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14. お偉いさん
しおりを挟む「今回、立派なエクソシストなったこと、心より祝福する。本当におめでとう。これからも真摯に取り組むように。期待しているぞ」
「……ありがとうございます」
次の日、門の前で待ち構えていたアリアナ先輩に出社早々課長室に連れて行かれたわたしは、あれよあれよという間にお偉いさんたちの前に立たされて祝辞を述べられていた。
皆制服なのに自分だけ私服のままだからかなり浮いてる。というか昨日の内に教えてくれてたら早く来たのに。忙しいで有名なタラッタ課長が、さっきから何度も腕時計を見ては溜息を吐いている。
祝辞を言い終えたエクソシスト課の課長、トミー・ランド課長の一言言えとでも言いたげな視線を受けたわたしは内心テンパりながらお偉いさんたちの方へ向いた。
皆の真剣な表情に緊張したけど、二人分の場所をとったぽっこりお腹のボブ室長が「頑張れ」と口パクで言ってくれて少し和んだ。
「このような場を設けていただき、ありがとうございます。まだまだ未熟ですが、精一杯頑張っていきますのでよろしくお願いします」
頭を下げると、まばらな拍手が起こった。
緊張したんだからもう少し盛大にしてよとも思ったけど、早く終わらせてほしいから余計なことは言わない。というより雰囲気的に絶対言えない。
ランド課長が締めてくれて、前列にいたお偉いさん方が退出していく。紹介されたけど、緊張しすぎて名前覚えてない。一人優しい感じのおじいちゃんがいたけど、それ以外は皆目がギラギラしていて怖かったから、いなくなってくれて正直ほっとした。
「やぁやぁ目出度い! 事務課からエクソシストが出るなんて思ってもみなかった。しかも新人は三年ぶりと聞くぞ。俺は鼻が高い! お前は事務課の星だっ」
「いたっ! し、室長、痛い」
たぷんたぷんとお腹を揺らしながらやって来たボブ室長がわたしの肩を叩いた。喜んでくれてるのは分かるけど、少しは加減してほしい。
「おめでとう、カティ。これから君は一人でやっていくことになるけど、何かあったら今まで通り頼ってくれて構わない」
「カティ~! ほんっとうにおめでとう。あなたが独り立ちするのは嬉しいことだけど、やっぱり寂しいわ。私ったらダメな先輩ね」
「せんぱい~っ」
ボブ室長に叩かれるところをばっちり目撃したらしいクリストファーさんが苦笑を浮かべながらやって来た。アリアナ先輩はわたしのためにその大きな瞳に涙を溜めてくれていて、ついわたしまで貰い泣きしてしまいそうになる。
「君の独り立ちを祝して飲み会を企画しようと思ってるんだけど、今週末は空いてるかい?」
「は、はい。大丈夫です」
「お、それは俺も参加していいのかな?」
「大歓迎ですよ。ね、カティ」
「はい! ボブ室長、奢ってくださいね」
「よーし、事務課の星の頼みだ! 任せとけ!」
今から張り切るボブ室長に笑いがこぼれる。
「そうと決まったらガンガン稼がないとな!」と腕まくりして退出していく後ろ姿に、わたしが事務課にいたときもこうして良くしてくれていたな、と少し懐かしくなった。
「ああ、そうだ。カティ、これから時間あるかい? 今朝方エミリーちゃんが意識を取り戻したと連絡があったから行こうと思うんだが」
「はい! 行きたいです。あ、でも……」
「ん? 何かあるのかい?」
「彼女についていた悪魔が殺した山羊について、少し調べたいと思って……」
昨夜シリルくんに言われたことを調べるためには資料を読むより直接現地で聴き込みをした方がいい。今日は何の任務も入ってなかったからちょうどよかった。
クリストファーさんは何か考え込む様子で瞳を閉じると、「そうだね」と頷いた。
「山羊は悪魔が作ったともいわれているんだ。もしかしたら何か関係があるかもしれない。僕も行こう」
「私も行きたいけどこれから仕事があるの。クリス、カティのことを頼むわ」
「ああ、任せてくれ。それじゃあ行こうか、カティ」
自然と肩に回された腕に鳥肌が立った。
助けを求めようと振り返るけど、アリアナ先輩は女神のような笑顔で手を振ってらっしゃった。
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