奈落に落ちたら案の定裏ダンジョン直行ルートでした

猫蜜柑

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第一世界 2章 魔国編

25,実技試験開始

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 今日は学園の実技試験当日、実技試験は学科試験で振るいにかけられたことである程度まで人数を絞れたからか各国の試験会場じゃなくて学園で皆試験を行う。
 そのために学園まで行かないといけないため今日から3日、試験を受ける人とその家族限定で国王かそれに同等の立場にある人しか開放権を持たない転移門が開放され学科試験を突破した人はみなそれを使って学園近くにある各国の転移門に転移してから学園の試験会場に移動し試験を受ける。

 今日から2日かけて学科試験が行われその一週間後に試験結果が発表される。実技試験と言っても物理と魔法の二種類の試験があるため片方が苦手でも可能性はあるらしい。

 試験の順番を決めるくじを引いた結果ネロとメリアさん、そして離れてても話せる悠灯にも結果を聞いたところネロとメリアさんは同じ試験会場で悠灯と僕は2人とは別のところに行くことになるみたいだ。
 ちなみに試験会場は合計5つもありそれぞれが魔国王城にある訓練場と変わらない大きさで校舎も高さは城ほどでは無いが全長は城よりさらに大きいとか……入学してから迷うやつが出てくるんだろうなぁ……


 そんなことを思いながら自分が試験を受ける会場に到着して扉から中に入るとそこには明らかに私は魔法使いですと言わんばかりの中折帽にローブに杖という典型的な魔法使いの服装をした人がいた。悠灯は近接戦闘の試験があるって言ってたけど・・・・・・もしかして魔法試験と近接試験のどっちが先かは会場によって違う?



 まぁいいか、試験内容に変わりはないんだから集中しないと。集中するために精神統一を兼ねた瞑想をして魔力を体に循環させていると試験官であろう魔導師さんが口を開いた。


「皆さん、私は試験官のケイナ・メルクリアスです。これより実技試験を始めます、そこに設置してある的に各々今の自分が使える最高の魔法を放ってください。そして詠唱失敗による再詠唱は2度まで認められます」



 ケイナさんね、それにしても・・・・・・自分が放てる最高クラス??

 いやいや、そんなことしたら確実にここ壊れるから全力なんて出せるわけないでしょ。
 運のいいことに僕は中間くらいの試験番号だから先に試験を受ける人が使う魔法のレベルを見てその中で最もレベルが高いものの1段階上の魔法を使おう。というわけで受験生が使う魔法の観察開始。



 まず最初の人……うわ、美形、爆ぜろ。金髪赤目のイケメンとかラノベ主人公かそのライバル君かよ。はぁ、種族は人族で性別は男、そして身分は身なり的に貴族・・・・・・かな?明らかに貴族ってわかるようなゴチャゴチャした服じゃないけど生地はネロと街中を回った時に偶に見かけたことのある品のあるタイプの貴族が着てた装飾がシンプルな服に見える。
 それにしてもこの世界種族が分かりやすくて判断しやすいな。さてと、身分とかの観察はここまでにして使う魔法はどんなものかな?

 優良貴族(仮)が両手を前に突き出すように構え詠唱を始める。

「『炎よ、螺旋を描きて燃え上がれ』」

 ふむ、螺旋ってことは渦系かな?火系で渦系ってことはスクリュー系かストーム系のどちらかかな?属性複合とかならあては外れるけどさすがに一発目からそれは無いでしょ・・・・・・無いよね?
 まぁ続きを聞けばわかる事だから詠唱を聞き取るのに集中しよう。

「『そして炎の檻となりて我が敵を焼き尽くせ』」

 あ、これは確実にストーム系だな。渦状の炎に閉じ込めて焼き尽くすなかなかにコンセプトがえぐいやつ。一応この後別属性で追加詠唱が入れば複合魔法だけど多分無いだろ。

「━━━━『炎嵐』」

 そして詠唱が最後まで唱え終わると試験用の的の下に赤い魔法陣が現れそこから吹き出した渦巻く炎が的を炎の中に閉じ込め焼き尽くそうとする。
 だけど仮にも試験用の的として使われるものが使い捨てでは学園が補充にかける費用がとんでもないことになるだろうから燃え尽きはしないだろうけど。


 予想通り炎嵐が終わるとそこには1部焼けてるもののそれも即座に修復された。・・・・・・自動修復機能付きの的とか的としてかなり優秀だな。
 帰ったら陛下の書類仕事肩代わりする代わりとして訓練場にあれ配置するよう進言してみようかな。魔導師団の人達も魔法の試し撃ちが手軽に出来るようにとか言えば僕側に着いてくれるかもしれないし。




 それにしても……あの優良貴族くん(仮)以降は皆第1階梯の魔法でレベルが高い人でも魔法の中で威力の比重を置いた砲撃ブラスト系を第1階梯クラスで使うくらいだし。彼が使った第2階梯のストーム系以上を使う人は今のところ誰もいない。

 これは今のところ僕が使うのも最大で第2階梯の砲撃系までかな?陛下との修行(扱き)では第3階梯以上じゃないと防御すらせずにノーダメだから第4階梯とオリジナルをメインに使ってたけどやっぱり普通じゃなかったんだなぁ……さすが今の世代の世界最強の一角。ぶっ飛んでやがる。

 それにしても……このままだと僕の番が来るまで暇すぎる……また瞑想でもして時間を潰すか……








 ・・・・・・ん?確か僕は暇すぎて瞑想し始めたはずだけど突然周囲のざわめきが大きくなった。その理由がわからないし少しだけ見てみようかな。

 するとそこには魔法試験だと言うのに剣を持った銀髪に水色の髪が一房混じっている少し変わった髪の蒼い瞳を持つ少年がいた。・・・・・・うん、こいつも美形か。この世界美形多すぎんだろ……はぁ。見た目アドが強すぎる。

 まぁ少年と言っても僕と同い年か一つ下くらいの見た目だけど。でもなんで魔法試験で剣?地球で読んだラノベから想像するにこういうちょっと普通と違う奴は何かやらかしてくれそうだし少し注目して見てみようかな。



 そしてよく見てみると持っている剣が普通のものではなく僕もよく使う魔力で作られたものだって言うことがわかった。
 それに魔力視を発動すると体の中をしっかり循環している魔力まで見えた。

 ・・・・・・同じグループで試験受ける人の中で魔力循環している人を初めて見つけた。見た感じ種族は人族だけど魔力量はBランク~Aランクくらいありそうだな。これはどんな魔法を見せてくれるのか期待できそうだ。


 そう思いながら眺めていると元は右手にしかなかった剣が左手にも握られた。そしてそれを地面に突き立てると再び両手に剣を作りだしまた地面に突き立てる。それを何度か繰り返し周囲に立てる場所が無くなるとようやく詠唱を始めた。


 ・・・・・・眺めててわかったことだけどあの剣は魔力タンクとしての役割があるみたいだ。剣を形作る魔力と自分の体内にある魔力を一括りにして使える魔法のレベルを上げるつもりかな?
 本来魔力回復速度が相当早くないと出来ない芸当のはずだけど……



 そして詠唱が始まる。すると詠唱開始と同時にその体からドライアイスが気化する時に出る白い煙のようなものが出始めた。

「『我が身に眠りし銀の血よ』」

「『我は白氷龍と契りを結びし者』」

「『我が名に応じその力を今一度この身に現せ』」

「『此処に成るは人の身には余りし彼の龍の御業』」

「━━━━『凍刻』」

 詠唱が進むにつれ体から出ていた白い気体は彼の体を覆いだしそれが晴れると龍の鱗のようなものが皮膚に現れる。さらに白煙は勢いをどんどん増していく。

 白煙は体を覆い終えると今度は魔法陣に姿を変え始める。それは徐々に複雑な模様へと変化していきそれが完成し魔法が発動されるとすると試験の的が一瞬にして凍りつき、次の瞬間には粉々に砕け散った。しかも最初の貴族の時とは違い砕けた的の修復が始まらない。

 すると試験監督さんとその補助員だろう人が修復されない的をどこかに持っていき代わりに新しい的を補充した。



 そしてさっきのとんでも魔法を見て呆けてた人達の試験も終わり僕の順番になった。



 ・・・・・・さてと、どうするかね?今のところ1番レベルが高いのはあの銀髪の魔法だけど……この際新作魔法の実験台にでもするか。一応発動自体は安定してるし。

 最大火力で撃つと僕の魔力量でも総魔力の八割消費する上"あの"陛下が第3制限まで解除した上で全力防御するレベルの威力だから最大火力は使わないし使えない。だからまぁ、威力は最大の2割と少し、消費する魔力は最大値の2割でやるとしよう。

「『汝我らが祖なる大神より生まれ落ちし焔の子』」

「『其は邪悪に抗う者なり』」

「『其は永劫を拒絶し完全を否定する者なり』」

 詠唱を始めると同時に体から膨大な量の炎が噴出する。その焔は詠唱前に横に向けて上げていた右腕の掌へと集まり掌を握るように閉じると太刀のような形へ変化する。

「『これよりここに顕すは神代の災禍の再演』」

「『我が魂を焔へ焼べあらゆる不滅を焼却せよ』」

 詠唱が続く限り炎は噴き出し右手に握る大刀へと集まり放出する炎の量と熱をさらに高めていく。

「天上天下、等しく一切灰燼と帰せ━━━━━━━『火之迦具土ヒノカグツチ』」

 限界まで炎を取り込んだことで太刀から大太刀サイズへと変化した炎刀、それを腰だめに構え体全体を捻りつつ勢いをつけ、そのまま縦に振り下ろし一閃━━━━━━


 すると振るわれた太刀から詠唱中に取り込まれた炎が的に向かって放たれ、炎に触れた的が一瞬にして塵と化した。
 まぁ、こうなるだろうとは思ってたから驚きは無いな。うん、一応学園側の人には悪いことしたと思ってる。



 それから僕より試験番号が後の人が魔法を使ったけど1度も的が壊れることは無かった。だけど1人だけちょっと面白い人を見つけた。まさか火と水の複合魔法で水蒸気爆発みたいなことをするとはね。

 それ以降は大して変わったことも無く、この世界でも最高位に位置する学園の試験を受けに来るだけあって同年代の中でも頭一つ抜けてるんだろうけど……正直同じレベルの人が多すぎて余り凄そうには感じられないんだよなぁ。



 魔法試験が終わって試験官の人とそのお手伝いらしき人が的を片付けていった。

 さてお次は物理試験か。確か内容は試験官と訓練用の武器を使っての模擬戦だったか。


 それにしても僕の試験片方終わったけど悠灯達のほうは大丈夫だったかな?
 特に悠灯、魔法試験で自重してればいいけど……試験会場が違うから別れた時にその事を言い忘れた。自重しないと貴族の目に止まる、そして勧誘自分のものにしようとする害悪貴族の処理とか色々面倒臭そう。
 ネロは陛下との訓練の合間にちょっと魔法関係を色々魔改造したとはいえそれはまだ天才とかで済むレベルだから大丈夫、のはず。



 近接試験こと物理面の試験である模擬戦をする試験会場に着いた。そして魔法試験の時と同じく会場内には明らかに試験官であろう人が仁王立ちしていた。

「よお、俺がお前らの試験を受け持つマルス・グライディアだ。この試験では訓練用の刃を潰した武器を使って試験官との模擬戦をしてもらう。
 ルールは魔法の使用禁止、使ったやつは試験自体無効になるからそのつもりでな。制限時間は1人につき最大5分で俺が止めるかがそっちが降参すればその時点で終わりだ」

 ふむ、制限時間中ずっと試験が続く訳では無いのか。そして魔法禁止は何気に辛いな。奈落では一応生き残るために近接戦闘もやったけどそれは魔力での肉体強化とかその他もろもろを使っての近接戦闘だったんだよなぁ……しかも今ステータスが制限中だから奈落踏破直後よりランクが落ちてるし。

 一応スキルによる肉体強化と身体強化、あと空中機動、無尽走破は使っていいのか試験前に聞くか。
 それと僕は吸血鬼だけど太陽光による弱体化が効かないから素のスペックは最大まで引き出せるのが唯一マシなところだ。

 「これで試験についての説明は終わり。それじゃあ試験番号が若いやつから早速始めるぞ」

  一番最初は・・・・・・あぁ、魔法試験で最初だった優良貴族っぽい金髪イケメンか。魔法試験でも銀髪以外と比べて頭一つ抜けてたけど近接戦闘はどうかな?

 彼が選んだのはオーソドックスな剣。片手剣サイズのおそらく最も使い手が多いであろう武器だ。

 剣を片手に相対し、補助員さんが試験開始の合図を出した。

「ハァ━━━ッ!!」

 するとそれと同時に力強く地面を踏み込み一息に試験官であるマルスさんの元に肉薄し胴に向かって一閃した。

「フンッ!」

 しかしそれはマルスさんが持っていた大剣によって防がれる。

 大剣だから重いはずなのに瞬時に防御に割り込ませられるとは。筋力のステータス値が高そうだな。正面から打ち合わないようにしよう。

 それから切り上げ、腰を捻りながら勢いをつけての一閃、剣だけでなく手足も攻撃手段として組み込んで体術と剣術の併用をするも相手の対人経験値は遥か上を行く故その尽くに対処され強力な一撃を入れられないままどんどん時間が経っていく。

 そこでこのままでは埒が明かないと思ったのかなんと剣を相手に向かって勢いよく投擲した。そして1つしかない武器を投げつけられて驚いたのか一瞬マルスさんの動きが止まる。
 格好の隙を晒したマルスさんに向かって剣を投げると同時に走り出していた彼が迫り、直前で弾かれた剣を無視してその拳を振りかぶる━━━━ッ!


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