一人でやる仕事じゃないだろうが!!


 

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