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1st season 第四章
088 王命
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王国歴334年9月26日。
二度目のスタンピードからもうすぐ一年。
そう、今日はあたしとコイツの結婚二周年記念日、みんなは気を使って朝から居ない。
「何はともあれシリア、俺なんかを見捨てずに、一緒に居てくれてありがとう」
「な、なによ?あらたまって?」
「ほら、こういうのって『言わなくてもわかってるだろ?』っていうのも心地良いもんだけど、たまにはちゃんと言葉にしときたいじゃん?」
「そ、そうね。あたしも・・・アンタと結婚して、アンタと出会えて、ほんと良かった。ありがとう」
ちゅっ
はぁぁぁ、しあわせ。
居心地のいい家族に囲まれて、ギルマスも領主様も、神様まで仲良くしてくれる。
あたしの周りには嫌な奴なんて一人も居ない。
このしあわせも、そもそもあたしが生きてられるのも、全部全部コイツのおかげ。
「今日は二人で神殿に挨拶に行って、そのままたまには違う店で食事しよう」
「・・・いいわねっ!いつも皆と一緒だから、ときどきの二人きりは新鮮でなかなか飽きないわっ!」
本当にそうだ。
ハーレムなんてどうなっちゃうかとも思ったけど、結婚してても二人きりじゃないから、かえっていつまでも飽きない気がする。
ユリアもアベルさん達も、やっぱ正解だったわ!
トタタタタタタタタッ
「カっ、カイン様っ!」
「ん?ラティア?どうした?」
「王都から・・・王からの使者様がお見えです!」
食堂の個室、そのソファーに腰掛け、役人が二人、ふんぞり返っていた。
これ・・・あんまり良くない雰囲気じゃない?
「お待たせしました。私がカイン・ロックハウスですが、王よりの使者様であらせられるとか?」
「ふんっ、貴様がロックハート卿か」
「いえ、ロックハートでは無くロックハウスです」
「どちらでも良いっ!王命を伝えるっ!『汝が所有する犯罪奴隷、氷結姫ことユリアを献上せよ』との事だ」
えっ!まさかっ?
「・・・ユリ・・・わたくしの奴隷を王が欲しておられるのですか?」
「そう言った。騎士程度の身分で王に献上品を送れるなど、光栄に思えっ!」
「・・・わかりました。とは言えわたくしも出立の準備などございます故、10日ほどお待ちいただけますか?」
はっ?何いってんの?
「いや、行くのは奴隷だけだ。騎士程度で王に謁見できるわけがなかろう?奴隷紋の事は知っている。我らが所有権を預かって王にお届けする。王への献上品、途中で死なせるわけには行かぬからなぁ?」
「・・・なるほど。それであれば心配ありませんね。こんな田舎までお役目ご苦労さまです。ところで・・・護衛の者が見当たりませんが、お役目はお二人のみで?」
あっ、やばい・・・コイツ、めっちゃ殺る気だ。
「ふんっ、貴様の知ったことか。我らは二人とも剣術のギフト持ち、おかしなことは考えるなよ?」
「いえ、もしも護衛が必要であれば当家のものを伴にお使い頂こうかと・・・何しろ田舎騎士ゆえ、王都の偉いお役人様に顔つなぎが出来ればなどと思いまして。因みに当家のような田舎者、どこでお知りに?王にお知らせ下さった方にも何か贈り物などすべきでしょうか?」
「あー、そういう事か?いやな、以前に汝の奴隷を愉しんだというシュメリエック侯爵様が王の耳に入れてな?リッチモンド子爵に献上申し付けようとしたところ、既に汝に売ったというでは無いか?クルスタット子爵の寄り子ならばこの街にいるのでは無いか?という事になって、我らがわざわざ足を運んだのだ。贈答品を用意するなら運んでやらんでも無いぞ?」
「なるほど、それでこんな遠くまで・・・それは運が悪かったですね・・・あなた達は本当に運が悪かった」
バシュッ バシュッ ドサッ
「はぁ・・・絶対殺ると思った」
「ラティア、ごめん、嫌なものを見せた」
「いえ・・・でも、驚き・・・ました」
「シリア、すぐに全員を神殿に集めて。ヴァルダークさんとクルスタット卿にも緊急事態だからって集まってもらって」
「わかったわ」
「俺は、ラティアと話をしてから行く」
はぁ・・・とんだ結婚記念日ね。
この街ともお別れか・・・ラティアさん、ついてくるかな?ついてきて欲しいな。
~~~~~
「ラティア、すぐに街を出ることになる。行き先は・・・わからない」
「はい。ついてまいります」
「いや、少し考えてくれ。ちょっと想定以上に敵が大きい。王国全部が敵になる可能性があるんだ。9歳のアリスを俺の事情に巻き込んで、そんな危険な中に飛び込ませてもいいのかわからないんだ・・・」
「カイン様。私はそうは考えません。危険はどこにでもあります。カイン様が居なければ、あの子は既に三度死んでいます。例えそこが戦火の中でも、あの子にとって一番安全なのはカイン様のお側に居ることです。母として、娘を一番安全な場所に置きたいからこそ、カイン様についてまいります」
「・・・わかった。荷造りしてくれ。二度と戻れない可能性が高い」
「はい。この宿は・・・どうしましょう?」
「・・・従業員に話すのは少し待ってくれ、クルスタット卿に相談してくる」
「わかりました。ではアリスと支度してお待ちします」
「うん・・・ごめんな?」
「ふふふ、これから冒険が始まるんですね?ちょっとワクワクします」
~~~~~
神殿に着くと、既に全員集まっていた。
「ホルジス様、今、お話できますでしょうか?」
・・・・・
「はい、カインさん、どうされましたか?」
「ユリアに追手が来ました。元凶はこの国の王です。王命でユリアを献上せよという使いが二人やってきましたので、殺しました」
「ふむ・・・なんだか500年前の勇者と同じような流れですね。もう王朝も入れ替わってるというのに、やる事が代わり映えしない・・・で、どうされるのです?」
「今夜、街を出ます。それでホルジス様を少し言い訳に使わせて頂きたくてですね」
「猊下っ!なりませんっ!今こそ神理教国を建国すべきですっ!」
「いえっ、それはダメです」
「何故ですっ?」
「今建国すれば、メンツを潰された王国と間違いなく戦争になります。俺達のせいでこの街の人達を犠牲にはできない」
「スタンピードすら殲滅する主殿なら、王国軍に勝つことも出来るのでは?」
「あー、確かに、戦闘だけなら、数千の単位ならやれない事も無いかもしれない・・・でも、戦闘なんかに勝てても戦争には勝てないんだ」
「?・・・よくわかりません?」
「仮に、この街に立て籠もって、押し寄せる王国軍をすべて蹴散らせたとする。でも、俺が王国軍の指揮官なら、攻め込んだりしない。大軍で街を包囲して、あとはじーっと待つだけで勝てるからだ」
「あっ・・・食料、ですか?」
「うん、国民四万で農地への道を封鎖されればエルダーさはあっという間に飢えるよ」
「・・・くっ・・・猊下」
「と、いうわけで、ロックハウス家が街を出るのは確定事項です。そこで、残る皆さんに幾つかお願いがあります」
「言ってみろ」
「まず、この神殿ですが、クルスタット卿・ヴォルダークさん・ナルドさんの三人で切り盛りしてって下さい」
「あんっ?俺も残んのかよ?」
「はい。強引に連れてきた上に色々押し付けることになって申し訳ないんですが、ナルドさんには他にもここでやって欲しいことがあるので」
「なんだ?他にもって?」
「あー、まとめて話しますね。ストーリーはこうです。半月ほど前『異界神話』の配布にお喜びになったホルジス様が教皇である俺に命じます『聖教国へ赴き、聖教の教えの中にこの神話を取り入れるよう伝え、お前自身も布教に邁進せよ』と。で、俺は一家を連れて布教の旅に出ることを決めるわけですが、悪のクルスタット子爵と悪のナルドさんが手を組んで、うまいこと俺をそそのかし、どうせいつ帰れるのかわからないんだからと白兎亭をかすめ取るように買い取ってしまうんです。そして追い立てられるように俺達は、一昨日街を出ました。追手が白兎亭を訪ねてきても、使者の死体がどこかで見つかるなんて事は絶対に無いですから、なんの事かさっぱりわからないで通して下さい。以上、終わり」
「あんだよっ!悪役じゃねぇか!」
「猊下・・・そこまで我らの身を案じて・・・」
「うん、カインさん、いい手だと思うよ。うんうん、改めて命じよう、カイン・ロックハウスよ、汝、聖教国に赴き、聖教教皇に我が命としてこの異界神話を伝えよ。これでいいね」
「ありがとうございます」
「おっちゃん、こういうことよ。コイツはこれから王国の敵になるの。仲間だと思われたらおっちゃんも何されるかわかんないわ。だから敵って事にしとくの。そうすればおっちゃんは安全」
「・・・そういう事か」
「で、無料開放、続けて下さい。クルスタット卿に頼もうかとも思ったんですが、ナルドさんが居ないと保守できないじゃないですか?俺達が作った楽園、取り上げたく無いんです」
「・・・わーった。アリバイじゃなくほんとに買ってやる。んで、どんどんデカくして、いつかおめぇが帰ってきたら自慢してやるよ!」
「ありがとうございます。で、今ある印刷キットとか、湯沸かし器とか諸々、もってっちゃっていいですか?どこかで使うタイミングありそうな気がするんで」
「おぅ、全部もってって・・・いや、一組ずつだけ残しとけ、一から作んのはたいへんだかんな」
「で、カイン・・・猊下。俺の役割がねーんだが?」
「ヴァルダークさんはいざって時の人手確保です。クルスタット卿もナルドさんも自由にできる人手が無いですから。この街をまもるのが役割っていうのは、これまでもこれからも変わらないでしょ?」
「ま、そうだな」
「最後にホルジス様、こんな事をお願いするのは大変恐縮なんですが、たまに俺達の近況とか、街の様子とか、橋渡しをお願いできないでしょうか?まず問題ないとは思うんですが、ここの事が心配で」
「勿論、構いませんよ。カインさんは私の命で布教の旅に出るのですから、神殿のあるところに寄ったらいつでも呼んで下さい」
「ありがとうございます」
俺達はその夜、街から人気が消えるまで神殿に潜み、多くを語り合った。
そしてラティアとアリスを迎え、領主の馬車でひっそりと街を出た。
衛兵の記憶にない出立記録が一昨日の日付で残されたはずだ。
(第四章 完)
1st season 完結
##### お知らせ #####
明日12月12日午前0時から2nd season始まります。
二度目のスタンピードからもうすぐ一年。
そう、今日はあたしとコイツの結婚二周年記念日、みんなは気を使って朝から居ない。
「何はともあれシリア、俺なんかを見捨てずに、一緒に居てくれてありがとう」
「な、なによ?あらたまって?」
「ほら、こういうのって『言わなくてもわかってるだろ?』っていうのも心地良いもんだけど、たまにはちゃんと言葉にしときたいじゃん?」
「そ、そうね。あたしも・・・アンタと結婚して、アンタと出会えて、ほんと良かった。ありがとう」
ちゅっ
はぁぁぁ、しあわせ。
居心地のいい家族に囲まれて、ギルマスも領主様も、神様まで仲良くしてくれる。
あたしの周りには嫌な奴なんて一人も居ない。
このしあわせも、そもそもあたしが生きてられるのも、全部全部コイツのおかげ。
「今日は二人で神殿に挨拶に行って、そのままたまには違う店で食事しよう」
「・・・いいわねっ!いつも皆と一緒だから、ときどきの二人きりは新鮮でなかなか飽きないわっ!」
本当にそうだ。
ハーレムなんてどうなっちゃうかとも思ったけど、結婚してても二人きりじゃないから、かえっていつまでも飽きない気がする。
ユリアもアベルさん達も、やっぱ正解だったわ!
トタタタタタタタタッ
「カっ、カイン様っ!」
「ん?ラティア?どうした?」
「王都から・・・王からの使者様がお見えです!」
食堂の個室、そのソファーに腰掛け、役人が二人、ふんぞり返っていた。
これ・・・あんまり良くない雰囲気じゃない?
「お待たせしました。私がカイン・ロックハウスですが、王よりの使者様であらせられるとか?」
「ふんっ、貴様がロックハート卿か」
「いえ、ロックハートでは無くロックハウスです」
「どちらでも良いっ!王命を伝えるっ!『汝が所有する犯罪奴隷、氷結姫ことユリアを献上せよ』との事だ」
えっ!まさかっ?
「・・・ユリ・・・わたくしの奴隷を王が欲しておられるのですか?」
「そう言った。騎士程度の身分で王に献上品を送れるなど、光栄に思えっ!」
「・・・わかりました。とは言えわたくしも出立の準備などございます故、10日ほどお待ちいただけますか?」
はっ?何いってんの?
「いや、行くのは奴隷だけだ。騎士程度で王に謁見できるわけがなかろう?奴隷紋の事は知っている。我らが所有権を預かって王にお届けする。王への献上品、途中で死なせるわけには行かぬからなぁ?」
「・・・なるほど。それであれば心配ありませんね。こんな田舎までお役目ご苦労さまです。ところで・・・護衛の者が見当たりませんが、お役目はお二人のみで?」
あっ、やばい・・・コイツ、めっちゃ殺る気だ。
「ふんっ、貴様の知ったことか。我らは二人とも剣術のギフト持ち、おかしなことは考えるなよ?」
「いえ、もしも護衛が必要であれば当家のものを伴にお使い頂こうかと・・・何しろ田舎騎士ゆえ、王都の偉いお役人様に顔つなぎが出来ればなどと思いまして。因みに当家のような田舎者、どこでお知りに?王にお知らせ下さった方にも何か贈り物などすべきでしょうか?」
「あー、そういう事か?いやな、以前に汝の奴隷を愉しんだというシュメリエック侯爵様が王の耳に入れてな?リッチモンド子爵に献上申し付けようとしたところ、既に汝に売ったというでは無いか?クルスタット子爵の寄り子ならばこの街にいるのでは無いか?という事になって、我らがわざわざ足を運んだのだ。贈答品を用意するなら運んでやらんでも無いぞ?」
「なるほど、それでこんな遠くまで・・・それは運が悪かったですね・・・あなた達は本当に運が悪かった」
バシュッ バシュッ ドサッ
「はぁ・・・絶対殺ると思った」
「ラティア、ごめん、嫌なものを見せた」
「いえ・・・でも、驚き・・・ました」
「シリア、すぐに全員を神殿に集めて。ヴァルダークさんとクルスタット卿にも緊急事態だからって集まってもらって」
「わかったわ」
「俺は、ラティアと話をしてから行く」
はぁ・・・とんだ結婚記念日ね。
この街ともお別れか・・・ラティアさん、ついてくるかな?ついてきて欲しいな。
~~~~~
「ラティア、すぐに街を出ることになる。行き先は・・・わからない」
「はい。ついてまいります」
「いや、少し考えてくれ。ちょっと想定以上に敵が大きい。王国全部が敵になる可能性があるんだ。9歳のアリスを俺の事情に巻き込んで、そんな危険な中に飛び込ませてもいいのかわからないんだ・・・」
「カイン様。私はそうは考えません。危険はどこにでもあります。カイン様が居なければ、あの子は既に三度死んでいます。例えそこが戦火の中でも、あの子にとって一番安全なのはカイン様のお側に居ることです。母として、娘を一番安全な場所に置きたいからこそ、カイン様についてまいります」
「・・・わかった。荷造りしてくれ。二度と戻れない可能性が高い」
「はい。この宿は・・・どうしましょう?」
「・・・従業員に話すのは少し待ってくれ、クルスタット卿に相談してくる」
「わかりました。ではアリスと支度してお待ちします」
「うん・・・ごめんな?」
「ふふふ、これから冒険が始まるんですね?ちょっとワクワクします」
~~~~~
神殿に着くと、既に全員集まっていた。
「ホルジス様、今、お話できますでしょうか?」
・・・・・
「はい、カインさん、どうされましたか?」
「ユリアに追手が来ました。元凶はこの国の王です。王命でユリアを献上せよという使いが二人やってきましたので、殺しました」
「ふむ・・・なんだか500年前の勇者と同じような流れですね。もう王朝も入れ替わってるというのに、やる事が代わり映えしない・・・で、どうされるのです?」
「今夜、街を出ます。それでホルジス様を少し言い訳に使わせて頂きたくてですね」
「猊下っ!なりませんっ!今こそ神理教国を建国すべきですっ!」
「いえっ、それはダメです」
「何故ですっ?」
「今建国すれば、メンツを潰された王国と間違いなく戦争になります。俺達のせいでこの街の人達を犠牲にはできない」
「スタンピードすら殲滅する主殿なら、王国軍に勝つことも出来るのでは?」
「あー、確かに、戦闘だけなら、数千の単位ならやれない事も無いかもしれない・・・でも、戦闘なんかに勝てても戦争には勝てないんだ」
「?・・・よくわかりません?」
「仮に、この街に立て籠もって、押し寄せる王国軍をすべて蹴散らせたとする。でも、俺が王国軍の指揮官なら、攻め込んだりしない。大軍で街を包囲して、あとはじーっと待つだけで勝てるからだ」
「あっ・・・食料、ですか?」
「うん、国民四万で農地への道を封鎖されればエルダーさはあっという間に飢えるよ」
「・・・くっ・・・猊下」
「と、いうわけで、ロックハウス家が街を出るのは確定事項です。そこで、残る皆さんに幾つかお願いがあります」
「言ってみろ」
「まず、この神殿ですが、クルスタット卿・ヴォルダークさん・ナルドさんの三人で切り盛りしてって下さい」
「あんっ?俺も残んのかよ?」
「はい。強引に連れてきた上に色々押し付けることになって申し訳ないんですが、ナルドさんには他にもここでやって欲しいことがあるので」
「なんだ?他にもって?」
「あー、まとめて話しますね。ストーリーはこうです。半月ほど前『異界神話』の配布にお喜びになったホルジス様が教皇である俺に命じます『聖教国へ赴き、聖教の教えの中にこの神話を取り入れるよう伝え、お前自身も布教に邁進せよ』と。で、俺は一家を連れて布教の旅に出ることを決めるわけですが、悪のクルスタット子爵と悪のナルドさんが手を組んで、うまいこと俺をそそのかし、どうせいつ帰れるのかわからないんだからと白兎亭をかすめ取るように買い取ってしまうんです。そして追い立てられるように俺達は、一昨日街を出ました。追手が白兎亭を訪ねてきても、使者の死体がどこかで見つかるなんて事は絶対に無いですから、なんの事かさっぱりわからないで通して下さい。以上、終わり」
「あんだよっ!悪役じゃねぇか!」
「猊下・・・そこまで我らの身を案じて・・・」
「うん、カインさん、いい手だと思うよ。うんうん、改めて命じよう、カイン・ロックハウスよ、汝、聖教国に赴き、聖教教皇に我が命としてこの異界神話を伝えよ。これでいいね」
「ありがとうございます」
「おっちゃん、こういうことよ。コイツはこれから王国の敵になるの。仲間だと思われたらおっちゃんも何されるかわかんないわ。だから敵って事にしとくの。そうすればおっちゃんは安全」
「・・・そういう事か」
「で、無料開放、続けて下さい。クルスタット卿に頼もうかとも思ったんですが、ナルドさんが居ないと保守できないじゃないですか?俺達が作った楽園、取り上げたく無いんです」
「・・・わーった。アリバイじゃなくほんとに買ってやる。んで、どんどんデカくして、いつかおめぇが帰ってきたら自慢してやるよ!」
「ありがとうございます。で、今ある印刷キットとか、湯沸かし器とか諸々、もってっちゃっていいですか?どこかで使うタイミングありそうな気がするんで」
「おぅ、全部もってって・・・いや、一組ずつだけ残しとけ、一から作んのはたいへんだかんな」
「で、カイン・・・猊下。俺の役割がねーんだが?」
「ヴァルダークさんはいざって時の人手確保です。クルスタット卿もナルドさんも自由にできる人手が無いですから。この街をまもるのが役割っていうのは、これまでもこれからも変わらないでしょ?」
「ま、そうだな」
「最後にホルジス様、こんな事をお願いするのは大変恐縮なんですが、たまに俺達の近況とか、街の様子とか、橋渡しをお願いできないでしょうか?まず問題ないとは思うんですが、ここの事が心配で」
「勿論、構いませんよ。カインさんは私の命で布教の旅に出るのですから、神殿のあるところに寄ったらいつでも呼んで下さい」
「ありがとうございます」
俺達はその夜、街から人気が消えるまで神殿に潜み、多くを語り合った。
そしてラティアとアリスを迎え、領主の馬車でひっそりと街を出た。
衛兵の記憶にない出立記録が一昨日の日付で残されたはずだ。
(第四章 完)
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明日12月12日午前0時から2nd season始まります。
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