とある魔族の日記

綾瀬海斗

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人間がするという日記を、魔族である自分もしてみる。

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ある日、目を開けると深い深い闇の中にいた。

右を見ても左を見ても、天を仰ぎ見ても何も見えない。
手足を動かしたり、適当に叫んだりしてみたが物音ひとつしない。
何故こんな所にいるのか、全く検討がつかない。


立ち上がってしばらく歩いてみると、黒の装飾が施されている両開きの扉が見えた。
暗闇の中にいるのに何故黒だと認識出来たのか、全く検討がつかない。

試しに扉を押してみたが、びくともしない。
鍵穴から向こう側を覗いてみると、視界が白く染まった。
どうやらあちらは、こちら側と違って白い世界らしい。

こことは異なる空間があると分かっただけでほっとする。
もしかしたら人に出会えるかもしれない。

鍵がかかっているのなら、鍵を探せばいい。
鍵が見つからなければ、扉を壊せばいい。

そう考え、黒い世界の中で鍵を探す旅に出た。
私は、鍵ー答えーを見つけることは出来るのだろうか。

さて、先程目覚めたばかりだが、自分がただの生き物ではないことの自覚はしている。

暗闇で目が見えるとは、自分は鳥の仲間なのだろうか。

背中に力を入れてみても何かが動く気配はしない。
そもそも力んだところで翼は動くものなのだろうか。
背中を触ってみたところ、自分の両手がぶつかっただけで終わる。
どうやら鳥ではないようなので、それは自分には分からない問題となった。

この黒き世界から飛び出したら何をしようか。

全く検討がつかない。
全く思いつかない。

白き世界に行けば、思い付くことが出来るのだろうか。

期待を胸に、いつものように鍵を探す旅に出る。

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