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12. 地獄の大公爵
しおりを挟む第2408回の会議が、遂に始まった。
会議2000回以上してる割には、ほん――ッとうに城の中やら外やらぐっちゃぐちゃだったし、200回過ぎた辺りから何の書類も残ってなかったし……冗談抜きに踊りを観るだけだったんだなぁって頭を抱えたのが昨日。
急遽議事録用ノートを作る事になったんだが、この世界にはパソコンがない。
今までなら、わからない部分をすぐにネットで調べられたけど、これからはそうはいかないのだ。
なんとか形になった議事録帳をベルゼに渡し、今はベルちゃんの前に置かれている。
――ベルゼは綺麗に書こうとして、時間がかかるタチらしい。
書記はベルちゃん、司会進行はベルゼの役だ。俺? 俺は合間を見て頷く係。簡単なお仕事です。
ちなみに、ダンスはないがBGMとしてハープの音色が響いている。
本当は無音の方がいいんだろうけど、それだとこのプレッシャーに耐えられそうになかったから、許してほしい。
眠気? そんな余裕ない。胃がキリキリ痛んでいる。
「――――軍部につきましても変わりなく」
「うむ」
将軍であるサタナキアの報告に頷く。
これで一通り報告が終わった。
将軍兼総司令官のサタナキアは、何というか……めっちゃくちゃかっこいい。
男が惚れる漢というと、ムキムキのマッチョと思われがちだが、ムダなく引き締められた細身の身体に、整った顔。右目の泣きボクロが色気を醸し出している。
それぞれに今後の改善点等を伝えるベルゼの声を聞きながら、俺は小さく息を吐いた。
なんとか、無事終わりそうだ。
会議が終わり、各々が退出していく中、一人、ニヤニヤとした顔で近付いてくる奴がいた。
あ、イヤな予感が……
「久しぶりですねェ、サタン様。会議室使うなんざ、珍しいじゃねェですかァ。近頃じゃあ城の中の物も売り捌いてるみたいですし?」
あの大量のゴミ、売り捌いてたのか。
確かに捨てるだけじゃ勿体ないなぁとは思ってたんだよ。
有機系は無理だろうけど、ゴミの中には高値で売れる物もあったんだろう。……何しろ魔王城のゴミだし? 魔王の私物だし?
ちょこちょこ高そうなのも紛れてたもんな……。それこそ物が大量にあったから、それなりの値段になったんだろうね……
いきなり遠い目になった俺を不審そうに見つめる顔に気付き、ハッとする。
緑がかった髪に、上がった口元からは牙のような歯が覗いている。
え~っと、確かこいつは――――
「アスタロト。口を慎め」
そうだ! アスタロト。地獄の大公爵!
日本に住む俺としては、公爵とか言われてもあんまり感覚が分からないが、随分と凄い奴らしい。見た目はモロヤンキーだがな!
「だってよォ、急に色々と始めたみてぇだし? 何か面白い事考えてんのかなァ、なんて?」
……言っちゃ何だが、こんなのが偉い奴で大丈夫なのか?
さっき報告してたサタナキアとかの方がしっかりしてそうなイメージなんだが。
むしろ悪魔的といえば悪魔的なのか? う~ん……
「それで? 何考えてんだ?」
ついに敬語じゃなくなったんだが、これって怒るとこ?
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