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本編
エルフとドラゴン side ランバート
しおりを挟む『師匠、助かる?』
そう俺に聞いてきたイリーナは、今にも泣きそうだった。これ以上、彼女に泣いて欲しくなくて、城を出ると直ぐに魔力で身体機能強化をして走り出した。
人や建物に触れるだけで破壊する可能性がある為、滅多に使用しないが今はそんな事を構っていられない。地面を蹴る度に穴が開く事も構わず走り続け、夜更けに差し掛かる頃、エルフの住む森に辿り着いた。さて、素直に会ってくれるかな?
「オーウェン殿、お会い願いたい」
強化の魔力を解いて、森に向かって話しかけるが、当然、返事はない。エルフは人間と関わる事を極力避ける。何か、彼の気をひくモノがあれば良かったが……
「海のドラゴン」
イリーナが言っていたドラゴンの事を思い出していると、つい言葉にしていた。
『小僧、誰からその名を聞いた』
少し怒りを含む様な、低い声だけが辺りに響く。この声は、間違いなく探しているエルフのモノだ。
「オーウェン殿、この名は剣が教えてくれました」
少しの沈黙の後、森の木々が左右に別れ道を作り始めた。
『その道を進め』
「ありがとうございます」
どうやら会ってくれるらしい。言われた通りに、木々の間を抜けると一軒の木造の家の前に出た。以前見た工房とは違う場所だが……剣が光っている?
「入れ」
建物の前で立っていた俺に、中から声が掛けられた。その声に従いドアを開けると、オーウェン殿が背中を向けて椅子に座っていた。
「お久し振りです」
挨拶をしても返事はないが、微かに耳が動いた。暫しの沈黙の後、やっとオーウェン殿が俺の顔を見た。
「剣が教えてくれたとは何だ?」
早く本題に入りたいが、機嫌を損ねると家を追い出される可能性が高い。逸る気持ちを抑えて、イリーナが剣に触れた時の出来事を細かく話した。
「その娘……ただの特異魔力では無いな」
「それは……自分には分かりません」
そうかとだけ言うと、彼は何か考えていた。それより早く、材料を持って帰らないと。
「剣に光りが……」
早く、師匠の為にもイリーナの為にも鱗をと考えた時、剣の魔石が淡く光り始めた。その光りに気付いたオーウェン殿が、微かに震える手で腰に差したままの剣に触れた。
「海のドラゴン……なのか?」
『久シイノ、友ヨ』
オーウェン殿が剣に話しかけると、返事が返ってきた。剣をベルトごと外して彼に渡すと、剣を抱き抱える様に受け取った。
『ソナタ、我ノ声二、気付カヌ』
「そうだったか……すまん」
『コ奴と娘二感謝セネバナラヌナ』
剣を抱えたままチラリとオーウェン殿がこちらを見たが、俺は何も言わずに話の行く末を見守る事にした。ドラゴン殿の話では、イリーナが触れた時に彼女の魔力で眠りから覚めたが、力が足りなかった様だ。俺の魔力を吸収して不足を補い、やっと話せる様になったらしい。
『ウヌトノ約束、果タシタゾ』
「あぁ、小僧から聞いた。誇りに思うぞ、友よ」
旧友と言葉を交わす彼の目には光るものが見えた。感動している彼には悪いが早く本題に入りたい。
『コ奴ガ困ッテオル。助ケテヤレ』
まるで俺の心を代弁するかの様なドラゴンの言葉に驚いて、俺の視線は剣に釘付けになった。
「友の頼みだ。話を聞いてやる」
「ドラゴン殿の鱗を二枚、分けては頂けないでしょうか?」
俺の言葉を聞いて片方の眉を上げ、視線が鋭くなった。思わず一歩、下がりたくなったが、グッと堪えて事情を説明した。師匠の魔眼の事やイリーナが魔具を修理している事を伝えると彼は深く息を吐いた。
「その魔具、おそらく私が作った物だ」
オーウェン殿が百年以上前、知人に頼まれて作った魔具。強烈な魔眼を抑え普通に生活したいと願った知人を助ける為の物。永い時を経て師匠の元にきて、そして、オーウェン殿と繋がった。
「縁とは、なんとも不思議なモノだ……小僧、頼みを聞いてやる」
「ありがとうございます!」
「ただし、特異魔力の娘に会わせる事が条件だ」
相変わらず無表情なオーウェン殿が、微かに笑っている気がした。ドラゴン殿も賛成なのか、剣も淡く点滅しながら光る。本気か?森から滅多に出ないエルフと彼女を会わせる?城までどうやって移動する?はぁ、問題山積みだな。
イリーナ、ごめん。材料は手に入ったけど、大変な事になりそうだ。
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