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楽しく生きようか
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今日、仕事でミスをした。
入社してまだ半年経ってない会社で。
初めて目に見える形でミスをした。
いや、そりゃ誰だってミスはするもの。
分かってるんだけど…。
分かってるんだけどなぁ。
先輩からの慰めが心貫く。
不器用にも言葉並べて慰めてくれているのは分かった。
ただ、他人と比べたり自分と比べたりして慰められるのはやっぱ応えた。
誰かを卑下されてもどうしたらいいのか分からないし。
あぁ、ダメだ。
何をしていても今日のことが浮かんんでくる。
飲みに行きますか。
やっと先月飲めるようになったお酒。
最初は人付き合いで飲んでいたのが、ここ何日かは楽しみながら飲めるようになった。
ハメを外そうとは思わないが、明日は休みだし今日ぐらいは少し多く飲んでも大丈夫だろ。
そう思いながら1人夜の街に繰り出した。
知らない店、知らない人。
もちろん周りだって私を知っている人はいない。
まばらに人がいる中、ひとつの椅子に腰掛けて飲んでいた。
1人で飲むのは初めてだったが、意外にも楽しい。
思えば、ずっと気を張っていたのだと思う。
周りの顔色を見て、なれないことをして、知らない人達の中に1人。
入社してから知り合いはできたが、それでも一線を引いた…
学生の頃とは違った距離感に戸惑っていたのかもしれない。
器用に生きていると言われる私だって、そこまで器用だと思わない。
どちらかというと、器用貧乏で不器用な性格だと思う。
「そこいいいか」
どうやら声をかけられたらしい。
いつの間にか店内には人が溢れ、カウンターに座っていた私の周りにも人がちらほらいる。
「どうぞ」
今思えばこれが私の人生をかえた出来事だった。
隣に座ったのは若い男だった。
とは言っても、私よりは5~6は上だろうが。
早い時間から飲んでいた私はその頃にはもうベロンベロンで。
気がつけば、知らないその男と世間話をしていた。
まぁ、私が一方的に話しかけていただけだが。
それでも男は慣れているのか適当に相槌を打って、たまに返事を返してくれた。
いつの間にか仕事の話になり、私が一言
「楽に器用に生きたい」
そう言った時、初めて男がこちらを向いた。
そして、目を細めたかと思うと
「器用に生きることなんざぁ、出来ねぇよ。
世の中そんな落ちぶれてねぇ。
不器用に生き抜くからこそ意味があんだよ。
この世界を器用に生きたきゃ、8回生まれ変われ。」
そう言って笑った。
あまりにも意味がわからなかった。
でも、その男がそれはもう楽しそうに笑うのだから。
私も釣られて大声で笑った。
それから、2人で飲みあかし空が明るんだ頃別れて帰った。
その日は二日酔いで頭が割れるほど痛かったが、嫌なものではなかった。
寝て起きて仕事行って
男に会って飲んで寝て
それを繰り返し1年、2年。
不器用だと思った先輩は今でも楽しそうに仕事をしている。
時折ミスする私をフォローしてくれながら。
そして、男は私とは違った可愛らしい彼女と結婚した。
男と彼女が付き合ったのは私と出会ってから1年たった頃。
少し恥ずかしそうに報告してきた。
その時初めて、私は男のことが好きだと気づいた。
おめでとう、その一言を言うのがキツかった。
男はそのことに気づいた様子もなく嬉しそうに笑う。
あぁ、本当に。
うまくいかない。
その後、男は別れることもなく幸せそうに結婚した。
こんなにも辛い失恋、初めてだ。
器用には生きれない、楽に生きることなどできやしない。
でも、ここまで過ごした日々は宝物のように輝いている。
時間がたった今あの日ミスしたことすら笑い事にできる。
あのミスがあったから男に会えたし、かけがえのない友に出会えた。
まぁ、その友は私を置いて結婚したが。
結局男は、かけがえのない友となった。
そして、私は友が結婚した5年後。
不器用な先輩と結婚した。
いやぁ、ここまで長かった。
でも、今でも友が言ったことはよくわからない。
この先、わかるようになるだろうか。
最初に会った友の年齢と同じ歳になった今。
あの時友は、どんな気持ちでこの言葉を言ったのだろうか。
ますます謎な男だ。
私も友も老けた。
お互い、ジジイもババアもいいところだ。
人が増えた今、どんちゃん騒ぎで飲んでいた。
昔話に花を咲かしていた時。
友は一言こぼした。
「あの頃、お前が好きだったよ」
あぁ、男が言った言葉の意味がよく分かった。
これは楽しい。
これは楽しい、人生だ。
入社してまだ半年経ってない会社で。
初めて目に見える形でミスをした。
いや、そりゃ誰だってミスはするもの。
分かってるんだけど…。
分かってるんだけどなぁ。
先輩からの慰めが心貫く。
不器用にも言葉並べて慰めてくれているのは分かった。
ただ、他人と比べたり自分と比べたりして慰められるのはやっぱ応えた。
誰かを卑下されてもどうしたらいいのか分からないし。
あぁ、ダメだ。
何をしていても今日のことが浮かんんでくる。
飲みに行きますか。
やっと先月飲めるようになったお酒。
最初は人付き合いで飲んでいたのが、ここ何日かは楽しみながら飲めるようになった。
ハメを外そうとは思わないが、明日は休みだし今日ぐらいは少し多く飲んでも大丈夫だろ。
そう思いながら1人夜の街に繰り出した。
知らない店、知らない人。
もちろん周りだって私を知っている人はいない。
まばらに人がいる中、ひとつの椅子に腰掛けて飲んでいた。
1人で飲むのは初めてだったが、意外にも楽しい。
思えば、ずっと気を張っていたのだと思う。
周りの顔色を見て、なれないことをして、知らない人達の中に1人。
入社してから知り合いはできたが、それでも一線を引いた…
学生の頃とは違った距離感に戸惑っていたのかもしれない。
器用に生きていると言われる私だって、そこまで器用だと思わない。
どちらかというと、器用貧乏で不器用な性格だと思う。
「そこいいいか」
どうやら声をかけられたらしい。
いつの間にか店内には人が溢れ、カウンターに座っていた私の周りにも人がちらほらいる。
「どうぞ」
今思えばこれが私の人生をかえた出来事だった。
隣に座ったのは若い男だった。
とは言っても、私よりは5~6は上だろうが。
早い時間から飲んでいた私はその頃にはもうベロンベロンで。
気がつけば、知らないその男と世間話をしていた。
まぁ、私が一方的に話しかけていただけだが。
それでも男は慣れているのか適当に相槌を打って、たまに返事を返してくれた。
いつの間にか仕事の話になり、私が一言
「楽に器用に生きたい」
そう言った時、初めて男がこちらを向いた。
そして、目を細めたかと思うと
「器用に生きることなんざぁ、出来ねぇよ。
世の中そんな落ちぶれてねぇ。
不器用に生き抜くからこそ意味があんだよ。
この世界を器用に生きたきゃ、8回生まれ変われ。」
そう言って笑った。
あまりにも意味がわからなかった。
でも、その男がそれはもう楽しそうに笑うのだから。
私も釣られて大声で笑った。
それから、2人で飲みあかし空が明るんだ頃別れて帰った。
その日は二日酔いで頭が割れるほど痛かったが、嫌なものではなかった。
寝て起きて仕事行って
男に会って飲んで寝て
それを繰り返し1年、2年。
不器用だと思った先輩は今でも楽しそうに仕事をしている。
時折ミスする私をフォローしてくれながら。
そして、男は私とは違った可愛らしい彼女と結婚した。
男と彼女が付き合ったのは私と出会ってから1年たった頃。
少し恥ずかしそうに報告してきた。
その時初めて、私は男のことが好きだと気づいた。
おめでとう、その一言を言うのがキツかった。
男はそのことに気づいた様子もなく嬉しそうに笑う。
あぁ、本当に。
うまくいかない。
その後、男は別れることもなく幸せそうに結婚した。
こんなにも辛い失恋、初めてだ。
器用には生きれない、楽に生きることなどできやしない。
でも、ここまで過ごした日々は宝物のように輝いている。
時間がたった今あの日ミスしたことすら笑い事にできる。
あのミスがあったから男に会えたし、かけがえのない友に出会えた。
まぁ、その友は私を置いて結婚したが。
結局男は、かけがえのない友となった。
そして、私は友が結婚した5年後。
不器用な先輩と結婚した。
いやぁ、ここまで長かった。
でも、今でも友が言ったことはよくわからない。
この先、わかるようになるだろうか。
最初に会った友の年齢と同じ歳になった今。
あの時友は、どんな気持ちでこの言葉を言ったのだろうか。
ますます謎な男だ。
私も友も老けた。
お互い、ジジイもババアもいいところだ。
人が増えた今、どんちゃん騒ぎで飲んでいた。
昔話に花を咲かしていた時。
友は一言こぼした。
「あの頃、お前が好きだったよ」
あぁ、男が言った言葉の意味がよく分かった。
これは楽しい。
これは楽しい、人生だ。
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