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俺と彼女の甘い露
★15
しおりを挟む「っ……」
「夏実本当にごめん」
昨夜に引き続きまたやってしまったと反省する俺に夏実は身体を起こしながら涙を拭う。
「違うの。気持ち悪いとか嫌いになったとか、ドン引きしたとかじゃなくて……なんか、一気に感情が流れ込んできて」
「感情?」
夏実の胸にベッタリとついた汚いものを拭き取ってあげながら俺は彼女の言葉を鸚鵡返しする。
「なんて言ったらいいのかな……私、湊人に本能的な部分も理性的な部分も両方選びたいだとか……今朝だって謝る湊人にエッチな事をしようだとか……知識も覚悟も大してない癖に簡単に口にして、逆に湊人を困らせちゃったのかなぁって、さっきの湊人を見ながらそんな事を感じたの。
湊人が私のお胸を使ってエッチな事するのって、されてる私よりも湊人の方が色んな事考えてて……なんとなく、苦しいのかなって感じちゃった」
夏実はそこまで話した後、汚れたものを拭き取った俺に
「ありがとう」
と微笑み、それから
「ごめんね」
と謝ってきた。
「なんで夏実が謝るんだよ。何一つ悪くないのに」
「だって……また湊人、昨日みたいに『私を汚してる』ってまた謝ってくるんだろうなって思ったから」
「それは……」
まさに今言おうとした言葉を言い当てられて、グッと喉が詰まる。
(そうなんだよ。後悔するなら最初からしなきゃいいんだよな、俺も。
30の大人なんだから18の少女にエゴ押し付けてどうするんだ俺の馬鹿!)
夏実は頭の中で自己反省する俺の左手を取って嵌められている指輪をクリクリと触りながら口を開いた。
「でもね、その感情と同じくらいか……それ以上にね、『きっとこういう行為は私にだけしてくれるんだろうな』っていう……なんていう気持ちなのか語彙力なくて表現出来ないんだけど……なんか、『他の人にはしない、私だけにしてくれる行為なんだな』っていうのがなんとなく理解出来て、それがなんか嬉しかった」
「夏実……」
「エッチな行為って不思議だよね。湊人の気持ちが……正解じゃないかもしれないけど感情がうわ~って押し寄せてくるの。
昨夜湊人が言ってたでしょ? 『お互いの触れ合う部分から性的興奮と多幸感が得られなくちゃダメ』みたいなやつ。その2つって、触れ合う時にお互いの気持ちが通じ合うと得られるんだなって思ったよ」
「……」
「間違ってるかな?」
夏実はキラキラした瞳で俺の顔を見つめている。
その表情を俺も見つめ返しながら、「そうだ、夏実は昔から賢く優しい心を持つ良い子だった」という事を思い出した。
俺も正直な話、今まで気持ちが通じ合う行為をしてこなかったんじゃないかと反省する。
付き合った女をその時はちゃんと好きになろう、愛そうと外面的に思っていても続かなかったのは正に俺がその点に欠けていたからだ。
「間違ってないよ。夏実はとても賢くて優しい子だ」
彼女の頭を撫でると、夏実は親から褒められた幼い子どものような表情を浮かべた。
そして笑いながら俺をまた見つめ返して
「合ってた?」
と明るい声で訊くから
「合ってる合ってる」
と俺も夏実の勉強を見てあげてる時みたいな気分になってまた頭を撫でる。
「でもね、正直なところ湊人が私に痛い事をする趣味の人じゃなくて良かったーって思っちゃった。いくらなんでも私痛いのは耐えられないもん」
夏実はそう、本気なのか冗談なのか分からない感じでサラッと恐ろしい言葉を口にして俺は内心ヒヤッとした。
俺自身そういう趣味は全く無いけれど、夏実の理論で云えばそういう関係も容易にあり得るという事なのだから。
(夏実を痛め付ける趣味は無いけれど、そこは本当に気を付けよう……俺だって夏実が傷だらけになって痛くて泣くとか絶対にしたくないし)
「じゃあ、良い子の夏実に何かご褒美あげないとね。何か食べたいものとかある?」
俺も本心を言うなら夏実を気持ち良くさせてあげたいところなんだが、昨夜お腹いっぱい食べたからとはいえ十代のエネルギー代謝じゃそろそろ腹も減ってるんじゃないだろうかという心配が頭を過ぎった。
「え~~~? このシチュエーションでいきなりご飯的な話ぃ?」
「このまま夏実をもっともっとエッチな気分にさせてやってもいいんだけど、そろそろお腹空いてるんじゃないかって思って」
「確かに空いてるかも……」
俺の言葉に夏実は可愛らしく両手をお腹に当て、丁度良いタイミングでキュルキュルと可愛い腹の虫が鳴る。
「リネン交換の連絡もそろそろしないといけないし、着替えて外に出掛けるか」
「うんっ!」
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