24 / 71
1章
第16話 涙が見せる奇跡(前編)
Eクラスに続き、我らFクラスは、勝ち上がってきたCクラスも撃破した。
破竹の連勝だ。
我らを見る周囲の目も変わってきているような気がする。
Fクラスの雰囲気も変わってきた。
最初は敗戦した兵士のように下を向いていた者たちが、顔を上げ、声を上げていた。
その声は控え室の向こうにある廊下にまで響いている。
我はそっと耳を澄ました。
「まさかCクラスにまで勝っちゃうなんて」
「俺たちって、こんなに強かったの?」
「いや、その前に思ったんだけどさ」
「そうそう……。貴族とか、クラスが上とかよりも……」
「「「「ジャアク以上に怖いものなんてないんじゃね?」」」」
一瞬、しんと静まり返る。
やがて誰彼ともなく、軽やかな笑い声が聞こえてきた。
「これって、ルヴルさんのおかげってことかな」
「いや、だってトレーニングとか嫌だぞ、俺」
「うん。それと比べたら、貴族に逆らうことなんて」
「まあ、これが終わったら、感謝の言葉の1つぐらいはかけてやろうぜ」
最後に皆、「うん」と頷く。
そっと扉の隙間から見ていた我は、感激の涙を流した。
相変わらず我を怖がっているようではあるが、一応感謝はしてくれているらしい。
我とトレーニングすることに何をそんなに怖がっているのかわからぬが、同級生たちが1つのモチベーションとしてくれているのなら、我としては本望だ。
それに感謝の言葉……。
我はかつて魔王だった。
人々の呪詛の声を聞いて、育った怪物だ。
そんな我に感謝の言葉とは……。
良い……。
良いなあ。
是非聞いてみたいぞ。
その時こそ、Fクラス全員と真の友情が育まれ、ついに我と友の契りを結べるやも知れぬ。
「その銀髪……。貴様がルヴルか?」
胴間声が響く。
振り返ると、灰色の髪を後ろへと撫でつけた学生が立っていた。
制服からして、聖騎士候補、そして次に戦うBクラスのようだ。
「あれって、Bクラスの――」
「ルマンド・ザム・ギールか……」
「あれが閃光の騎士……?」
「すでに中央教会の聖騎士の内定をもらってるって」
「すげぇ……」
声に驚いたのは、我らだけではない。
控え室から何事かと、Fクラスの生徒たちも顔を出した。
突然現れた男を称賛し始める。
どうやら、音に聞く実力者のようだ。
なるほど。雰囲気がある。
強者の佇まいだ。
そのルマンドは我が同級生の方に鋭い視線を向けた。
「調子に乗るなよ、愚民ども。EのクズもCのふぬけどもも油断していたのだ。だが、我らはそうはいかん。わかっているのだろうな。我ら貴族に手をあげること……。それはつまり――――」
ルマンドは眼光を光らせる。
我からすれば、それは児戯に等しい。
だが、他の同級生は違うようだ。
まるで魅了されたかのように、竦み上がっていた。
等しく顔を青くし、中には崩れ落ちる者もいる。
「刃向かう者には容赦せん。貴様らも、貴様らの家族もな……」
ニッと最後にルマンドは不敵に笑った。
家族?
ん? どういうことだ?
これは学校の模擬戦だ。
家族も関係ないだろう。
しかし、同級生たちには効果覿面のようだ。
ルマンドが下がると、同級生は一斉に頭を抱えた。
「くそ! これが貴族のやり方かよ」
「すっかり忘れていた」
「終わったな、俺たち」
「結局、俺たちってつくづく平民だってことだよな」
最後に「はあ……」と深い息が漏れる。
ここまで連勝してきた勢いが、すっかりなくなってしまっていた。
※ 後編へと続く
破竹の連勝だ。
我らを見る周囲の目も変わってきているような気がする。
Fクラスの雰囲気も変わってきた。
最初は敗戦した兵士のように下を向いていた者たちが、顔を上げ、声を上げていた。
その声は控え室の向こうにある廊下にまで響いている。
我はそっと耳を澄ました。
「まさかCクラスにまで勝っちゃうなんて」
「俺たちって、こんなに強かったの?」
「いや、その前に思ったんだけどさ」
「そうそう……。貴族とか、クラスが上とかよりも……」
「「「「ジャアク以上に怖いものなんてないんじゃね?」」」」
一瞬、しんと静まり返る。
やがて誰彼ともなく、軽やかな笑い声が聞こえてきた。
「これって、ルヴルさんのおかげってことかな」
「いや、だってトレーニングとか嫌だぞ、俺」
「うん。それと比べたら、貴族に逆らうことなんて」
「まあ、これが終わったら、感謝の言葉の1つぐらいはかけてやろうぜ」
最後に皆、「うん」と頷く。
そっと扉の隙間から見ていた我は、感激の涙を流した。
相変わらず我を怖がっているようではあるが、一応感謝はしてくれているらしい。
我とトレーニングすることに何をそんなに怖がっているのかわからぬが、同級生たちが1つのモチベーションとしてくれているのなら、我としては本望だ。
それに感謝の言葉……。
我はかつて魔王だった。
人々の呪詛の声を聞いて、育った怪物だ。
そんな我に感謝の言葉とは……。
良い……。
良いなあ。
是非聞いてみたいぞ。
その時こそ、Fクラス全員と真の友情が育まれ、ついに我と友の契りを結べるやも知れぬ。
「その銀髪……。貴様がルヴルか?」
胴間声が響く。
振り返ると、灰色の髪を後ろへと撫でつけた学生が立っていた。
制服からして、聖騎士候補、そして次に戦うBクラスのようだ。
「あれって、Bクラスの――」
「ルマンド・ザム・ギールか……」
「あれが閃光の騎士……?」
「すでに中央教会の聖騎士の内定をもらってるって」
「すげぇ……」
声に驚いたのは、我らだけではない。
控え室から何事かと、Fクラスの生徒たちも顔を出した。
突然現れた男を称賛し始める。
どうやら、音に聞く実力者のようだ。
なるほど。雰囲気がある。
強者の佇まいだ。
そのルマンドは我が同級生の方に鋭い視線を向けた。
「調子に乗るなよ、愚民ども。EのクズもCのふぬけどもも油断していたのだ。だが、我らはそうはいかん。わかっているのだろうな。我ら貴族に手をあげること……。それはつまり――――」
ルマンドは眼光を光らせる。
我からすれば、それは児戯に等しい。
だが、他の同級生は違うようだ。
まるで魅了されたかのように、竦み上がっていた。
等しく顔を青くし、中には崩れ落ちる者もいる。
「刃向かう者には容赦せん。貴様らも、貴様らの家族もな……」
ニッと最後にルマンドは不敵に笑った。
家族?
ん? どういうことだ?
これは学校の模擬戦だ。
家族も関係ないだろう。
しかし、同級生たちには効果覿面のようだ。
ルマンドが下がると、同級生は一斉に頭を抱えた。
「くそ! これが貴族のやり方かよ」
「すっかり忘れていた」
「終わったな、俺たち」
「結局、俺たちってつくづく平民だってことだよな」
最後に「はあ……」と深い息が漏れる。
ここまで連勝してきた勢いが、すっかりなくなってしまっていた。
※ 後編へと続く
あなたにおすすめの小説
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。