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本編
町の人達にサヨウナラ
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引っ越しをするって言っても、受けた仕事が残ってるから今すぐには無理だ。それに勇者様のご飯の量を考えると、無限収納に食材を入れとかないと野宿になった時が困る。そこで私と師匠は修理に専念して、勇者様が配達と買い出しをする事になった。
町はそれほど大きく無いから、午後から私が勇者様を案内しながら挨拶回りする事になった。
「師匠、いってきます」
師匠が工場の入り口からヒラヒラと手を振る。勇者様と二人で再び、町を歩いて行く。町を離れる理由は身内に不幸があったから師匠の地元に戻るって事で話を合わせてある。
町を回りながらお得意様や、よく買い物していた店にも出来るだけ顔を出す。店が集中している場所は回ったから、後は個人宅や宿屋だけだけど流石に歩き疲れた。私、魔力切れから回復したばかりだったよ。
「イリーナ、休憩しよう。顔色が悪い」
「そうですね。疲れました」
少し先にある公園のベンチに座ると、勇者様が屋台を見つけてソワソワし始めた。あの屋台はドーナツと飲み物?その少し先には串焼きもある。おやつの時間には早いですよね?串焼きですか?
「……お腹、空いたんですか?」
「う。いや……はい」
勇者様が頭を掻きながら申し訳なさそうな顔をした。いや、責めてる訳じゃないんです。
「買ってきます。何が良いですか?」
「いや、自分で買うから休んでて」
立ち上がろうとした私をベンチに座らせると、頭にポンと手を置くと髪をグシャグシャにされた。
「お兄さんに任せなさい」
そう言って屋台に行く勇者様と反対側から、学生時代の同級生達が歩いてきた。
「ねぇ、さっき聞いたけど引っ越すの?」
一人が聞く。私が黙ったまま頷くと、一人が泣き出した。次々と別れの言葉を言われる。何時出発するのか、引っ越し先が何処なのか聞かれるが話せる事は少なくて、ずっと言葉を濁していたが一人だけ住所をしつこく聞いてくる。手紙書くとか言うけど、そんなに親しく無いのに……どうしよう……なんか……この子変だ。
「イリーナ、お待たせ」
困惑する私を助けてくれたのは勇者様だった。両手に屋台で買った食べ物を持って、器用に同級生の間をすり抜け私の隣にくると食べ物を押し付けてきた。突然の行動に首を傾げながらも受け取ると、空いた手を肩に添えて歩き出した。
「君たち悪いね。まだ、彼女と行くところがあるから、またね」
強引に私を連れ出した勇者様の目が、真っ直ぐに先を見ていた。さっきまでの優しさは無く、鋭いナイフの様に感じる。
「このまま帰りますか?」
「……あぁ……気付いたのか?」
その言葉に私は黙って首を横に振った。
「どうしても納得がいかなくて……」
「……顔を知っているからこそ分からない……分かりたくないよな」
勇者様の言葉が胸に刺さる。……気付きたくなかったけど……さっきの子が……内通者なんだろうな。
「あの子、どうなるんですか?」
「……師匠を巻き込んでる時点で、お咎め無しは無理だな」
彼女に何があったか分からないし、家庭環境も知らないけど罪は罪か。
「なんか切ないです」
勇者様がそうかと一言言った後、また、私の髪の毛をグシャグシャにした。なんだか気に入ってます?私は最悪なんですがね!
「家でゆっくり食べるか」
だった。これ買いすぎじゃないですか?
「これ何人分ですか?」
「え?俺、一人分だけど。食べたかったか?」
屋台に追加を買いに行こうとする勇者様を慌てて止めて、そのまま家に帰った。後、何日、この家に帰れるかな?
町はそれほど大きく無いから、午後から私が勇者様を案内しながら挨拶回りする事になった。
「師匠、いってきます」
師匠が工場の入り口からヒラヒラと手を振る。勇者様と二人で再び、町を歩いて行く。町を離れる理由は身内に不幸があったから師匠の地元に戻るって事で話を合わせてある。
町を回りながらお得意様や、よく買い物していた店にも出来るだけ顔を出す。店が集中している場所は回ったから、後は個人宅や宿屋だけだけど流石に歩き疲れた。私、魔力切れから回復したばかりだったよ。
「イリーナ、休憩しよう。顔色が悪い」
「そうですね。疲れました」
少し先にある公園のベンチに座ると、勇者様が屋台を見つけてソワソワし始めた。あの屋台はドーナツと飲み物?その少し先には串焼きもある。おやつの時間には早いですよね?串焼きですか?
「……お腹、空いたんですか?」
「う。いや……はい」
勇者様が頭を掻きながら申し訳なさそうな顔をした。いや、責めてる訳じゃないんです。
「買ってきます。何が良いですか?」
「いや、自分で買うから休んでて」
立ち上がろうとした私をベンチに座らせると、頭にポンと手を置くと髪をグシャグシャにされた。
「お兄さんに任せなさい」
そう言って屋台に行く勇者様と反対側から、学生時代の同級生達が歩いてきた。
「ねぇ、さっき聞いたけど引っ越すの?」
一人が聞く。私が黙ったまま頷くと、一人が泣き出した。次々と別れの言葉を言われる。何時出発するのか、引っ越し先が何処なのか聞かれるが話せる事は少なくて、ずっと言葉を濁していたが一人だけ住所をしつこく聞いてくる。手紙書くとか言うけど、そんなに親しく無いのに……どうしよう……なんか……この子変だ。
「イリーナ、お待たせ」
困惑する私を助けてくれたのは勇者様だった。両手に屋台で買った食べ物を持って、器用に同級生の間をすり抜け私の隣にくると食べ物を押し付けてきた。突然の行動に首を傾げながらも受け取ると、空いた手を肩に添えて歩き出した。
「君たち悪いね。まだ、彼女と行くところがあるから、またね」
強引に私を連れ出した勇者様の目が、真っ直ぐに先を見ていた。さっきまでの優しさは無く、鋭いナイフの様に感じる。
「このまま帰りますか?」
「……あぁ……気付いたのか?」
その言葉に私は黙って首を横に振った。
「どうしても納得がいかなくて……」
「……顔を知っているからこそ分からない……分かりたくないよな」
勇者様の言葉が胸に刺さる。……気付きたくなかったけど……さっきの子が……内通者なんだろうな。
「あの子、どうなるんですか?」
「……師匠を巻き込んでる時点で、お咎め無しは無理だな」
彼女に何があったか分からないし、家庭環境も知らないけど罪は罪か。
「なんか切ないです」
勇者様がそうかと一言言った後、また、私の髪の毛をグシャグシャにした。なんだか気に入ってます?私は最悪なんですがね!
「家でゆっくり食べるか」
だった。これ買いすぎじゃないですか?
「これ何人分ですか?」
「え?俺、一人分だけど。食べたかったか?」
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