大精霊に愛されて

鬼灯

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お腹が落ち着くと、何だか疲れがサーシャを襲う。



「貴女なんて、死んでしまいなさい!」



姉のタナ-シャの怒鳴り声に、肩を押されて、階段から突き飛ばされた。僅かな浮遊感からぞわりと恐怖が湧き、悲鳴を上げながら、躰が階段に叩きつけられる。勢いよく転げ落ちる。躰中を打ち据えて止まった。痛みで朦朧としながら、不意にサーシャは自分の躰が浮くのを感じた。
しかし、サーシャの意識は、そこで途絶えたのである。



「どれだけ、眠っていたのかしら」



部屋を見回すも分からない。
僅かに燈が灯り、暖かな雰囲気だ。誰もいない。静かな空間。だが、淋しさは感じない。ほっと一息つくと、ドアがノックされる。



「はい」



「入るぞ」



イザヤの声に、顔が綻ぶ。
そして、入って来たイザヤはサーシャに微笑む。一緒に入って来た男性が、気味悪げにイザヤを見ていた。



「サーシャ、こちらはカッチェだ。医師をしている」



「初めまして、カッチェと申します。どうぞよろしく」



「はい、サーシャと申します。ベッドの上から失礼します。」



それに笑いかけ、



「怪我人は、大人しくしているものです」



と、言う。それに微笑み、サーシャは



「ありがとうございます」



と、礼を言う。そんなやり取りに、イザヤが割って入る。



「挨拶は終わったな、カッチェ、頼む」



「分かった。サーシャ様、手を」



差し出された手に、サーシャは手を乗せる。すると僅かに光り出す。



「温かく感じるでしょう。此は癒しの魔法の一つです」



「癒し、ですか…………温かいです。何だか、ほっとします」



それに頷き、カッチェは言う。



「ずいぶん辛い目にあったのでしょう」



カッチェは視線をサーシャからイザヤに向ける。それに頷き、サーシャに視線を向ける。



「この癒しの光りで、ほっとするのは、心が疲れているからですよ」



安心させるように微笑み、カッチェは頷く。


「もう、大丈夫ですよ」



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