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第一世界 2章 魔国編

17,盗賊捕縛とお姫様

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「『魔力武器化・群青刀』」




 それは火蜥蜴との戦いで使った群青刀、それを右手に携え左手を前に出し無色の魔力を操り地面を薄く覆っていく。もちろん馬車とその護衛のような人達は範囲外に設定し謎の人達を範囲内に収める。

 魔力関係のステータスが下がってるせいでアジダハーカ戦の時みたいに魔力量にものを言わせたゴリ押しは出来ない。細かに範囲を決めることでその範囲内で限界を超えた事象を引き起こす。

 ・・・・・・城の書庫で呼んだ魔法関連の本、その中でも魔法の威力を上げる方法の項目の最後の方に高位の魔術師の中でもひと握りのもののみが扱える術とか書いてあったとおり確かに構築難易度自体は高い、それは認める。
 だけど僕の持つ多数の魔法系統スキルが融合した"魔神"と様々なスキルが混じりあった"森羅万象"による自動サポートのおかげで本来このステータスでこの範囲を設定する時にかかる時間よりも早く範囲指定構築し終えることが出来た。


そして刀の切っ先を地面に刺し対象の足元にある魔力と繋ぐ。今回は制圧、捕縛が目的だから殺傷力は不要、その代わり範囲と凍結速度を向上・・・・・・よし、


「さぁっ!凍りつけっ!」



 そう言うと瞬時に相手の足元に氷が広がる、地面が凍ったのに気づきそこから離れようとする者もいたがそれも間に合わず範囲内に入ったものから順に足元から胸あたりまで一気に凍りついていく。
 そして口まで凍らせ鼻から上だけ出した氷像が出来上がった。

 制圧完了、そして地面に刺していた刀を引き抜くとすぐに護衛の一人が話しかけてきた。

「まず救援感謝する、おかげで姫様共々助かった。」

 ん?姫様?・・・・・・これは地球にいた頃読んでたネット小説で何度も見た展開。

「名乗るのが遅れたが俺の名前はガルドという。この国、魔国で騎士団長の任に就いている。」

 ・・・・・・騎士団長がなんでこんな所にいるんだよ……普通騎士団長と宮廷魔導師団団長は国の防衛のトップだと思うんだけど。

「そして貴公には魔国王都に戻る我々について来て欲しい。我らの王が褒美を与えてくださるだろうからな。何より姫様の恩人を無碍にしたとなれば我らの恥だからな」

 ふむふむ、つまり自国の姫様を助けた冒険者に王様から褒美が与えられると。ダンジョン出てからここまでテンプレ展開多すぎかよ。

(まおくん今すごい顔してるよ?あの騎士さんからは見えてないみたいだけど戦闘面だけじゃなくてポーカーフェイスも鍛えたら?)

・・・・・・なんか微妙な気持ちになってたらアマテラスからそう言われた。

 ポーカーフェイスねぇ、まぁ対人交渉とかでは便利かもしれないし覚えようとはしてみるか。少なくとも覚えて損は無い技能だと思うしここは地球と違って治安は悪いから交渉で乗り切れる時はその方がいい。それに交渉するならその交渉に使えるものは多ければ多いほどいいし。

 それにしても褒美って言われても何を頼もうかな?

(相手は今代の魔王なのだから資金と拠点の確保程度なら簡単にこなすだろうからそれを頼むといいだろう。そして継続的に資金を得たいなら素材買取面での多少の優遇措置あたりが妥当だろうな)

 今度はルキウスか、まぁそのあたりが安定だよな。宿を借りるにしても謁見が終わったあとにまだ部屋があるかもわからないし。
 それと資金は一応ダンジョンの宝物庫から持ってきた財宝とゲートに入る前に適当に狩った深層の魔物の素材を売れば当分は困らないだろうけど金はいくらあってもいらなくなることは無いから金策に役立つものもあり。

 とりあえず魔王からの褒美にはまとまったお金とこの国を観光する間に使う寝泊まりするための場所と城で騎士団の訓練に参加する許可あたりを頼んでみようか。

 そんなことを考えていると馬車からメイド服を着た女性と黒いドレスを着た銀髪の少女がおりてきた。
 メイドを連れた少女、つまり身分は高いということ。そしてこの馬車にいるらしい姫様、はぁ……テンプレセンパイ仕事し過ぎで笑えない。

「初めまして、私は魔国第1王女、ネロ・フリードと申します。
予備の馬車は壊れてしまっているので私の馬車に乗ってくれませんか?」

 やっぱり姫様じゃないですか。そしてルキウスと同じフリード性か、ルキウス本人に子供はいないはずだからルキウスの兄弟の家系かな?
 馬車が1つしかないから同じ馬車に乗ってくださいなんて言われても相手は一国のお姫様なんだからダメだろ……お願いだから騎士団長さん注意してください。

「ふむ、本来は姫様と護衛以外を共に乗せることはしないが今回はそうなると恩人を歩かせることになってしまうか……よし、
貴公には姫様の馬車に乗って貰おう。さすがに恩人を歩かせる訳には行かないからな」

 おいこら、止めるどころか後押しするなよ、どこも騎士団長は豪放磊落な人しかいないんですかね……

(ねぇ、アマテラス)

(ん?どうしたの?乗せてくれるって言うんだから早く乗らないと、騎士団の人達に迷惑がかかるよ?)

(あー、早く帰って連絡しないといけないのは分かるんだけど。さすがに一般人と一国の姫様が一緒に乗るって色々とダメじゃない?)

(え?真緒くん自分のこと一般人だと思ってたの?始祖吸血鬼で神格持ちの時点で一般人どころか逸般人だよ?)

(・・・・・・つまり僕は一般人じゃないからその理屈は当てはまらない?)

(うん、それにそんなに嫌なら"森羅万象"と"万物創造"で移動用ゴーレムなんかを作れば解決するんじゃない?一応イメージ補強くらいなら私も手伝えるし)

ふむ、"万物創造"はゴーレムとかも作れるのか。そして"森羅万象"で補助も可能なら試してみようかな?

(そう言えば僕の魔力は制限かかってるせいで元より下がってるけどゴーレム作成に使う魔力は足りる?)

(うーん、多分足りると思うけど・・・・・・"森羅万象"なんて私たちから見てもとんでもないスキルあるんだしそれで魔力消費量を最適化すれば何とかなるかも?)

 "森羅万象"って名前からしてゲームのエンドコンテンツみたいだとは思ってたけど神様から見てもやばいやつなんだな。
 最後が疑問形になってたのが気になるけど"森羅万象"って魔力消費量の最適化も出来るのか……あれ?これ魔法関係の修行いらなくない?魔法関係は全部"森羅万象"と併用すれば……

(真緒くん、"森羅万象"のおかげで魔力消費量の最適化は出来るけどその他に魔法陣とか魔法の範囲指定とかも必要だから修行は必須だからね?)

 あっハイ。そんなに上手くは行かないですよね分かります。

「あのっ!」

 ん?アマテラスと若干現実逃避気味に掛け合いしてたらお姫様から声かけられた。

「ごめんなさい……迷惑でしたか?それならお父様には私から言っておきますので━━「いや、迷惑ではないよ」」

 はぁ、実年齢は置いといて少なくとも見た目中学生ぐらいの子に悲しそうな顔されると罪悪感がやばい。それに目の前の姫様が後輩にダブって見えるから余計に罪悪感が……

「うん、全然迷惑じゃないよ。問題ない、大丈夫。喜んで乗らせていただきますとも」

 
 自分でも何言ってるかよくわからないこと口走ってるけど姫様がさっきの悲しそうな表情から一転して笑顔になったからそんなのどうでもいいや。

(・・・・・・真緒って実は年下が好き?)


 いいえ違います。ただ知り合いと似た子が自分のせいで泣くのは普通に嫌なだけです。断じてロリコンではありません。ハッハッハ、晴空は何を言ってるんでしょうね!僕がロリコンなわけないじゃないか。アマテラスも同年代くらいの見た目だしね。

 なんて心の中で晴空に反論したり自己弁護したりしつつも馬車の中に入ると直ぐに出発した。さすが身分の高い人が乗る馬車なだけあって揺れもほとんどない。




 馬車の中では冒険者って言ったら姫様に移動時間中に冒険譚が聞きたいって言われたから奈落での色々を所々マイルドにして話した。さすがに片手吹っ飛んだとか体が破裂したとかは刺激が強すぎるしそもそも信じない可能性もあるしね。

 そして一応会話する時は相手が姫、王女ってことで敬語使ってたら敬語抜きで話すように言われて公の場以外では敬語抜きで話すことになった。




「マオさん王都が見えてきましたよ!」


 ちなみに王女さんは素で敬語を使ってるってことで敬語抜きにはならなかった。
 馬車の窓から見てみると言われた通り壁に囲まれた巨大な都市が見えてきた。人族側の王都より全体的に整理された感じのある街だな。ちょっと一足先に街並みを見てみようか。

("森羅万象"、魔力消費最適化、並列処理開始。"万物創造"、鳥型ゴーレム作成。"魔神"、幻影魔法付与、視覚共有。"空間侵蝕"馬車の壁に穴を開けてゴーレムを外に、そして開けた穴を元に戻す。これで終わり)

 並列処理のおかげで視界が2つあるけど同時に処理することが出来る。

 うん、やっぱり整理された感じだ。歴史の授業で道路を格子状に配置して碁盤の目のようになった街があったけどあれを四角形の土地じゃなくて円状の土地でやったような感じ。そして外周から内側に行くにつれて土地が高くなってる。
 テンプレ通りなら身分とかでどこに住むか別れてるのかな?最外周がスラムみたいな感じで城のすぐ外は貴族みたいに。

 今からこの馬車で行くのは中央にある城だけどこの馬車は外から中が見えにくくて助かった。
 見たことないやつが自国の王女の馬車に乗ってたりすればラノベによくいる対応が面倒なタイプの貴族に見つかったらろくなことにならないだろうからな。




 そしてそのまま上から見えた四方に伸びる大通りのうち1つを通って城の敷地内まで入った。

 僕が乗った時に王女さんのそばにいたメイドさんは後で降りるのかな?王女さんも座ったままだし━━━ってメイドさんからジェスチャーで降りるように促された。そして降りようとしたら今度は降りたらその場で待つようにジェスチャーされた。
 ・・・・・・てかジェスチャー万能すぎない?

 そして言われた通り降りてその場に待ってますけどね。降りた瞬間の周りの目がやばい。豪華な服着た貴族であろう人なんてこちらを値踏みするような視線を隠そうともしないし。

 アマテラスと晴空がこの場にいなくてよかった。特に晴空は……あの視線が晴空とアマテラスに向いてたらって考えるとね。
 もし2人がいたら?晴空に値踏みするような視線を向けてたらあの視線向けてるヤツら全員魔王様ルキウスにボコされるだろうし。
 アマテラスに視線向けたヤツらは僕が恐怖支配でトラウマ植え付けてから今の一般的な解呪師のレベルじゃ絶対解呪不可能な呪術かけて放置するね。その方が表立った騒ぎになりにくいし犯人もバレにくそうだし。


 値踏みしてたやつら悪運強いなとか色々考えてたら馬車から王女さんが降りてきた。僕が降りてから少し経っておりてきたのはメイドさんが髪とか服を整えてたからなのかな?

 そして馬車の扉から繋がる階段の途中でこっちに意味深な視線を向けてくるの早めて欲しいんだけどなぁ。そしてそばに付いてるメリアさんがこっちを見てるんだけど僕に何をしろと?

(真緒くん、早くネロちゃんの横に行って手をとって。この世界の貴族、王族の作法だよ)

・・・・・・まじかよ。女の人降りる時に男の人がその手を取って支えるのは作法なのか。まぁ僕より前にこの世界に召喚されて勇者として各国の上層部と会ったりした晴空が言うんだし従おう。


言われた通りに手を取って・・・この時点で視線がきつくなったけど無視無視、そして階段をおりてくる王女様に合わせて僕も進んで━━━━「あ・・・っ!?」ってちゃんと合わせてたはずなのにバランス崩した!?
 はぁ、"身体超強化"使って受け止められたからよかったけどこれ受け止められなかったらこの時点で今代の魔王様からの印象詰んでたんじゃない?


「あっ、ありがとうございます……」

若干顔が赤くなってるな。貴族達の視線がある中で足を踏み外したのは恥ずかしかったのかな?

(・・・・・・この朴念仁、これはアマテラスもこの先色々と大変そう)

(アハハ……まぁ私は一夫多妻は別にいいんだけどね。真緒くんのことを心から好きな人が増えるのは私も嬉しいし。でもこの部分は私も矯正するつもりだよ……)

 僕の中でアマテラスと晴空が何か話してるけど周りがうるさくて聞き取れない。まぁ僕に向けてのことなら僕の名前を最初に呼んでくれるからそうじゃないってことは僕に関係ないんだろうし気にしなくていいか。





 そして王女様、さっき僕が受け止めた時に抱きとめる形になってしまったとはいえ早く胸元から離れてくれませんかね?






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