奈落に落ちたら案の定裏ダンジョン直行ルートでした

猫蜜柑

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第一世界 3章 学園編

35,実力至上主義

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「あーッ!!やっっっと見つけた!!」

 そう言って突っ込んできたピンクの人型、突然だったから急造で貼った障壁を足で支えて受け止めることになった。
 突っ込んできた勢いのままぶつかったから変な顔になってるけど気絶してないから問題無いよね。

「いったぁぁい……」

 ぶつかった人はそう言って立ち上がった。その人の見た目はボブカットくらいの桃髪に緑の目をしていて身長は目測だけどネロと同じか若干高いくらいかな。

「いてて……君たち風紀委員長がお呼びだよ~」

 ・・・・・・風紀委員長?名前すら知らない人になんで?しかも僕だけじゃなく悠灯とネロまでって。

「理由と貴女の名前を聞かせていただけますか?」

「うん、そういえば自己紹介まだだったねー。ボクの名前はステラ、ステラ・ハーゼリッターだよ!」

 ハーゼ、確かどこかの国の言葉で兎の意味だったかな?地球の言葉と同じ意味か分からないけどそう言われてみれば兎っぽさも……ある?いや、兎っていうよりかは犬っぽいな?
 よく見たら頭に髪の毛と同じ毛色の犬耳が生えてるし。

「それで理由だけど出ていくまでの騒ぎを見てた1年生がアッくん……あ、風紀委員長のことね。

で、その1年生がアッくんに言ってさっきの騒ぎを止めてもらおうとしたんだけどその前に君達がさっさとどこかに行ったからボクが探す羽目になったんだよ」

 アッくん、呼び名だけ聞くと凄い緩そう。一体どんな人なんだ。
 それにしても、呼ばれたのはあの婚約者ヅラのせいか。そいつのせいって言うのを聞いたネロが落ち込んでるけどそっちは悠灯が慰めてるから優先順位を1つ落としても大丈夫そうだ。

「了解、今から戻って風紀委員長さんに自己紹介すればいいんです?」

「うん、とりあえず両者の言い分を聞いて対応を決めるから」

 時間がかかりそうだけど早く行くに越したことはないからさっさと向かうかね。



 戻ってくるとさっきの婚約者ヅラとその取り巻き、それに加えてジークとヒルデさん、そして同じクラスのケーニッヒがいた。婚約者ヅラと取り巻きはわかるけど他はなんでいるんだ?

「アッくーん、言われた通り連れてきたよ~」

「ん?あぁ、ステラか、ご苦労。褒美にこの飴をやろう。それとその呼び名はやめろ。気が抜ける」

「わーい、アッくんありがとー。えー、別にいいじゃん。長い付き合いだし」

 飴を貰って喜んでる姿は飼い主から褒められてご褒美を貰った犬に見える。
 そしてアッくん呼びしてた人は黒髪に金とも茶色とも言えない、強いていえば黄土色っぽい目をした人だった。制服もピシッと着こなしてるし委員長感ある。でも普通の委員長って言うよりは場合によっては実力行使も一切躊躇わないタイプの委員長みたいな感じ。

「はぁ……もういい。好きにしろ。さて、まず初対面同士自己紹介をするとしよう。私の名前はアスタ・ヴィアチェイス、風紀委員長を務めている。それで話だが、何かわかるか?」

「あの私達はあそこの3人組が理由でしょうね」

「あぁ、その通りだ。それとゼーレンブルク達も理由は同じようなものだな」

 へぇ、同じような、ねぇ?そうなるとケーニッヒがヒルデさんに告白でもしたのかな?それで振られて無理やり物にしようとしたか。もし後者なら間違いなくギルティ不可避だけど。

「それで、来たわけですけど解決するまで話し合いでもするんですか?」

 正直話し合いするにしてもお互いの言い分は平行線になりそうだから無意味だと思うんだ。

「それは君たちが来る前にゼーレンブルクが却下してほか4人もそれに同意したからそれは無い。実力勝負、つまりは決闘だ。それで決めてもらう。呼んだのは決闘をするのに書類に合意の署名が必要だからだ」

「1つ聞きたいんですけど、"不慮の事故"で決闘相手が死亡した場合って何か罰なんかはあるんですか?」

「いや、それは無い。決闘をする場合事前に両者共に書類に合意の署名をする必要があるって言ったがそれに決闘の結果癒えない傷を負ったり死亡したとしても、それを与えた側に何も罰は与えられ無いっていうのが含まれてるからな」

 ふむふむ、なるほどね。そしてその後も聞いたいくつかの決闘のルールをまとめると、

『・決闘をする場合、参加者全員が書類に合意の署名をしなければならない。
・決闘中に受けた外傷、死傷は被害を受けた決闘者の自己責任である。
・基本1対1で戦うべし。
・上記の特例として、召喚士、ゴーレム使い等、もとより配下を使役する者は例外として配下を戦わせることを許可する。
・決闘の報酬が物ではなく人である場合、その者の決闘への参加は不可能である。
・両陣営の人数が同じであれば複数対複数の決闘も認める場合がある。
・上記の場合、1対1の決闘を1人1試合ずつ行い、勝ち越し数が多かった陣営の勝利とする。』

 っていう感じになる。まぁ決闘はちゃんとルールがないとね。ただの殺傷事件になるからね、仕方ないね。
 それと4番目は召喚士系は本人では無く配下を戦わせてもいいってことだけどまぁ普通に考えて召喚士がバリバリの近接系と同じくらい戦闘力が高いとは思わないからね。これも当然。

 5番目の決闘の報酬が物ではなく人の場合っていうのは今回みたいな場合ってことでしょ。言い方はちょっとアレだけど報酬が傷ついて価値を落とさないようにするためだろうね。


 で、決闘するにしても相手は4人。それに対してこっちは悠灯を入れても3人。

「決闘の相手はケーニッヒとキールヴァン、セブルス、オーツだ。一応それぞれケーニッヒを俺、キールヴァンをマオが相手をする方向で第一案は考えられている。残り2人の相手は決まってないから参加者を募る必要がある。まぁお前が参加しないなら俺とケーニッヒだけの決闘になるけどな」

 考えていたらジークがそう言ってきた。あぁ、あの腰巾着コンビは参加するのか。僕はどうしようかな。現状参加するうま味を感じないんだけど。一応僕が勝った場合の報酬について聞いておこうか、何気に僕が勝った場合について何も話してないし。

「1つ質問なんですけど。彼はネロを決闘に勝利した場合の報酬にするのが確定としてこちらは報酬を今決めてもいいですか?」

「ん?あぁ、構わない」

「なら僕たちが勝てばキールヴァン、セブルス、オーツの3人を他クラスに異動、または退学を報酬にお願いします」

 関わらないためにはこれが一番いい。それにあれだけ身分主義的思想が口から出るくらいなら生徒が身分種族問わず在籍するこの学園より魔法族の貴族だけが通う学園の方が良さそうだし。

「一応学園長に話を通す必要があるが・・・まぁ高確率で受け入れられるだろうな」

「受け入れられれば僕も決闘に参加しますよ。それと相手はジークがケーニッヒ、僕がキールヴァンでほか2人はキールヴァンとセットでどうですか?キールヴァンが3人の代表ってことで」

「勝ち越しに関係無く勝ったか負けたか、か。いいんじゃないか?残り2人の相手をするのは俺たちの決闘理由と関係ないやつになるだろうし」

「む・・・それは・・・いや、1対1の決闘を2組、陣営無しにすれば勝ち負け数が同数になって引き分けになることも無いのか・・・」

 実際あの取り巻き2人は直接関係ないしね。キールヴァンはともかくとしてあの2人は正直どうでもいい。3人まとめて報酬の対象にできるならそれが一番だけどどうだろう。

「イーんじゃない?よく部下の不始末は主の責任って言うけどそれって主の不始末は部下の責任とも言えるだろうしね。それに決闘なんてこの時期にはいつもの事だから会長さんも何も言わないと思うよー」

 部下の不始末は主の責任って言うのはよく聞くけど主の不始末は部下の責任、か。個人的に凄くいい考えだと思う。

「・・・・・・とりあえず2陣営に分かれる案と1対1の決闘を2回行う案を執行部と教師会に提出する。どちらになるか決まるのは3日から1週間後だろう。そして決闘は案が確定してから3日後だ」

 確定までに3日から7日、そして決闘自体があるのはそれからさらに3日後か。決定までそこそこ時間がかかるんだな。さてと、それじゃあもうやることもないだろうし帰ろうか。








 寮に帰ってきた。今日は疲れたから適当に何か作って風呂入って寝よう。何気にこの寮各部屋1つはトイレと風呂があるのがいい。文明レベルが現代クラスなのは多分過去の転移転生者が絡んでるんだろうね。
 建物の外観は中世風なのに水洗トイレ、活版印刷技術による本の量産、さらに電球、街灯のようなものまであるんだから絡んでない方がおかしいとまで言える。

 風呂は1度魔力を流せば後は半自動で準備が完了する。使い方は簡単、スイッチの役割になっている魔石に魔力を流すことで浴槽に水を入れて、水が貯まりきったら再び魔石に魔力を流して今度は浴槽下に敷いてある魔法陣で水を温めるだけ。

 だから温め終わるまで克墨と剋久夜を出してスキンシップをして時間を潰す。昼間は触れ合う時間がなかなか取れないから夜の隙間時間くらいは克墨立ちに回さないとね。

 そういう訳で克墨と剋久夜を召喚しよう。克墨は召喚するとすぐにベッドに行ってうつ伏せになって剋久夜は召喚すると僕の背中に張り付いてきた。サイズ的には小さめのリュックくらいだ。

 それから片手で剋久夜抱えた状態で取り出したタオルで剋久夜の体を拭いていると風呂が貯まった。
 
「克墨、先に風呂入ってきて。その間に夕飯作っておくから」

「ん、わかった」

 剋久夜はまだ調理済みのものは食べれないから魔力武器化の応用で作ったビー玉サイズの各属性魔力玉と待機状態で流してる僕の魔力がご飯代わりだけど克墨は人化できるようになって普通の料理を食べるようになったから作る料理は2人前。

 夕飯の内容はまずパンが確定。米がないからね仕方ないね。そしてスープとサラダもあった方がいいから作ろう。余っても明日の朝か夜に回せばいいしね。あとは、メインを魚と肉のどっちにしようかな。克墨に聞けばよかったけどもう風呂に入ってるから聞けないし今日は肉でいいかな。



 異世界ものによくある調味料の種類が少なすぎて料理の味にバリエーションが無さすぎる問題もこの世界では関係ない。今のところ醤油と味噌以外は大抵あるおかげで料理の味付けにそこまで影響は無い。
 サラダは葉物野菜をちぎってから玉葱擬きを切ったものを乗せてその上からトマト擬きを乗せて半熟卵を落とせば完成。味付けはシーザードレッシング擬き。シーザードレッシングに似たものがあるのは初めて見た時に少し驚いたけど便利だから使わないわけが無い。

 スープはあっさり目の具材少なめコンソメスープをササッと作ってあとはメインの肉だけ。焼くか煮るか揚げるか、いっそミンチにしてハンバーグにするかだけど今から調理するのは牛系の肉だから揚げはやめた方がいいかな?煮るのも今からやっても遅くなるから普通に焼くかミンチにするか・・・・・・
 うん、明日も授業あるし今回は1番手早くできる焼きが最適解かな。






 よし、夕飯完成。途中で克墨が髪が濡れた状態で出てきたから拭いたりしたけど失敗しないで全部出来上がった。夕飯は克墨がリスみたいに両頬を膨らませてるのを見て笑ったりして和やかに終わった。

 そして食器を洗って乾かす間に風呂に入って出てきたらベッドにもたれかかった克墨が剋久夜を抱き抱えながら船を漕いで寝かけていた。

「克墨、剋久夜そろそろ寝るよ」

 そう言って2人を戻そうとすると、

「ん、嫌。このまま寝る」

 そう言ってすぐ克墨が剋久夜を抱き抱えたまま僕のベッドで横になった。はぁ。仕方ない、か。無理やり戻すのもなんか違うし今日はこのままにしておくか。

 壁際で寝てる克墨と反対の位置に横になる。そうすると僕が寝てる途中でベッドから落ちない限り僕が壁になって克墨と剋久夜が落ちることは無い。それじゃもう寝よう。

「おやすみ、2人とも」

「おやすみなさい」










 んーっ・・・・・・あぁ、もう朝か。それじゃあ顔洗って2人分の朝ご飯作らないと。昨日より早く起きたから食堂に向かうまでに作り終わりそう。

「んみゅぅ……」

 ベッドから降りるために体を動かそうとしたら克墨の声が聞こえた。もしかして寝ぼけてる?それなら起こさないように慎重に・・・・・・

 ギュッ……

 ・・・・・・起きようとしたら服の胸元をがっちり掴まれて起きるに起きれない。はぁ、どうしよう。早くしないと食堂の席が取れなくなる。





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