「さあ、回復してやろう」と全回復させてきた魔王様、ついに聖女に転生する

延野 正行

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1章

第17.5話 ジャアクな戦略(後編)

「くそ! お前達、行け!!」

 ルマンドが指示し、他の聖騎士をぶつける。
 Bクラスの聖騎士はルマンドだけではない。
 十分実力を兼ね備えているらしい。
 Fクラスの聖騎士を圧倒し、剣を叩きつける。

 骨が折れたような音がした。

 Fクラスの聖騎士が蹲る。
 倒れたかと思ったら、次の瞬間立ち上がった。

「やああああああああああああ!!」

 裂帛の気合いを吐き出す。
 逆襲すると、気持ちのいいぐらい反撃が決まった。
 刃引きされていない剣が、Bクラスの鎧の隙間に滑り込む。

 逆に骨が鳴った。

「いてぇぇぇええぇぇえぇえぇぇえぇえぇええぇえ!!」

 Bクラスの聖騎士が蹲る。
 すぐにBクラスの聖女が回復させるが、神官の魔術妨害によって回復に時間がかかっていた。
 そこにさらに追い打ちの一撃が加わると、Bクラスの聖騎士は意識を失う。

「おかしい……。なんで立てる? Fクラスが、平民ふぜいが何故立てる?」

「簡単なことですよ、ルマンドさん」

「ジャアクか! 貴様、何をやった?」

「難しいことはしてません。ただ回復させてるだけです。一瞬にして、皆の傷を」

 ルマンドは辺りを見渡す。

 今起こった出来事が、競技場のあちこちで起こっていた。
 Bクラスの致命打を受けたFクラスの聖騎士が、何事もなく起き上がり、反撃する。
 まるでゾンビの群れのように、何度も何度も蘇っては、Bクラスの聖騎士に襲いかかった。

「そんな……一瞬で回復魔術を……。いや、ちょっと待て!!」

 ルマンドは振り返った。

「おい! 回復魔術は阻害してるんだろ! 役立たずの神官共! 何をしている!!」

「や、やってます」
「でも――」
「これは単純に……」
「向こうの魔力が強くて」
「レベルが違い過ぎる」

 Bクラスの神官たちは揃って苦悶の声を上げる。

「馬鹿な! Bクラスの神官たちが本気になっても止められないだと。……まさか! Cクラスの連中の敗因は……」

 ルマンドは奥歯を噛む。

 やれやれ。今更気付いたのか。
 敵状分析など、戦う前に完了しておかなければならぬというのに遅すぎる。
 模擬戦とは言え、子どもの陣取りゲームではないのだぞ。

 そう。
 ルマンドの指摘通り、このゾンビ戦略は我が考え出したものだ。
 と言っても、別に難しいことはしていない。
 我はただ聖騎士達に回復魔術を送っているだけだ。

 Fクラスの聖騎士達は、ゾンビのように襲いかかり、聖女たちは懸命に回復魔術を送り、神官たちはやれる限り相手の魔術を阻害する。

 結果、我の同級生たちは、Bクラスを追い込んでいった。

「お、おそろしい」
「Fクラスと戦わなくて良かった」
「ゾンビ……うっ、トラウマがががががが」
「まさにジャアクに従えし、ゾンビ軍団ってわけかよ」

 1人、また1人とBクラスの聖騎士を倒していくFクラスを見て、模擬戦を見ていた教官や生徒たちは戦く。

「凄いよ、ルーちゃん」

 横で我と同じく回復魔術を味方に送っているハートリーが称賛する。

「油断しないで、ハーちゃん。まだ模擬戦は終わってないわ」

「うん」

 とはいえ、すでにチェックメイトだ。
 すでにBクラスは後方で様子を見ていたルマンドだけになっていた。

「ひぃぃいぃぃいぃいいぃいぃ! 来るな来るな!!」

 ルマンドの精神はすでに崩壊していた。
 剣を闇雲に振るう。
 だが、ゾンビとなった聖騎士には全く通じない。
 幾本もの剣が掲げられる。
 その凶器を見ながら、再びルマンドは悲鳴を上げた。

「ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!」

 汚い悲鳴の後、ついに決着が着く。

 審判は信じられないとばかりに目を剥く。
 上げたくないのか、それとも恐怖で震えているのか、その手を上げようとしなかった。

「審判さん、いかがしました?」

 我が微笑を浮かべ、尋ねる。
 審判は「ヒッ! ジャアク!」と悲鳴を上げると、慌てて手を上げた。

「しょ、勝者! Fクラス!!」

 勝利を告げる声を聞き、我らが勝ち鬨の声を上げた。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~

異世界ゾンビモード。
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