神器

晴駆漸次

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はじまり

動機

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「なーに、ごちゃごちゃ言ってんだ?お前らあ」
重武が武邦を支えてゆっくりと歩きながら話しているとドーンと大きい音ともに上から大柄の男が目の前に来た。重武は武邦を後ろに庇いながら大柄の男に対し、
「話をしよう。お前らの目的はあの器じゃろ?
もう孫には手を出さないでくれ。」
唾を飲み、相手2人の様子を伺いつつ交渉する重武。
「それはじいさんの行動次第だぜ?別に俺だって殴りたくて人を殴ってるわけじゃねえんだ。」
「そうですよ?それに話し合いなんて要りません。あなたは私たちにあの器を渡せばいいだけ。」
大柄の男の後ろから長身の男が諭すように言う。
「わかった。。。渡そう。だから1つ聞かせてくれ。お前らは何者だ??」
重武はこれ以上は無理だと感じ、刺激にならない程度の質問をする。

その間、武邦は体を引きずりながら蔵へ向かう。
うちの敷地に蔵は2つある。大きい方と小さい方。
体はボロボロだが意識だけは普通に戻ってきた頭の中で必死に思い出した。小さい方の蔵には地下への階段があり、そこに1つの部屋があることを。
12歳の頃、重武に言われ1度だけ入ったあの部屋。
記憶が正しければ、そこにあったはず。
1つの大きな箱が。
頭の中でその記憶を辿りながら小さい方の蔵に入っていく。蔵の中はろうそくの火をつけることで灯りをつけられるが、そんな余裕はない。窓も板が張られ微かな陽の光だけが差し込む。それを頼りに奥へ進む。
蔵の奥に敷かれている布をどかし、そこにある扉を開けると地下に繋がる階段がある。
そして、階段を降りたその先の部屋を見つける。
その扉には蔵の雰囲気には異様である指紋認証のシステムが付いており、1度も認証した記憶が無いが、指をかざしてみる。
「「ロック解除」」
機会の音声が狭い地下に響く。
「。。。は?まぁいいや。」
自分の指紋で扉が開いたことに疑問を持つが、それすらも今は関係がないため考えるのことをやめた。そして、重い扉をボロボロの体で必死に開ける。
「あった。。。これ、だよな??」
部屋に入ると正面に大きい箱を見つける。
記憶の通りだ。だか、そこで気づく。
「え、これ、どうやって開けるんだ?」
力ずくで開けようとするがビクともしない。
周りを見渡すと1つの石碑を見つける。
そこには明らかに昔に書かれたであろう文字か書いてある。
「ん?すげえ達筆だなおい。けど、ギリギリ読めるな。」
「「ここに封印されるは神器天叢雲剣。
   万物を断ち、万物を絶つ神器である。
   自らのその血を重んじ、これを継げ。
   然るべき時にその血で悪世を絶て。大和 武政」」
石碑にはこう書かれていた。読めたはいいものの、武邦は理解に苦しんだ。
「どういうことだ?血で開ける?ってことか?
けど、どうやって?」
1人でぼやきながら考えるが、衝撃と怪我のせいか、まだしっかりと頭が回らず判断が鈍い。
「あーー、くそ!わかんねえ!こんなの気合いだな。」
開けるのに血が必要なのは理解できたため、どこかしらにはそれなりの開け口があるはず。と武邦は考え、気合いで探すことにした。
「たまたま血は出てるからな。見つけさえすれば、こっちのもんだ。。。。ん?待てよ??」
突然武邦は重武から散々聞かされた話を思い出す。
「ーーーそして、その「天叢雲剣」は代々受け継がれている、大石箱に封印されているんだ!それを開けられるのは大和家の中でも選ばれた者だけ!武邦、お前はその1人。もしも開ける時が来たら。。。。ーーー」
「そうか!」
武邦は思い出した。その箱には唯一彫られている文字がある。それは「大和」の文字。
ぱっぱっとホコリを払うと、浮き出きてきた「大和」の文字。
「これだ。確か、これをなぞる。なぞる時に血をつけろってことか、ぶっ飛ばされてもいいことあるんだな。」
出血している怪我部分を触ることで血を指に付けながら、「大和」の字をなぞった。
そうすると、その文字の部分の周りには線が入っており、その線を境に石が割れ、箱から落ち、石版のようになった。そして箱の上の蓋の大石が後ろ方向に開いていく。
「どういう仕組みかはわからねーが、やっと開いたぜ。」
そう少し安堵した武邦の目の前についに現れた「天叢雲剣」。
「こ、これが「天叢雲剣」か。結構普通の見た目した刀だな。」
そうぼやきながら手に取ると、一瞬でなにかが手、腕、肩を経由して流れ込んで来た。
「うわ!なんだこれ。」
目で見えてはいるが、直接脳に映像が流れている感覚だった。
ーーー「おい!待て!それは封印するんだ!」
「なんでだよ!これさえあれば世界を支配できるんだぜ!?」
「だからだ。お前のようなワルはいくらでもいる。
そんな「悪」に天叢雲剣が悪用されたらいけない。」
「これを封印しちまったら、他の2つをもつアイツらに世界が牛耳られるぞ!!」
「そんなことはさせんわい。わしが話をつけてきたわい。他2つも同様に封印する。それでこの世に平和が来る。そういう話をな。」
「親父、、俺はそんなの認められ。。。」ーーー
「なんだ?今の。知らねえ男が3人居たな。
でも、話の流れ的にあの最後のじいさんが大和武政っぽいよな。んー、今考えたってしょーがねえな。」
いち早く重武の元へという一心で武邦はさっきの場所へ向かう。

ーー「俺らのことなんて知ってもなにもならないだろ?じーさんよ。まあ、冥土の土産だ。殺される相手の名前くらい教えといてやるよ。」
「ちっ、無駄な時間を。」
長身の男は今にも襲いかかってきそうだが、それを片手で止めながら大柄の男は続ける。
「俺はアーディ・サラン。こいつはソニー・ハルベルト。そして俺らはバソフヒッチの一員。
目的は当然神器の回収。そして世界の支配。わかりやすいだろ??」
「そうか。バソフヒッチ。知らんな。だが、あの神器を手に入れたとて、世界は支配できんぞ?」
「あとのことの心配なんていらない。もう喋るな。死後の世界で見てろ。老いぼれ、じゃあな。」
「待てって、ソニー。このじーさん、何か知ってるかもしれねえんだ。すぐ殺すのは勿体ない。」
勘のいいアーディは重武が何か自分たちにとって価値のあることを知ってるんじゃないかと思い、探ろうとするが、重武は自分が知ることを何も喋るまいと口を閉ざしていた。
「お前らに話すことなど何も無い。さきもそう言ったろ?」
重武は死を覚悟し、抵抗した。
「おいおい、じーさん、自分だけ聞いて終わろうってか?そら、ないぜ?あの「神器」にはなんかしら秘密があるんだろ?なぁ?」
重武は睨みつけながら見上げた。
「ない。いい冥土の土産だったわい。」
「はぁー。そーかよ。」
呆れたようにため息をついてアーディは振り返った。そして、その直後ソニーが重武を貫いた。
「喋りすぎなんだ。アーディ。」
右手の血を払いながらソニーが指摘する。
「いいだろ?どうせ聞いたって死んだんだからよ。」ーー

そこにあったのは絶望だった。重武が血を流し倒れ込んでいる。
「おい!じーちゃん、返事しろ、じーちゃん!」
「おーおー、生きてたのか。しかもピンピンしてやがるな。だが、残念だったなぁ??」
大量の血を流し倒れている重武を見て嘆くと同時に何も出来ない自分に腹が立った。
「なんで、なんでだよ、、許さねえ、許さねえぞ。」
自分への怒りが憎悪に変わり、それを敵に向けた。
「許さねえから?どうするんだ?あ?どうするんだって聞いてんだよ!!」
と言いアーディが振りかぶると、ソニーがある事に気づく。
「待て!そいつの手元、まさか、お前それ本物か!?」
「あ?ガチかよ。ほんとにあったのか。三種の神 器「天叢雲剣」。おい、坊主、それを寄越せ!」
アーディは振りかぶった手を止め、そう言いながら武邦の持つ「天叢雲剣」に手を差し出す。
「お前らなんかに渡すかよ!」
武邦はそう言いながら重武を抱え後ろへ距離をとる。ここでアーディとソニーは気づく。武邦が異常な速度で回復していることと、さっきまでにないオーラを纏ってることに。
武邦は重武を安全な所へ置き、2人の方を睨みつける。そして、刀を抜いた。武邦が刀を抜いたと同時にアーディとソニーも顔色を変え、戦闘態勢へ入る。

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