巻き込まれた少年

8

野菜の収穫を終え、アースとローカルは家路についた。



「豊作だな」



「まあね。ハウス栽培で、害獣から野菜を守れて万々歳だ」



アースの育てた野菜は獣や小型魔獣達の、かっこうの餌である。



「まあな、アースの育てた野菜は旨いからな。動物達も旨いもん食いたいだろうしな」



「根こそぎ食う奴らに、くれてやるもんはない」



ローカルはハハハと笑い、別れる。
アースは祖父母と暮らす家に入る。



「ばーちゃん、野菜、獲ってきたよ」



「ご苦労様、今何か作るわね」



祖母のミィーシャは、穏やかに笑う。そんなミィーシャを見守るように、祖父のマオはアースに顔を向ける。



「来年は、王都の学園に行くのだな」



「まーね、はっきり言って行きたくないけど」



はあ、とため息をつく。アースにとって、人ごみは、ある意味拷問だ。顔が整いすぎていて、人ごみに埋没しないからだ。
疲れたように、頬を摘まむアースにマオは苦笑いをする。
娘のように顔が整っているアースは、娘とは違い、真面目な性格をしていた。娘のティナはその美しい顔を使って男に貢がせていた。そんなティナの側にアースを置いておくのが忍びなかった。ティナの影響を受けるのではないかと、心配していた。だが、アースはティナの影響を受けることなくまっすぐに育ち、ミィーシャもマオも安心した。友人にも恵まれ、二人はほっとしていた。
目下のアースの悩みは、その美しい整いすぎた顔にある。





「変なのに、目をつけられなければいいな」




ポツリと呟く、アースに何も言えないマオであった。