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2人で眺める永遠への光
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「『この週末も試験期間もエッチする暇ないくらい勉強したい』って言ったのは私だけど、湊人もちょっとは残念な顔してほしいんだよ。ワガママかもしれないけど」
拗ねた顔をする夏実は可愛い。今すぐ抱き締めて唇を奪いめちゃくちゃにしたくなってしまう程に。
「残念な顔なんかしたらドン引きされちゃうし。大好きな夏実にドン引きされたら俺生きていけないし」
「ドン引きしないもん♡ 私もだって湊人大好きなの負けてないもん♡」
エンジンを切った車内で夏実と会話のイチャイチャを続けていると、鼓動の高鳴りや興奮が急上昇して、頭撫でだけでは済まなくなってしまう。
薗田家の部屋の照明は落とされているから、この中でキスやハグをしたって晴美さん和明さんにバレる恐れはない。けれどもこれ以上夏実に近づいて身体の接触を互いに求め合ったら車内で変態な行動を起こしかねない。
そのくらい、俺の頭の中では想像上の信号が赤く点灯していて、理性の装甲をぶち壊す危険レベルに達していた。
「期末試験、全教科良い点取ったらご褒美あげるから。だから夏実頑張って」
「ご褒美って何?」
「それは秘密」
「美味しいやつ?」
「美味しいかどうかは分からないけど、夏実が絶対喜びそうなやつ」
「えへ♡ それは楽しみ♡」
夏実のヘラっとした笑顔に俺の目は自然と細くなり、撫でていた夏実の頭を軽くポンポンする。
「じゃあ今日のところはおやすみ。寒いから早く風呂で温まるんだよ」
「うん。お母さん達はまた広瀬家に居るだろうから1人で留守番しておかなきゃね!」
「多分まだゲーム中だろうから、俺も顔だして夏実が帰ってきたこと報告してくるよ」
互いに「おやすみ」を言い合って一緒に車を出て、薗田家の門扉の前で俺は夏実にバイバイの手を振った。
「ただいまー」
さて、俺は1週間振りに実家の引き戸をカラカラと開けた。
夏から新居を持つ身であっても、実家に帰れば「ただいま」が正しいと俺は思っている。
引っ越して以来、日曜日や三連休最終日の夜 夏実を薗田家へ送った後は必ず実家に顔出して晴美さんに大切な末娘を無事に送り届けた報告と、両親への近況報告も何気にしているし、今夜のこれも俺にとっては週末ルーティンの1つに含まれていてイレギュラーな事柄ではないとも感じている。
「あっ! 湊人くんじゃん珍しいねー、お久しぶり~♪」
それなのに、実家の玄関先に姿を現した和明さんにあっさりとそう呼び掛けられてしまい、俺はガックリと肩を落とした。
「……お、お久しぶりです和明さん」
「ちょっと待ってねみんなに声かけとかないとね。
おーい!!! 湊人くんが遊びに来たよ~!」
「ちょっと! 和明さん!!」
大声を張り上げる和明さんを制止するも、すぐに和明さんは天然な表情を俺の方に向けて「何で止めんの?」とでも言うような雰囲気でいる。
「いや……、俺は一応夏実を薗田家まで送った報告しに来ただけなんで」
夏以降、俺は和明さんのほろ酔い顔をほぼほぼ目にしていない。
何故なら今日はいつもより夏実の帰宅時間が早くて、俺が毎回実家に顔を出す頃には酔いつぶれて眠っているからだ。
だからこそ和明さんにとって俺のコレは「実家への帰宅」ではなく「珍しく遊びに来た」レベルの感覚なのだろう。
「あー、そうだったんだ。なっちゃん元気してる?最近平日もここで夕飯食べて風呂入って酒飲むからなっちゃんに全然会えた感覚ないんだよねーあはは。そっかそっか~ちゃんと湊人くんがなっちゃんを車で送ってたんだねー、へぇ~。」
(菜央ちゃん直くん、それから夏実までもが和明さんの事を「ムカつく父親」と言う気持ちが分かるなぁ……。
親父がリアルにこんな感じだったら俺もイラッとするかも)
もしかしたら和明さんはワザと俺に能天気発言をしているのかもしれないという仮定を俺は今立ててみた。
菜央ちゃん直くんに完全に嫌われるという経験を経ているからこそ「なっちゃんが湊人くんの元へ行くのを明るいテンションで見守ってやろう(本当はめちゃくちゃ文句を言いたいんだけど)」という父親的感情が渦巻いているのかもしれないのだ。
「……上がって晴美さんと話ししたいんですけどいいですか? 今ってゲームしてます?」
「あー、晴ちゃんならお風呂から上がったばかりだよー。今はよっちゃんがお風呂入ってるからゲームはその後かなぁ。上がるなら上がっちゃってー!」
だがやはり和明さんの能天気発言を聞き続けていると「俺の仮定は間違っているんじゃないか」という気分になる。
(風呂……って言うことは、ついさっきまで4人でのんびり夕食をとっていたと言うことか。
それなら晴美さんと会話するのにはなかなか良いタイミングかもしれないけど……)
俺は、上機嫌でほんわかした口調で俺の帰宅を許可する和明さんに軽く会釈をしてから靴を脱いだ。
(なんていうか……和明さん的にこの家は親父お袋と共にルームシェアしてる感覚なんだろうな。ジュン先輩みたいな「テンアゲ状態でもちゃんと他人に対して気を配ってますよ」感が皆無なんだよなぁ。
元々両家は仲良いし、互いの家を行き来なんて昔からちょいちょいやってるし)
やはり和明さんのこの能天気な雰囲気は素っある。という結論に俺は達し
(両家仲良くするのは良いにしても、俺が広瀬家の一員であることも忘れないでほしいなぁ。今後の為にも)
と、先を歩く和明さんの背中を見つめながら俺は思った。
「晴ちゃん、湊人くんが話あるんだってー」
居間に入るなり和明さんはダイニングテーブルで缶ビールを口にする晴美さんに声を掛けると、晴美さんはそのすぐ背後の俺に向けて無言の挨拶をする。
それに対し俺は晴美さんの見える位置で会釈していると、和明さんは晴美さんに更なる飲酒の許可を得ようとしていた。
拗ねた顔をする夏実は可愛い。今すぐ抱き締めて唇を奪いめちゃくちゃにしたくなってしまう程に。
「残念な顔なんかしたらドン引きされちゃうし。大好きな夏実にドン引きされたら俺生きていけないし」
「ドン引きしないもん♡ 私もだって湊人大好きなの負けてないもん♡」
エンジンを切った車内で夏実と会話のイチャイチャを続けていると、鼓動の高鳴りや興奮が急上昇して、頭撫でだけでは済まなくなってしまう。
薗田家の部屋の照明は落とされているから、この中でキスやハグをしたって晴美さん和明さんにバレる恐れはない。けれどもこれ以上夏実に近づいて身体の接触を互いに求め合ったら車内で変態な行動を起こしかねない。
そのくらい、俺の頭の中では想像上の信号が赤く点灯していて、理性の装甲をぶち壊す危険レベルに達していた。
「期末試験、全教科良い点取ったらご褒美あげるから。だから夏実頑張って」
「ご褒美って何?」
「それは秘密」
「美味しいやつ?」
「美味しいかどうかは分からないけど、夏実が絶対喜びそうなやつ」
「えへ♡ それは楽しみ♡」
夏実のヘラっとした笑顔に俺の目は自然と細くなり、撫でていた夏実の頭を軽くポンポンする。
「じゃあ今日のところはおやすみ。寒いから早く風呂で温まるんだよ」
「うん。お母さん達はまた広瀬家に居るだろうから1人で留守番しておかなきゃね!」
「多分まだゲーム中だろうから、俺も顔だして夏実が帰ってきたこと報告してくるよ」
互いに「おやすみ」を言い合って一緒に車を出て、薗田家の門扉の前で俺は夏実にバイバイの手を振った。
「ただいまー」
さて、俺は1週間振りに実家の引き戸をカラカラと開けた。
夏から新居を持つ身であっても、実家に帰れば「ただいま」が正しいと俺は思っている。
引っ越して以来、日曜日や三連休最終日の夜 夏実を薗田家へ送った後は必ず実家に顔出して晴美さんに大切な末娘を無事に送り届けた報告と、両親への近況報告も何気にしているし、今夜のこれも俺にとっては週末ルーティンの1つに含まれていてイレギュラーな事柄ではないとも感じている。
「あっ! 湊人くんじゃん珍しいねー、お久しぶり~♪」
それなのに、実家の玄関先に姿を現した和明さんにあっさりとそう呼び掛けられてしまい、俺はガックリと肩を落とした。
「……お、お久しぶりです和明さん」
「ちょっと待ってねみんなに声かけとかないとね。
おーい!!! 湊人くんが遊びに来たよ~!」
「ちょっと! 和明さん!!」
大声を張り上げる和明さんを制止するも、すぐに和明さんは天然な表情を俺の方に向けて「何で止めんの?」とでも言うような雰囲気でいる。
「いや……、俺は一応夏実を薗田家まで送った報告しに来ただけなんで」
夏以降、俺は和明さんのほろ酔い顔をほぼほぼ目にしていない。
何故なら今日はいつもより夏実の帰宅時間が早くて、俺が毎回実家に顔を出す頃には酔いつぶれて眠っているからだ。
だからこそ和明さんにとって俺のコレは「実家への帰宅」ではなく「珍しく遊びに来た」レベルの感覚なのだろう。
「あー、そうだったんだ。なっちゃん元気してる?最近平日もここで夕飯食べて風呂入って酒飲むからなっちゃんに全然会えた感覚ないんだよねーあはは。そっかそっか~ちゃんと湊人くんがなっちゃんを車で送ってたんだねー、へぇ~。」
(菜央ちゃん直くん、それから夏実までもが和明さんの事を「ムカつく父親」と言う気持ちが分かるなぁ……。
親父がリアルにこんな感じだったら俺もイラッとするかも)
もしかしたら和明さんはワザと俺に能天気発言をしているのかもしれないという仮定を俺は今立ててみた。
菜央ちゃん直くんに完全に嫌われるという経験を経ているからこそ「なっちゃんが湊人くんの元へ行くのを明るいテンションで見守ってやろう(本当はめちゃくちゃ文句を言いたいんだけど)」という父親的感情が渦巻いているのかもしれないのだ。
「……上がって晴美さんと話ししたいんですけどいいですか? 今ってゲームしてます?」
「あー、晴ちゃんならお風呂から上がったばかりだよー。今はよっちゃんがお風呂入ってるからゲームはその後かなぁ。上がるなら上がっちゃってー!」
だがやはり和明さんの能天気発言を聞き続けていると「俺の仮定は間違っているんじゃないか」という気分になる。
(風呂……って言うことは、ついさっきまで4人でのんびり夕食をとっていたと言うことか。
それなら晴美さんと会話するのにはなかなか良いタイミングかもしれないけど……)
俺は、上機嫌でほんわかした口調で俺の帰宅を許可する和明さんに軽く会釈をしてから靴を脱いだ。
(なんていうか……和明さん的にこの家は親父お袋と共にルームシェアしてる感覚なんだろうな。ジュン先輩みたいな「テンアゲ状態でもちゃんと他人に対して気を配ってますよ」感が皆無なんだよなぁ。
元々両家は仲良いし、互いの家を行き来なんて昔からちょいちょいやってるし)
やはり和明さんのこの能天気な雰囲気は素っある。という結論に俺は達し
(両家仲良くするのは良いにしても、俺が広瀬家の一員であることも忘れないでほしいなぁ。今後の為にも)
と、先を歩く和明さんの背中を見つめながら俺は思った。
「晴ちゃん、湊人くんが話あるんだってー」
居間に入るなり和明さんはダイニングテーブルで缶ビールを口にする晴美さんに声を掛けると、晴美さんはそのすぐ背後の俺に向けて無言の挨拶をする。
それに対し俺は晴美さんの見える位置で会釈していると、和明さんは晴美さんに更なる飲酒の許可を得ようとしていた。
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