聖女であることを隠しているのに、なぜ溺愛されてるの私?

延野 正行

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第三章

第37話

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「ちょ! おま! 大丈夫か、ミレニア?」

 さっきまで私に負ぶさられていたマレーラが心配してくれる。
 さすが私の心の友だわ。
 こんな窮地こそ友情の力が必要なのよ。

 私も頑張らないとね……ヒック!

「あれ?」

 なんだか頭がボウッとしてきた。
 えっと……。今、何をしてるんだっけ?
 あ、そうそう。アームレオンと戦ってる真っ最中だったわ。

 私は辺りを見渡すと、黄金色の毛並みが揺らすアームレオンを見つけた。
 大きな口を開けると、こちらを威嚇する。
 6本の足で地面を掻くと、前肢の二本の先に光る爪を舐めた。

『ブオオオオオオオオ!!』

 戦車チャリオットのようにアームレオンは突撃してくる。
 背後でマレーラたちの悲鳴が聞こえた。
 こうなったら聖女も、魔術師もないわ。
 今、ここで友達を助けられるのは、私しかいない。
 アームレオンには悪いけど、全力でやらせてもらうわよ。

「エンチャンに座す魔シャよ。悪鬼、人ならヘるものを討ち払ヘ……」


 【ブラストへーア】!!


 私は魔術を唱える。
 だが、手の先から出てきたのは、焚き火程度の小さな炎だった。

「あ~。あったか~い」

「言ってる場合か!! よけろ!!」

 マレーラが私を担ぐ。
 突進してきたアームレオンの横へと避けた。

 すごい。マレーラ、グッジョブだわ。
 私を担いで避けるなんて結構力持ちなのね。
 しかも、お姫様だっこ。
 やばい。マレーラがすっごくカッコいい男子に見えてきた。

「マレーラ、結婚してくれる?」

「な、何を言ってるんだよ。酔っ払い!! しっかりしろ! いい加減酔いを覚ませ」

「大丈夫。酔ってないから」

「酔っ払いはそういうの!!」

「マレーラ、それより後ろよ。避けて」

 私はマレーラの背後を指差す。
 濃い獣臭が鼻を衝き、すぐ側で鋭い瞳が光っていた。

「キャアアアアアア!! おしまいだ!!」

 マレーラは顔を伏せた。
 その時だ。大きな影が私たちを包む。
 それは件のアームレオンも包むと、背中に落ちてきた。

 ドスンッ!

 空気が揺れると、アームレオンの身体が折れる。
 落ちてきたのは、巨大な岩の塊。肝試しに出会った岩精霊だった。

「ナイス! スーキー!!」

 マレーラが讃えると、スーキーはぐっと親指を立てる。

「あの岩精霊って、スーキーの精霊だったのね。 あれ? じゃあ、なんで私の前に??」

「え? いや? 今、しらふになるなよ。それよりもアームレオンをどうするかだろう」

「大丈夫よ、マレーラ」

 私はマレーラから降りる。
 近くにあった手頃な木の枝を引き抜いた。
 ヒュンヒュンと軽く動かす。

 魔術が食べなら、剣で応戦するしかないわね。

「ミレニア、お前剣もできるのか?」

「さあ……。剣はお兄ちゃんにちょっと教えてもらった程度

「はあ? それでアームレオンと戦おうってのか??」

「そうよ。だって、私の後ろには――――」


 大事な友達がいるんだから……。


 …………。

 え? なんでそこでしんと静まり返るの。
 私としては「ふっ! 決まった!」とか思ってたんだけど。
 まあ、いいや。どうなるかわからないけど、友達のために戦うのは悪くないことだわ。

 私ってば、根っからの救世主体質なのよね。

「ほら。来なさいよ。相手してあげるわ」

 指先を動かして、アームレオンを挑発する。
 それが通じたのかどうかわからないけど、アームレオンは鋭く吠えて、私との距離を急速に縮めた。
 太い大樹の幹を思わせるような前肢を振る。
 それはほぼ私の目から見て、可視不可能だった。

 あ。ヤバい。……これ、本当に死んだかも。


『やれやれ。君は――――』

(え? 誰?)

『その問いに答える前に、ちょっと1歩下がってごらん』

 私は素直に声に従う。
 1歩後退ると、私の胸スレスレにアームレオンの爪が通り過ぎていった。

(おお! すごい。躱せた)

『喜んでる場合じゃないよ。次は踏みつけだ。大きく右にジャンプして』

(誰だか知らないけど、了解!)

 言われるままによたよたと右にジャンプする。
 すると、予想通りアームレオンが踏みつけてきた。
 1歩遅かったら、私はぺちゃんこになっていただろう。

(次は?)

『尻餅を付いて』

(尻餅??)

 私は言われた通りにする。
 直後、頭の上を前肢が通り抜けていった。
 すごい。すごい。アームレオンの動きを完璧に読んでる。

(あなたって――――)

『感心してないで。君の攻撃だ。持ってる枝をアームレオンの口の中にツッコんで』

 え? 何それ? と聞くまでもない。
 今、私の前には無防備なアームレオンの口があったからだ。
 大きく開けて、喉の奥まで見える。

「ええい!!」

 気合い一閃!
 木の枝を槍のように扱い、私はアームレオンの口に突き入れた。
 枝はあっさりと口内に刺さる。どす黒い魔物の血が噴き出した。

「やった!!」

 喜んだのは、私だけじゃない。
 見ていたマレーラたちもガッツポーズを取る。
 一方、声の主だけが冷静だった。

『喜ぶのは早いよ! 今だ。君が突き立てた枝を避雷針代わりにして……』

(なるほどね)

 すべてを理解した私は、後ろを振り返って叫んだ。

「今よ! マレーラ!! 枝にさっきの魔術を!!」

 私の言葉に、マレーラは即座に反応する。

「なるほど。そういうことか!!」

 すぐに呪文を詠唱すると、刺さった枝にのたうち回るアームレオンに手を掲げた。

雷戟サンダースピア】!!

 雷撃の槍がアームレオンに刺さった枝に伝わる。
 雷光は枝を伝って、アームレオンの口内へと向かい、さらに奥の内臓に直接ダメージを与えた。

『ギャアアアアアアアアアアアアア!!』

 アームレオンは断末魔の悲鳴が上がる。
 すごい! これは本当にAランクの魔物を倒しちゃうかもよ!


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

3回目のワクチンを打ちました。
急に更新が滞ったら、
副反応でのたうち回ってると思っていただければ幸いです。
(1,2回目は何もなかったのですが、すでに熱が上がり始めてるので微妙かも)

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