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その一
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この国、一番の宝石の産地ミレーニア。その採掘を一手に引き受けているのは領主のアイビン家。特殊な魔法を用いて、採掘される宝石は多種多様。しかし、その魔法はミレーニアの極一部でしか発動せず、アイビン家以外の者は使えないという。その為かアイビン一族は皆、魔力が高く魔法の才能に溢れていた。
そして、次代の当主で一人娘、ユーナ・アイビンは跡継ぎではない男性達から注目を浴びている。燃える炎の様なオレンジの混じる赤い髪と、強い意思を宿すルビーの瞳。その姿から『宝石姫』と呼ばれていた。
「おい、今日の舞踏会に宝石姫が来るって聞いたか?」
「あぁ、婿探しも兼ねているんだろう?お近づきになりたいね~」
「お前の怖い顔じゃ無理だろ」
独身男性の話題を閉めている「宝石姫」こと、ユーナ・アイビンは、回りから聞こえる言葉にため息が漏れた。
『その宝石姫が横に居ても気付かないおバカさんは話になりませんわ』
心でそう思いながら壁の花となって、周囲の様子を観察していた。夜とは思えないほど明るくホールを照らすシャンデリア。ホールの中央では、紳士淑女が手を取り合いダンスをしながら会話楽しんでいる。チラチラと様子を伺う視線や嫉妬や妬みの視線。
宝石姫と呼ばれ世間の注目を浴びるアイビン家の跡取り娘は、本当は非常に活発でお転婆だった。視察を兼ねて屋敷に王族が滞在していた時には、王子達を魔法でボロボロになるまで叩きのめす強者だ。その彼女からしても、纏わりつく視線は不快の一言。大きなため息が漏れた。
「やあ、ユーナ。久しぶりだね」
ユーナに掛けてきたのは、第三王子のクラークだ。クラークの登場で周囲に自分の存在がバレてしまって、無意識に眉間に皺がよる。
「あら、お久しゅうございます。クラーク殿下」
「……その気持ち悪い話し方止めて」
「身分差も周囲の目もございますので、無理ですわ」
彼女の本性を知るクラークからすれば、淑女の様にネコを被る姿は見慣れないものだ。そんな彼の態度に、ユーナはため息を吐いた。キン、と微かに甲高い音と共に空気が震えた次の瞬間、二人の周りから音が消える。急に音が消えて、クラークは周囲を見回した。
「え?何をした?」
「遮音の魔法よ。これで私達の話し声は聞こえないわ。分からないなんて勉強してるの?」
ムッとした表情に変わるクラークに、ユーナは再び大きなため息を吐く。
「自分で気持ち悪いって言ったクセに、不機嫌にならないでよ」
不快な視線を浴びて不機嫌なユーナは、普段よりも言い方がキツくなる。彼女自身、八つ当たりだと分かっていても、イライラして引っ込みがつかない。もう何年も前から婚約者だの跡継ぎだのと、欲に濡れた視線に晒されて彼女は心身共に疲弊していた。
「ごめん……八つ当たりだわ。もう疲れたの……陛下に挨拶したら帰るから」
何も話さないクラークの顔が見れなくて、頭を下げると、視線を合わす事無くその場を離れた。ユーナが動いた瞬間、遮音魔法も解けて、舞踏会特有の熱気と騒音が戻る。陛下へ挨拶する為の列に並ぶユーナを見送りながら、クラークは無意識に自分の手に血が滲むほど握り締めていた。
「ユーナ……僕は……君を助けたい」
クラークの言葉は、ユーナの耳には届かなかった。
そして、次代の当主で一人娘、ユーナ・アイビンは跡継ぎではない男性達から注目を浴びている。燃える炎の様なオレンジの混じる赤い髪と、強い意思を宿すルビーの瞳。その姿から『宝石姫』と呼ばれていた。
「おい、今日の舞踏会に宝石姫が来るって聞いたか?」
「あぁ、婿探しも兼ねているんだろう?お近づきになりたいね~」
「お前の怖い顔じゃ無理だろ」
独身男性の話題を閉めている「宝石姫」こと、ユーナ・アイビンは、回りから聞こえる言葉にため息が漏れた。
『その宝石姫が横に居ても気付かないおバカさんは話になりませんわ』
心でそう思いながら壁の花となって、周囲の様子を観察していた。夜とは思えないほど明るくホールを照らすシャンデリア。ホールの中央では、紳士淑女が手を取り合いダンスをしながら会話楽しんでいる。チラチラと様子を伺う視線や嫉妬や妬みの視線。
宝石姫と呼ばれ世間の注目を浴びるアイビン家の跡取り娘は、本当は非常に活発でお転婆だった。視察を兼ねて屋敷に王族が滞在していた時には、王子達を魔法でボロボロになるまで叩きのめす強者だ。その彼女からしても、纏わりつく視線は不快の一言。大きなため息が漏れた。
「やあ、ユーナ。久しぶりだね」
ユーナに掛けてきたのは、第三王子のクラークだ。クラークの登場で周囲に自分の存在がバレてしまって、無意識に眉間に皺がよる。
「あら、お久しゅうございます。クラーク殿下」
「……その気持ち悪い話し方止めて」
「身分差も周囲の目もございますので、無理ですわ」
彼女の本性を知るクラークからすれば、淑女の様にネコを被る姿は見慣れないものだ。そんな彼の態度に、ユーナはため息を吐いた。キン、と微かに甲高い音と共に空気が震えた次の瞬間、二人の周りから音が消える。急に音が消えて、クラークは周囲を見回した。
「え?何をした?」
「遮音の魔法よ。これで私達の話し声は聞こえないわ。分からないなんて勉強してるの?」
ムッとした表情に変わるクラークに、ユーナは再び大きなため息を吐く。
「自分で気持ち悪いって言ったクセに、不機嫌にならないでよ」
不快な視線を浴びて不機嫌なユーナは、普段よりも言い方がキツくなる。彼女自身、八つ当たりだと分かっていても、イライラして引っ込みがつかない。もう何年も前から婚約者だの跡継ぎだのと、欲に濡れた視線に晒されて彼女は心身共に疲弊していた。
「ごめん……八つ当たりだわ。もう疲れたの……陛下に挨拶したら帰るから」
何も話さないクラークの顔が見れなくて、頭を下げると、視線を合わす事無くその場を離れた。ユーナが動いた瞬間、遮音魔法も解けて、舞踏会特有の熱気と騒音が戻る。陛下へ挨拶する為の列に並ぶユーナを見送りながら、クラークは無意識に自分の手に血が滲むほど握り締めていた。
「ユーナ……僕は……君を助けたい」
クラークの言葉は、ユーナの耳には届かなかった。
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