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1章
第15話 密かに育まれる悪
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1回戦の相手は、ネレムがいるEクラスだった。
「なんだ、Fクラスのヤツらの殺気は?」
「いつになく本気だぞ、あいつら」
「ヤツらがジャアクのいるFクラスか。なるほど、面構えが違う」
「野獣のようだ」
すでに競技会場に来ていた我らを見て、戦いているらしい。
戦は最初が肝心だ。
勝つ気概を如何に持ち続けるか。
それを持つ者が勝者となるのだ。
今のFクラスには、その勝つ気概が高まっていた。
皆が一丸になっているのを感じる。
良いことだ。
その輪の中に、我がいる。
その事が何より嬉しかった。
(絶対に勝つ!)
(負けたら、オレ達は死が確定)
(どんな手を使っても、勝つわ)
(ジャアクとトレーニングなんてご免よ)
何を考えているのか、知らぬが皆の目が血走っている。
まるで飢えた狼のようだ。
「ルヴルの姐さん、ハートリーの姐貴、胸を貸してもらいます」
戦う前に、ネレムが我とハートリーに挨拶をしにきた。
ハートリーは慌てて頭を下げる。
「こちらこそよろしくね、ネレムさん」
「ネレム、準備は万端ですか」
「大丈夫です。仕込みはバッチリですから」
ネレムは親指を立てる。
仕込みとはなんだ?
何か策を立ててきたというのか。
なるほど。
これは油断ならぬな。
胸を貸すと言いながら、我らを倒す気満々ではないか。
そうでなくては面白くない。
我はニコリといつものスマイルを浮かべる。
「正々堂々と良い試合をしましょう」
「はい。正々堂々頑張ります!!」
そして、試合は始まった。
前衛の聖騎士10名が居並ぶ。
その背後で聖女と神官が構え、合図を待った。
「はじめ!」
教官の声が飛ぶ。
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
一際大きく鬨の声を上げたのは、Fクラスだった。
作戦も指揮もへったくれもない。
ただ目の前の敵に向かって、ダッシュしていく。
中央突破か!
うむ。やはり戦において、中央突破こそ王道。
皆、なかなかわかっておるではないか。
対する相手の動きは鈍い。
これは勝負あったかもれぬぞ。
「ぐおおおお! お腹が痛い!!」
「急にお腹が」
「た、頼む! 回復を!!」
Eクラスの聖騎士達が蹲る。
手を上げ、聖女に回復を求めた。
すぐにネレム率いる聖女たちは回復魔術を送る。
「イタタタタタ!」
「余計に痛くなってきた」
「やめろ! 回復中止!!」
どうやら急に腹痛に見舞われたようだな。
実は、腹痛は回復魔術では回復できぬ。
それどころか、体内を活性化させ、さらに腹痛を促してしまうのだ。
我らよりランクが上とはいえ、まだまだ我らと同じ新入生だ。
回復魔術の理解が浅かったようだな。
Eクラスの陣形が乱れる。
それを見て、俄然士気を上げたのが、我らFクラスだ。
「うおおおおおおお!!」
「なんだか知らないが、勝てそうだ」
「行け! 行け!!」
「畳みこめぇぇぇえええええ!!」
その闘技はあまりにも稚拙だ。
子どもの喧嘩に等しい。
だが、確実にEクラスを押し込んでいく。
そして、ついに――――。
「Fクラスの勝利!!」
ついに我らFクラスが勝利をもぎ取った。
「オレ達の勝利?」
「私たち勝ったの?」
「信じられねぇ」
「平民のおらたちが……」
「「「「「やったぁぁぁぁぁああああああ!!」」」」」
喜びを爆発させる。
一方、敗れたEクラスは何が起こったかわからず呆然としていた。
ネレムの姿もすでにない。
一方的な敗戦に戸惑い、この場を後にしたのだろう。
トラブルは仕方ない。
だが、こちらとしても貴重な1勝を得ることができた。
これで皆もわかっただろう。
我々は最底辺のクラスではない。
この調子で他のクラスを討ち果たし、我らの実力を学院内外に知らしめてやろう。
その頃……。
ネレムは聖クランソニア学院の裏手にある川岸に立っていた。
手に握った瓶を、川に向かって投げる。
その瓶のラベルには『下剤』と書かれていた。
「みんな、悪く思うなよ。これも、世界を救うためなんだ。そのためなら、あたいは悪魔にだってなってやる」
密かに悪の道へと進もうとしていた。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
どんどんネレムが悪の道へと落ちていく……。
「なんだ、Fクラスのヤツらの殺気は?」
「いつになく本気だぞ、あいつら」
「ヤツらがジャアクのいるFクラスか。なるほど、面構えが違う」
「野獣のようだ」
すでに競技会場に来ていた我らを見て、戦いているらしい。
戦は最初が肝心だ。
勝つ気概を如何に持ち続けるか。
それを持つ者が勝者となるのだ。
今のFクラスには、その勝つ気概が高まっていた。
皆が一丸になっているのを感じる。
良いことだ。
その輪の中に、我がいる。
その事が何より嬉しかった。
(絶対に勝つ!)
(負けたら、オレ達は死が確定)
(どんな手を使っても、勝つわ)
(ジャアクとトレーニングなんてご免よ)
何を考えているのか、知らぬが皆の目が血走っている。
まるで飢えた狼のようだ。
「ルヴルの姐さん、ハートリーの姐貴、胸を貸してもらいます」
戦う前に、ネレムが我とハートリーに挨拶をしにきた。
ハートリーは慌てて頭を下げる。
「こちらこそよろしくね、ネレムさん」
「ネレム、準備は万端ですか」
「大丈夫です。仕込みはバッチリですから」
ネレムは親指を立てる。
仕込みとはなんだ?
何か策を立ててきたというのか。
なるほど。
これは油断ならぬな。
胸を貸すと言いながら、我らを倒す気満々ではないか。
そうでなくては面白くない。
我はニコリといつものスマイルを浮かべる。
「正々堂々と良い試合をしましょう」
「はい。正々堂々頑張ります!!」
そして、試合は始まった。
前衛の聖騎士10名が居並ぶ。
その背後で聖女と神官が構え、合図を待った。
「はじめ!」
教官の声が飛ぶ。
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
一際大きく鬨の声を上げたのは、Fクラスだった。
作戦も指揮もへったくれもない。
ただ目の前の敵に向かって、ダッシュしていく。
中央突破か!
うむ。やはり戦において、中央突破こそ王道。
皆、なかなかわかっておるではないか。
対する相手の動きは鈍い。
これは勝負あったかもれぬぞ。
「ぐおおおお! お腹が痛い!!」
「急にお腹が」
「た、頼む! 回復を!!」
Eクラスの聖騎士達が蹲る。
手を上げ、聖女に回復を求めた。
すぐにネレム率いる聖女たちは回復魔術を送る。
「イタタタタタ!」
「余計に痛くなってきた」
「やめろ! 回復中止!!」
どうやら急に腹痛に見舞われたようだな。
実は、腹痛は回復魔術では回復できぬ。
それどころか、体内を活性化させ、さらに腹痛を促してしまうのだ。
我らよりランクが上とはいえ、まだまだ我らと同じ新入生だ。
回復魔術の理解が浅かったようだな。
Eクラスの陣形が乱れる。
それを見て、俄然士気を上げたのが、我らFクラスだ。
「うおおおおおおお!!」
「なんだか知らないが、勝てそうだ」
「行け! 行け!!」
「畳みこめぇぇぇえええええ!!」
その闘技はあまりにも稚拙だ。
子どもの喧嘩に等しい。
だが、確実にEクラスを押し込んでいく。
そして、ついに――――。
「Fクラスの勝利!!」
ついに我らFクラスが勝利をもぎ取った。
「オレ達の勝利?」
「私たち勝ったの?」
「信じられねぇ」
「平民のおらたちが……」
「「「「「やったぁぁぁぁぁああああああ!!」」」」」
喜びを爆発させる。
一方、敗れたEクラスは何が起こったかわからず呆然としていた。
ネレムの姿もすでにない。
一方的な敗戦に戸惑い、この場を後にしたのだろう。
トラブルは仕方ない。
だが、こちらとしても貴重な1勝を得ることができた。
これで皆もわかっただろう。
我々は最底辺のクラスではない。
この調子で他のクラスを討ち果たし、我らの実力を学院内外に知らしめてやろう。
その頃……。
ネレムは聖クランソニア学院の裏手にある川岸に立っていた。
手に握った瓶を、川に向かって投げる。
その瓶のラベルには『下剤』と書かれていた。
「みんな、悪く思うなよ。これも、世界を救うためなんだ。そのためなら、あたいは悪魔にだってなってやる」
密かに悪の道へと進もうとしていた。
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どんどんネレムが悪の道へと落ちていく……。
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