【R15】異世界に転生したらガチムチだらけのハッテンバだった

赤沼

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1、ガチムチダンディ

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   うほっ。

うほっ。



               うほっうほっ。
       うほっ。


   うほっ。    うほっ。



       うほほーーーい。

   うほ。





 ああ……ダメだ……。
 頭がおかしくなりそうだ……。

 村中のあちこちこちあちそこらかしこから、うほうほとハッテン音頭が聞こえてくる。
 これが可愛い女子の声ならいくらでもガマンできる。というか、全然ウェルカムだから土下座してでも聞かせてほしい。

 だが、聞こえてくるのは可愛さから最も遠い男の声。
 百歩譲って、もし美少年ならガマンしよう。でも違う。




 だって

 この村には



 ガチムチダンディ
 
 しか

 いないのだから





 ……なんでこんなことになってしまったんだろう……。

 俺はここに至るまでの経緯を、陰鬱な気持ちのまま思い出すことにした。



…………

……




 その瞬間のことは、よく覚えている。
 暴走トラックが俺目掛けて突っ込んできたのだ。


『……あ、これ死んだな……』

 妙に頭は冷静で、そんなことを考えるくらいの余裕があった。
 身体は微動だに動かないのに、景色はスローモーションで、運転席で居眠りしている小汚いおっさんの顔までハッキリ見えた。

 こんなところで、こんなおっさんに殺されて死ぬのか……。
 悔しいし情けないしやるせなかったけど、もうどうしようもない。

 ただ、童貞のまま死ぬことだけが心残りだった。
 ごめんな……俺のサオとタマよ……。
 22年間使ってやれなくて……。(※マスタベは別腹)
 来世じゃ必ず……幸せにしてやるからな……。


 こうして、俺は人生にピリオドを打った……はずだった。





 気が付いたら、俺はひとりで森の中にいた。

 ……ここどこ? トラックは?


 しかし、ゆっくり考える時間はなかった。
 見たことも無い変な動物が襲い掛かってきたからだ!

 熊と鹿を掛け合わせたような生物だった。
 こんな生物知らない。聞いたことも無い。

 ソレは、俺を見るなりグルルと威嚇するように唸って、そのまま飛び掛ってきた。
 電光石火とでも言うべき俊敏な動きで、一瞬にして俺の目の前にまで迫ってきたのだ。

 今日はなんて日だ……。
 トラックに引かれて、こんな化け物に襲われて……。

「伏せろ!!」

 声の通りに動けたわけじゃないが、迫り来る化け物に気圧されて、へたんと尻餅をついたのだ。
 そんな俺の頭の上をかすめるようにナニカが飛んできて、そのまま化け物に激突した。

 そのナニカは……鎖のついた鉄球のようなものだった。
 さすがの化け物も堪らなかったんだろう。ふらふらとした足取りで、森の奥へと消えていった。

 ……助かった。
 この鉄球はいったいどこから……?
 さっきの声の人物が投げて助けてくれたのか?

「大丈夫か?」

 後ろの草むらをかきわけながら、その人物が姿を現す。
 その人は、ひとことで言うなら……ガチムチマッチョなナイスミドル。
 鍛え上げた筋骨隆々な肉体美を誇る、口髭を生やしたおじ様だった。

 しかし、ひとつだけ疑問がある。
 なんでこの人、こんな森の中でなんだろう……。

 ……いや、深く考えちゃいけない。そんな気がする。

「……ありがとうございました」
「はっはっは。礼にはおよばんよ。 しかし、そんな軽装で森に入っちゃダメじゃないか」

 服装に関してこの人にツッコまれるのは心外だ。少なくとも俺は服を着てるのだから。
 しかし、助けてもらったのは事実。『あなたこそ半裸じゃないですか』って言葉をぐっと飲み込んだ。

「シカクマくらいだったからまだいいが、クマザルが出てきたら一環の終わりだよ」

 さっきの化け物、シカクマって名前なのか。そのまんまだな。
 てことは、クマザルってのは、猿と熊の化け物?

「だいたい、なんで君はそんなにモヤシのように細いのかね? ちゃんとプロテイン飲んでる?」
「いや、ていうか、ここどこですか? 気が付いたらここにいて、さっぱり訳わかんないんですけど……」

 俺の言葉に、ガチムチダンディは目をぱちくりさせて少し考えると、手をぽんと叩いて口を開いた。

「ああ、そういうことか。 おかしいと思ったんだ。モヤシだし、服を着てるし。そういうことなら納得だ。大丈夫。君みたいのたまにいるらしいから。私も見るのは初めてだがね」
「あのー……どういうことですか?」
「えっと、その、アレだ。異世界転生ってやつだね」
「…………はい?」

 え? なに言ってんのこの人?
 頭大丈夫??

「村に行けば詳しい人もいるだろう。付いてきなさい」
「え? あの?」
「ここは『ガッチムーチカントリー』 君のいた世界とは異なる世界だ」

 
続く

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