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還り道。
しおりを挟む『人間はね、死ぬとお空に還ってしまうんだよ』
遠い昔、誰かに聞いたこの言葉。
いつ、どんな時に言われたのか思い出せないのに、この言葉だけがずっと記憶に残っている。
…何故。
何故、今、この言葉を思い出したのだろう。
目の前で愛する人の命の灯火が消えようとしているからか。
自分自身の生の脈動が止まろうとしているからか。
それとも、久しぶりに休みが合い、思い切って遠出をしようと話したことがいけなかったのか。
旅行の帰りに交通事故に巻き込まれ、雨が降る中、道に寝そべる2人の姿。
遠くで救急車を呼ぶ人の声がする。
近くで大丈夫だと言う人の声がする。
赤い水溜まりが視界に映る。
これは……誰の血?
彼女のか?それとも……自分の。
何かが喉の奥に詰まり、何度も何度も咳をする。
その度に口広がり溢れる、鉄の味。
「み……な、と……さん……!」
咳き込みながら、小さく愛する人の名前を呼ぶ。
しかし、返事はない。
どうやら彼女は先に還ってしまったようだ。
大丈夫だよ、僕もすぐに還るから。
彼女の名前を呟きながら、ゆっくりと瞳を閉じる。
目を覚ましたら、きっとまた会えるから。
だからそれまで待っていて。
僕の愛しい人。
愛してる。
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