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俺と彼女の可愛い主張
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しおりを挟む「はー……お風呂きもちー……」
入浴剤も何も入れない無色透明の湯というのは、何故にこんなにも女の肉体に艶を与えるだろうか?
頭のてっぺんからピショピショに濡らし湯船に一滴ずつ落ちていく水滴ですらも、我慢して抑え込んだはずの肉棒が再び硬く大きくなる理由付けになってしまう。
「それだけ頑張ったんだな、1日目お疲れ様」
身体を綺麗にした俺が夏実に続いて湯の中に入る段階で「元気になってる部分は無視しよう」と言葉を夏実と交わしておいて良かったような気もする。
「うん。暑い中ほとんどずーっと外に出てたから本当に疲れちゃった。お風呂上がったらそのまま寝ちゃいそうだよぅ」
「今夜はぐっすり眠るといいよ。明日楽しみにしてるから」
俺は夏実を労う意味で可愛い頭を優しく撫でると、彼女はとても幸せそうに目を細めたから、王子のフリをしている俺の頰も自然と緩んだ。
「明日は私ねー、最後に屋上で喋るの。今日の1番目は滉くんがデモンストレーション代わりに喋ってくれて、めちゃくちゃウケたから私も負けじと頑張らなきゃ!」
湯船の中で肌を密着させて、充分過ぎるほど興奮しているのだが
「滉そんなに面白い事喋ったんだ? 聞いてみたかったな」
「湊人は聞かない方が良かったかも。半分くらいは湊人への悪口だったから」
「はぁ?! なんだそれ? 全校レベルで俺の事バカにするのか。ムカつくなぁアイツ」
「でも話す内容が本当に面白かったんだよ! 私も笑っちゃった」
「あー夏実まで俺を馬鹿にしたんだな?! 悪い女だなぁ」
「えへ♡ あとはねー、茉莉ちゃんへのノロケ話もあったよ♪」
「それは聞かなくていいや。親友の夏実の話もしてた?」
「ちょこっとねー」
「ちょこっとかい」
彼女との会話はやっぱり楽しく、彼氏彼女の関係は肉体の交わりばかりに頼らなくても成立するのだと改めて感じる。
「夏実は滉の親友なのに、あんまり話題にされなくて可哀想に」
風呂から上がって夏実の身体を乾かしながら俺がそう言うと
「今、湊人にいっぱい癒されてるからへーき♡」
と、夏実は可愛らしく微笑んでいて、その顔にまた俺も癒され、余計に「今夜はもう王子のままでいいや」という気分にさせられた。
ベッドの上に夏実の身体を乗せて、布団をふんわりと掛けてやると
「ふわふわきもちい~♡ 幸せ~♡」
夏実は喜んでいる声を上げたので
「ふふっ」
俺もその中に潜り込んで可愛い身体を抱き締めると
「湊人も幸せそうだね♡」
と腕の中の彼女は俺の耳元でまた幸せそうな声を出す。
「幸せそうにしてんのかなぁ、俺」
「してるよ♪ お布団被って見えにくいけど、今の湊人はめちゃくちゃ幸せそうな笑顔になってる♪」
「俺、夏実の彼氏出来てる?」
「出来てる出来てる♪」
体液の融合といった手段を取らずとも、静華や他の女に出来なかった表情や彼氏らしい事を今の夏実にしてやれているのだと知ると俺自身嬉しい。
「明日学校に来るの午後からでもいいから、静華さんと絶対来てね!」
嬉しい気持ちで満たされていたのだが、ふと「静華」という「彼氏らしい事をしてやれなかった対象」の名を耳にすると、つい表情が強張ってしまう。
「なんで静華と?俺一人で行くつもりだったんだけど」
「私の頑張りを湊人にも見てもらいたいけど、お世話になってる静華さんにも見てもらいたいから。静華さんにはもうお誘い済みなの」
「静華って日曜日も店開けてたんじゃなかったか? 先週そうだったろ?」
「文化祭観に来てくれる時間帯はお店閉めとくって言ってた。『どうせ暇だから』って」
俺の表情の強張りを気にする事なく楽しそうに話し掛けてくる夏実の様子に、俺もすぐ王子の表情を取り戻す。
「罪なことするなぁ夏実は。社会人を困らせちゃダメだろ」
「だって静華さんも卒業生だし、湊人とも仲良かったんだし……なんか、久しぶりに高校を楽しんでもらいたいなーって思ったんだもん」
「そっか……」
「だから一緒に来てね! 絶対だから!」
「うん、わかった」
「文化祭、楽しんでね♪」
「夏実は大変だろうけど、夏実も精一杯頑張れよ」
「うん♡」
ハグしながら夏実と会話をして、幸せ気分で抱き合ったまま眠ったから俺は完全に油断をしていた。
だからこそ、その日その時間帯に俺が静華と一緒に行動するのは「元同級生として」のつもりだったし、付き合っていた事実がバレていたとしても、それは「夏実公認」であるという意識だった。
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