26 / 71
1章
第17話 ジャアクな戦略(前編)
ついにBクラスとの模擬戦が始まる。
競技場中央には、Fクラスの面々が整列していた。
もちろん、我もハートリーもいる。
観客席からはネレムが声援を送っていた。
対するBクラスである。
さすがは貴族の子息たちだ。
我らと比べて武器が違う。
入学前から英才教育を受け、EやCクラス以上の圧迫感を感じる。
だが、我らFクラスが不敵な笑みを浮かべているのに対して、Bクラスのものたちに余裕はなかった。
「ノコノコ出てきおって……。余程死にたいらしいな」
進み出たのは、ルマンドだった。
その額にはすでに青筋が浮かんでいる。
怒り顔のルマンドを見て、我は微笑で返した。
「さすがの貴族も、殺せば罪に問われるのではないですか?」
「表を歩けなくしてやると言っているのだ。それでもいいのかと、聞いている」
「構わねぇ……」
「こっちは邪悪!」
「悪は悪らしく」
「貴族様に楯突いてやる」
「なんたったって、こっちにルヴルさんがいるんだからな」
ルマンドの脅しに、Fクラスは一致団結して言い返す。
皆の面構えが違う。
もう弱小Fクラスとは言わせぬ迫力があった。
「良かろう。お前たちが、その気ならばこちらも容赦はせん。邪悪というなら、この閃光の騎士ルマンド・ザム・ギールが、悪を打ち払うだけだ」
ついに模擬戦の開始時刻となる。
前衛聖騎士、後衛に神官と聖女が並んだ。
戦うのは聖騎士たちだ。
さすがに緊張の色が見える。
真向かい中央に立ったルマンドは、青筋を浮かべている。
貴族に楯突く平民に対し、いまだ怒りが収まらぬらしい。
「はじめ!」
審判の声がかかる。
鬨の声が上がり、ついにFクラスとBクラスがぶつかり合った。
特に早かったのは、ルマンドだ。
ありったけの身体強化系の魔術を浴び、さらに自己強化系の魔術も唱える。
力が満ちると、ルマンドは飛び出した。
ほう……。なかなか速い。
舌を巻くという程ではないが、あの年齢であそこまで出来れば、非凡と言われるのも頷ける。
身体強化魔術と一口で言っても、実は奥が深い。
力が強くなっても反応速度やタイミングは、自分で取らなければならない。
柔な鍛え方なら、身体はすぐにすり減ってしまう。
だが、ルマンドにそんな危険性はない。
しなやかに鍛え上げられていた。
「食らえ!!」
ルマンドは一瞬にして距離を詰める。
持っている細身の剣が鞭のようにしなると、一斉に襲いかかってきたFクラスの聖騎士たちを薙いだ。
その斬撃は凄まじいに尽きる。
一瞬にしてFクラスの聖騎士の防具を切り裂いた。
血煙が舞い、いきなり模擬試合は朱に染まる。
「ぎゃあああああああああ!」
「キャアアアアアアアアア!」
「いてぇえ!!」
Fクラスの聖騎士たちから悲鳴が上がる。
聞くだけで胸がざわつく同クラスの聖騎士の悲鳴。
だが、ルマンドは愉快げに笑った。
「ははははははは! どうだ! 私の斬撃は!! Fクラスの防護魔術など……」
確かにFクラスの聖騎士達には、防護魔術がかかっていた。
その効果の上からダメージを通したルマンドの才は、さすがと言わざる得ないだろう。
だが、そんなことぐらいで調子に乗ってもらっては困る。
大笑するルマンドに襲いかかったのは、Fクラスの聖騎士だった。
慌ててルマンドは防御を選択する。
振り下ろされた剣を弾き、一旦後方に下がって様子を見た。
「なに……? お前達、さっき斬られて――」
しかし、どう見てもFクラスの聖騎士に傷はない。
それどころか溌剌としていた。
「どうしましたか、ルマンドさん? 何を狼狽えているんです?」
我は不敵な笑みを浮かべる。
※ 後編へと続く
競技場中央には、Fクラスの面々が整列していた。
もちろん、我もハートリーもいる。
観客席からはネレムが声援を送っていた。
対するBクラスである。
さすがは貴族の子息たちだ。
我らと比べて武器が違う。
入学前から英才教育を受け、EやCクラス以上の圧迫感を感じる。
だが、我らFクラスが不敵な笑みを浮かべているのに対して、Bクラスのものたちに余裕はなかった。
「ノコノコ出てきおって……。余程死にたいらしいな」
進み出たのは、ルマンドだった。
その額にはすでに青筋が浮かんでいる。
怒り顔のルマンドを見て、我は微笑で返した。
「さすがの貴族も、殺せば罪に問われるのではないですか?」
「表を歩けなくしてやると言っているのだ。それでもいいのかと、聞いている」
「構わねぇ……」
「こっちは邪悪!」
「悪は悪らしく」
「貴族様に楯突いてやる」
「なんたったって、こっちにルヴルさんがいるんだからな」
ルマンドの脅しに、Fクラスは一致団結して言い返す。
皆の面構えが違う。
もう弱小Fクラスとは言わせぬ迫力があった。
「良かろう。お前たちが、その気ならばこちらも容赦はせん。邪悪というなら、この閃光の騎士ルマンド・ザム・ギールが、悪を打ち払うだけだ」
ついに模擬戦の開始時刻となる。
前衛聖騎士、後衛に神官と聖女が並んだ。
戦うのは聖騎士たちだ。
さすがに緊張の色が見える。
真向かい中央に立ったルマンドは、青筋を浮かべている。
貴族に楯突く平民に対し、いまだ怒りが収まらぬらしい。
「はじめ!」
審判の声がかかる。
鬨の声が上がり、ついにFクラスとBクラスがぶつかり合った。
特に早かったのは、ルマンドだ。
ありったけの身体強化系の魔術を浴び、さらに自己強化系の魔術も唱える。
力が満ちると、ルマンドは飛び出した。
ほう……。なかなか速い。
舌を巻くという程ではないが、あの年齢であそこまで出来れば、非凡と言われるのも頷ける。
身体強化魔術と一口で言っても、実は奥が深い。
力が強くなっても反応速度やタイミングは、自分で取らなければならない。
柔な鍛え方なら、身体はすぐにすり減ってしまう。
だが、ルマンドにそんな危険性はない。
しなやかに鍛え上げられていた。
「食らえ!!」
ルマンドは一瞬にして距離を詰める。
持っている細身の剣が鞭のようにしなると、一斉に襲いかかってきたFクラスの聖騎士たちを薙いだ。
その斬撃は凄まじいに尽きる。
一瞬にしてFクラスの聖騎士の防具を切り裂いた。
血煙が舞い、いきなり模擬試合は朱に染まる。
「ぎゃあああああああああ!」
「キャアアアアアアアアア!」
「いてぇえ!!」
Fクラスの聖騎士たちから悲鳴が上がる。
聞くだけで胸がざわつく同クラスの聖騎士の悲鳴。
だが、ルマンドは愉快げに笑った。
「ははははははは! どうだ! 私の斬撃は!! Fクラスの防護魔術など……」
確かにFクラスの聖騎士達には、防護魔術がかかっていた。
その効果の上からダメージを通したルマンドの才は、さすがと言わざる得ないだろう。
だが、そんなことぐらいで調子に乗ってもらっては困る。
大笑するルマンドに襲いかかったのは、Fクラスの聖騎士だった。
慌ててルマンドは防御を選択する。
振り下ろされた剣を弾き、一旦後方に下がって様子を見た。
「なに……? お前達、さっき斬られて――」
しかし、どう見てもFクラスの聖騎士に傷はない。
それどころか溌剌としていた。
「どうしましたか、ルマンドさん? 何を狼狽えているんです?」
我は不敵な笑みを浮かべる。
※ 後編へと続く
あなたにおすすめの小説
短編)どうぞ、勝手に滅んでください。
黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。
あらすじ)
大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。
政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。
けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。
やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。
ーーー
※カクヨム、なろうにも掲載しています
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした
暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。
役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。
だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。
倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。
やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。
一方、病の裏で糸を引いていたのは………。
“無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。
捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています
h.h
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。
自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。
しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━?
「おかえりなさいませ、皇太子殿下」
「は? 皇太子? 誰が?」
「俺と婚約してほしいんだが」
「はい?」
なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。