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本編
青空市
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ギルドを出た後、ランバートさんに何が買いたいのか尋ねられた。旅の準備がしたいと言うと、彼は少し驚きながらも今日は公園の広場で青空市が開催されていると教えてくれた。青空市って、短期限定市の事でしょう?今まで見たことないや。
「青空市に行くの初めてです」
「そうか……急に旅の準備って、何故か理由を聞いても良いか?」
「あー、実は……」
ランバートさんに部屋で大人しくしている事に飽きた事と、気分転換に違う事を考えていた時に思い付いた事を伝えた。急に言い出したから驚いたのかな?
「そうか……だったら目的地も決めて無いのか?」
「目的地?」
「あぁ、北と南で装備が変わるぞ」
彼に言われるまで、そんな事にも気付かなかった。そうか、出発する季節でも違うよね。確かお母さんが冬なのに防寒着がなかったとか言ってたなぁ。
「そうですね……今日は止めておきます」
今日は買い物を諦めよう。そう考えて俯いていたら、彼が急に私の顔に手を添えると上を向かせた。え?急にナニ?
「寝袋や靴。マントくらいは、今から買えば良い」
「え?でも……」
「足りない物は、後から買い足せば良いだけだ」
彼に言われるまで後から買い物に行くとか、何時でも外出が出来る何て考えてもいなかった。でも、今朝の事を考えると気軽に買い物に行っても良いのかなあ?
「今朝の事を気にしているのか?」
何も言えずに黙っていたら彼に指摘されて頷いた。いまだに添えられたままの彼の手に力が入る。彼が私の目を真っ直ぐに見詰めた後、柔らかな日だまりの様に笑った。
「何時でも俺が連れて行ってやるから気にするな」
あっ、そっか……一緒に旅てくれるって……両親みたいな旅に、私と行くって言ったんだった。
「良いの?そんな我が儘……本当に言っても良いの?」
「バカだなぁ、そんなの我が儘なんて言わないぞ」
「我が儘じゃない?」
「それくらいのお願いなんて、何時でも叶えてやるからもっと言ってくれ」
彼の言葉が嬉しくて目元が熱くなる。涙を堪えながら頷くと、彼は顔から手を離し私の手をしっかり握った。
「ほら、見えてきたぞ。今日は、店の数も多いな」
彼の声につられて視線を動かすと、大きな公園の広場に大小様々な店が並び、店員と客の賑やかな話し声が聞こえ始める。
以前、住んでいた町の市とは比べ物にならないくらい大きな規模の青空市が開催されていた。
「……この規模で青空市?」
「あぁ、週末の二日間限定だが、ガラクタから一級品まで様々な物があるぞ」
はぐれない様に手を繋いだまま広場に足を踏み入れると、直ぐに店員さんから声が掛かる。怪しげな壺や魔法の武器に日持ちする焼き菓子の店。目まぐるしく変わる店に気を取られて最初の目的をすっかり忘れて見入っていた。はぁ……見ているだけでも楽しい。
「イリーナ、あの店は靴を扱っているみたいだ」
ランバートさんが指す方を見ると、色とりどりの靴が見えた。女性向けの靴専門店のようだった。近付いて見ると鮮やかな赤いドレス用の靴から、革製のしっかりしたブーツまで並んでいる。その中から焦げ茶色のショートブーツを手に取った。前は紐でしっかり結べるその靴は、植物が型押しされていて光の加減で模様が浮かび上がった。
「これ……履いてみても良いですか?」
店員さんに尋ねると笑顔で、敷物の上に椅子が置いてある場所に案内された。汚す心配もない場所で試しに履くと、型を取ったみたいにピッタリ合った。
「凄い、軽い!」
「良いな。爪先はキツくないか?」
ランバートさんが私の前に跪くと、踵や爪先に触れて確認する。靴のサイズをみているだけだけど、身体の大きな彼が跪くだけでも目立っていた。うぅ、視線がなんか痛い。
「大丈夫そうだな……どうした?」
「え?何でも無いです!これ買います」
ありがとうございますって店員さんが言いながら私の横に来ると、このまま履いて行くか聞かれたけど断った。新しい靴は旅に出る時に履きたいから、お金を払って受け取ると直ぐに無限収納に入れた。
「履きならさなくて良いのか?」
「はい、旅に出る時に履きたいから」
そうかとだけ言った彼は、次のお店を見付けてくれた。次のお店で防水性のマントと寝袋を買うと、彼は別のお店に行きたいと言って歩き出した。別のお店?何か買いたい物でもあるのかなぁ?私ばっかり買い物して悪いことしたなぁ。
「え?……ここですか?」
彼が止まったお店は可愛いの小物やアクセサリーが並ぶ雑貨屋さんだった。意外と可愛い物でも好きなのかもと思っていたら、私の物を買いたいと言い出した。え!?急に何で!!
「これは師匠からの頼みでもあるな」
そう言って教えてくれたのは、お義父様が好きな所に連れて行ってくれって言った事だった。……そんな事、影でコソコソ話ししてたの?二人とも変な所に気を使って……嬉しくて涙が溢れるじゃ無いですか。
「……泣かないでくれ……泣かれると困る」
「ふふ……困って下さい。泣かせる様な事を言ったんだから」
少し眉を下げたランバートさんに抱き付いた私は、小さな声でお礼を言うと彼が笑いながら返事をした。
「どういたしまして、俺だけのお姫様」
雑貨屋さんでお互いの色のピアスを買い、その場で相手の耳に着けた。私は蒼、彼は緋。お互いに耳に着いてるピアスを見て、照れ臭くて頰が熱くなった。へへ、なんか……嬉しい。
「帰るか」
「……そうですね。また、連れて来て下さいね?」
「勿論」
そうして私達はお昼過ぎに広場を出てお城に戻った。
楽しい一日の終わりは、憂鬱な気分になる事を私はまだ知らなかった。
「青空市に行くの初めてです」
「そうか……急に旅の準備って、何故か理由を聞いても良いか?」
「あー、実は……」
ランバートさんに部屋で大人しくしている事に飽きた事と、気分転換に違う事を考えていた時に思い付いた事を伝えた。急に言い出したから驚いたのかな?
「そうか……だったら目的地も決めて無いのか?」
「目的地?」
「あぁ、北と南で装備が変わるぞ」
彼に言われるまで、そんな事にも気付かなかった。そうか、出発する季節でも違うよね。確かお母さんが冬なのに防寒着がなかったとか言ってたなぁ。
「そうですね……今日は止めておきます」
今日は買い物を諦めよう。そう考えて俯いていたら、彼が急に私の顔に手を添えると上を向かせた。え?急にナニ?
「寝袋や靴。マントくらいは、今から買えば良い」
「え?でも……」
「足りない物は、後から買い足せば良いだけだ」
彼に言われるまで後から買い物に行くとか、何時でも外出が出来る何て考えてもいなかった。でも、今朝の事を考えると気軽に買い物に行っても良いのかなあ?
「今朝の事を気にしているのか?」
何も言えずに黙っていたら彼に指摘されて頷いた。いまだに添えられたままの彼の手に力が入る。彼が私の目を真っ直ぐに見詰めた後、柔らかな日だまりの様に笑った。
「何時でも俺が連れて行ってやるから気にするな」
あっ、そっか……一緒に旅てくれるって……両親みたいな旅に、私と行くって言ったんだった。
「良いの?そんな我が儘……本当に言っても良いの?」
「バカだなぁ、そんなの我が儘なんて言わないぞ」
「我が儘じゃない?」
「それくらいのお願いなんて、何時でも叶えてやるからもっと言ってくれ」
彼の言葉が嬉しくて目元が熱くなる。涙を堪えながら頷くと、彼は顔から手を離し私の手をしっかり握った。
「ほら、見えてきたぞ。今日は、店の数も多いな」
彼の声につられて視線を動かすと、大きな公園の広場に大小様々な店が並び、店員と客の賑やかな話し声が聞こえ始める。
以前、住んでいた町の市とは比べ物にならないくらい大きな規模の青空市が開催されていた。
「……この規模で青空市?」
「あぁ、週末の二日間限定だが、ガラクタから一級品まで様々な物があるぞ」
はぐれない様に手を繋いだまま広場に足を踏み入れると、直ぐに店員さんから声が掛かる。怪しげな壺や魔法の武器に日持ちする焼き菓子の店。目まぐるしく変わる店に気を取られて最初の目的をすっかり忘れて見入っていた。はぁ……見ているだけでも楽しい。
「イリーナ、あの店は靴を扱っているみたいだ」
ランバートさんが指す方を見ると、色とりどりの靴が見えた。女性向けの靴専門店のようだった。近付いて見ると鮮やかな赤いドレス用の靴から、革製のしっかりしたブーツまで並んでいる。その中から焦げ茶色のショートブーツを手に取った。前は紐でしっかり結べるその靴は、植物が型押しされていて光の加減で模様が浮かび上がった。
「これ……履いてみても良いですか?」
店員さんに尋ねると笑顔で、敷物の上に椅子が置いてある場所に案内された。汚す心配もない場所で試しに履くと、型を取ったみたいにピッタリ合った。
「凄い、軽い!」
「良いな。爪先はキツくないか?」
ランバートさんが私の前に跪くと、踵や爪先に触れて確認する。靴のサイズをみているだけだけど、身体の大きな彼が跪くだけでも目立っていた。うぅ、視線がなんか痛い。
「大丈夫そうだな……どうした?」
「え?何でも無いです!これ買います」
ありがとうございますって店員さんが言いながら私の横に来ると、このまま履いて行くか聞かれたけど断った。新しい靴は旅に出る時に履きたいから、お金を払って受け取ると直ぐに無限収納に入れた。
「履きならさなくて良いのか?」
「はい、旅に出る時に履きたいから」
そうかとだけ言った彼は、次のお店を見付けてくれた。次のお店で防水性のマントと寝袋を買うと、彼は別のお店に行きたいと言って歩き出した。別のお店?何か買いたい物でもあるのかなぁ?私ばっかり買い物して悪いことしたなぁ。
「え?……ここですか?」
彼が止まったお店は可愛いの小物やアクセサリーが並ぶ雑貨屋さんだった。意外と可愛い物でも好きなのかもと思っていたら、私の物を買いたいと言い出した。え!?急に何で!!
「これは師匠からの頼みでもあるな」
そう言って教えてくれたのは、お義父様が好きな所に連れて行ってくれって言った事だった。……そんな事、影でコソコソ話ししてたの?二人とも変な所に気を使って……嬉しくて涙が溢れるじゃ無いですか。
「……泣かないでくれ……泣かれると困る」
「ふふ……困って下さい。泣かせる様な事を言ったんだから」
少し眉を下げたランバートさんに抱き付いた私は、小さな声でお礼を言うと彼が笑いながら返事をした。
「どういたしまして、俺だけのお姫様」
雑貨屋さんでお互いの色のピアスを買い、その場で相手の耳に着けた。私は蒼、彼は緋。お互いに耳に着いてるピアスを見て、照れ臭くて頰が熱くなった。へへ、なんか……嬉しい。
「帰るか」
「……そうですね。また、連れて来て下さいね?」
「勿論」
そうして私達はお昼過ぎに広場を出てお城に戻った。
楽しい一日の終わりは、憂鬱な気分になる事を私はまだ知らなかった。
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