7 / 26
7
しおりを挟む
サーシャは目を覚ましていた。
叔父は優しいが、容赦ない人だ。今頃、侯爵家は叔父が継いでくれているだろう。唯一の心残りに溜息をつく。
父は自分が侯爵家当主だと、叫ぶだろうが、実際はなんの権限もない。
執事のイフリートが、恙なくことを運ぶだろう。サーシャがいなくなれば、叔父夫婦に全てを任せると、手紙を託している。
叔父のアッシュと叔母のマーガレットは、母をこよなく愛していた。
だが母のミーシャは父カムラを愛していた訳ではなかった。祖父の選んだ男だから結婚したに過ぎない。常々、母ミシェルは義務で結婚したと、言っていた。
だが、母はわたくしを愛してくれていた。
叔父夫婦にも、そう言ってくれていた。その為、叔父夫婦は優しくしてくれていた。
「わたくしは、冷たいのかしら…………」
呟くサーシャに、答える声があった。
「こんなことはない」
びくりと震え、視線を向ける。其処にはイザヤが立っていた。
「イザヤ様……」
カツリとサーシャの傍まで歩いてくる。
「そなたの父は、誠実さに欠ける」
ぎしりと、ベッドの端に座るとイザヤは言う。イザヤはサーシャの髪を梳く。
その優しい仕草に、サーシャは頬を染める。
「わたくしは父に愛して欲しかった」
それが全てを語っている。
「吾では、駄目か」
「え…………」
「吾はサーシャを愛している。其れでは駄目か」
「…………イザヤ様」
戸惑うように俯いたサーシャに、苦笑し、イザヤはサーシャを抱きしめる。
「嫌か」
「…………いいえ、い、嫌では、ありません」
顔を真っ赤にして、サーシャが答える。
そんなサーシャに満足げな顔をし、イザヤはサーシャを抱きしめていた手を頭に乗せる。優しく髪を梳きながら、サーシャを見つめる。
その視線を受け、サーシャは悟る。
「侯爵家は叔父夫婦が継いだのですね」
「ああ、そうだ。そなたの父は野に放たれた」
歌うように、言葉が続く。
「そなたの姉のタナ-シャは、そなた同様階段から落ち、療養中だ。だが、一生歩くことは出来ぬし、顔に怪我を負ったゆえ、結婚も出来まい」
と。
叔父は優しいが、容赦ない人だ。今頃、侯爵家は叔父が継いでくれているだろう。唯一の心残りに溜息をつく。
父は自分が侯爵家当主だと、叫ぶだろうが、実際はなんの権限もない。
執事のイフリートが、恙なくことを運ぶだろう。サーシャがいなくなれば、叔父夫婦に全てを任せると、手紙を託している。
叔父のアッシュと叔母のマーガレットは、母をこよなく愛していた。
だが母のミーシャは父カムラを愛していた訳ではなかった。祖父の選んだ男だから結婚したに過ぎない。常々、母ミシェルは義務で結婚したと、言っていた。
だが、母はわたくしを愛してくれていた。
叔父夫婦にも、そう言ってくれていた。その為、叔父夫婦は優しくしてくれていた。
「わたくしは、冷たいのかしら…………」
呟くサーシャに、答える声があった。
「こんなことはない」
びくりと震え、視線を向ける。其処にはイザヤが立っていた。
「イザヤ様……」
カツリとサーシャの傍まで歩いてくる。
「そなたの父は、誠実さに欠ける」
ぎしりと、ベッドの端に座るとイザヤは言う。イザヤはサーシャの髪を梳く。
その優しい仕草に、サーシャは頬を染める。
「わたくしは父に愛して欲しかった」
それが全てを語っている。
「吾では、駄目か」
「え…………」
「吾はサーシャを愛している。其れでは駄目か」
「…………イザヤ様」
戸惑うように俯いたサーシャに、苦笑し、イザヤはサーシャを抱きしめる。
「嫌か」
「…………いいえ、い、嫌では、ありません」
顔を真っ赤にして、サーシャが答える。
そんなサーシャに満足げな顔をし、イザヤはサーシャを抱きしめていた手を頭に乗せる。優しく髪を梳きながら、サーシャを見つめる。
その視線を受け、サーシャは悟る。
「侯爵家は叔父夫婦が継いだのですね」
「ああ、そうだ。そなたの父は野に放たれた」
歌うように、言葉が続く。
「そなたの姉のタナ-シャは、そなた同様階段から落ち、療養中だ。だが、一生歩くことは出来ぬし、顔に怪我を負ったゆえ、結婚も出来まい」
と。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる