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1章
第21.5話 模擬戦終了(後編)
周囲がざわつく。
「ジャアクが『八剣』??」
「マジかよ」
「でも、実力はあるぜ」
「ああ……。ミカギリ先輩は手も足も出ないんだからな」
周りの陰口にミカギリは反応する。
ギッと睨むと、動揺が静まった。
我はどう反応していいかわらかなかった。
『八剣』の影響力は、目の前にしてようやく理解できた。
アリアン学院長の誘いも嬉しい。
だが、肩書きというのが、我には好かん。
そもそも我には、すでに魔王という肩書きがある。
これに比肩するものなど、何もなかろう。
学校の優良生徒の証をもらうぐらいなら、回復魔術の神髄を教えてほしいものだ。
アリアン学院長の言葉は続く。
「そもそも彼女の入試成績は、歴代でもトップ――――今後の学院の歴史において、塗り替えることはまず不可能といえるほど、素晴らしいものでした。ただ最終試験において、問題があり、検討の結果Fクラスとはしていますが、彼女の実力はAクラスに入ってもおかしくないものでした」
「ジャアクが、Aクラス……」
「そして、ルヴルさんの実力はAクラスにも留まらないでしょう。『八剣』、いえ現役の聖剣使いたちですら、太刀打ちできるかという実力なのですよ」
「げ、現役の聖剣使い…………」
「この意味はわかりますか、ミカギリ君。つまり、ルヴルさんはこの学院最強……。おそらく『八剣』の第一席を取るに足る実力なのです」
「ちょ、ちょっと待ってください、学院長殿。今、聖剣の空きは『暴君の風切り』のみ……。それはつまり――――」
「そう。その所有者にもっとも近いのは、彼女だということです。……とはいえ、彼女は聖女候補生。聖剣使いになれるのは、聖騎士のみです。むろん『八剣』に所属することもできませんが……」
「くそっ!」
「どこへ行くのですか、先輩?」
「あ゛あ゛??」
「今の話はともかく……。また再戦できるのですよね」
「チッ!」
ミカギリは最後に舌打ちだけを残して、その場を去る。
我はその後ろ姿を笑顔で見送る一方、アリアンはやれやれと首を振った。
「暴走がなければ、良い聖騎士になれるのですが……。レプリカとはいえ、聖剣が持つ魔力に当てられたのでしょうか」
「気に病むことはありません、学院長様。その聖剣は私が粉みじんにしておきましたので」
それを聞き、アリアンは微苦笑を浮かべる。
そして我の肩に手を置いた。
「あなたには苦労をかけますね」
「いえ……。これもまた回復魔術を極める道に続いていると信じておりますので」
我が答えると、アリアンはまた何か苦しそうに微笑んだ。
そして、教官たちとともに下がっていく。
何かご病気だろうか。
ならば、いずれ我の回復魔術で癒やしたいものだが……。
「ルーーーーーーーーーちゃーーーーーーーーーん!」
いきなり後ろから飛びついてきたのは、ハートリーだった。
その目には涙が浮かんでいる。
どうやら、心配をかけたようだ。
我はハートリーの手を取る。
「心配をかけてごめんなさい、ハーちゃん」
「いいんだよ。ルーちゃんなら大丈夫って思ってたから」
ハートリーは涙を拭いながら答えた。
「ルヴルさん、凄かったわ」
「あのミカギリ先輩に勝つなんて」
「首を切るとか言い出した時は焦ったけど」
「学院長にも認められてたよね」
「凄いよね。現役の聖剣使いに匹敵するって
口々に絶賛する。
すると、ハートリーが心配そうに見つめた。
「ルーちゃん、『八剣』になるの?」
質問する。
皆の視線が、我の方に向いた。
どうやら、学院長の言葉が気になるらしい。
我は首を振って、否定する。
「それはありえません。私は聖女。回復魔術を極めたいだけです。『八剣』とか聖剣には、全く興味ありませんので。だから、皆さんと一緒にこれからも勉強させて下さい」
これは偽らざる我の本心だ。
さっきも言ったが、『八剣』だの聖剣だの我には無用。
我が欲しいのは、回復魔術の神髄なのだから。
「さすがは、ルヴルの姐さんです。そうこなくちゃ」
続いて現れたのは、ネレムだった。
こうしてクラス対抗の模擬戦は終わった。
色々とあったが、我にとっては収穫の多い戦いであったと思う。
1つ不満があるとすれば、まだまだ我の回復魔術は未熟だということぐらいであろう。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
一先ず区切りとなります。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
「ジャアクが『八剣』??」
「マジかよ」
「でも、実力はあるぜ」
「ああ……。ミカギリ先輩は手も足も出ないんだからな」
周りの陰口にミカギリは反応する。
ギッと睨むと、動揺が静まった。
我はどう反応していいかわらかなかった。
『八剣』の影響力は、目の前にしてようやく理解できた。
アリアン学院長の誘いも嬉しい。
だが、肩書きというのが、我には好かん。
そもそも我には、すでに魔王という肩書きがある。
これに比肩するものなど、何もなかろう。
学校の優良生徒の証をもらうぐらいなら、回復魔術の神髄を教えてほしいものだ。
アリアン学院長の言葉は続く。
「そもそも彼女の入試成績は、歴代でもトップ――――今後の学院の歴史において、塗り替えることはまず不可能といえるほど、素晴らしいものでした。ただ最終試験において、問題があり、検討の結果Fクラスとはしていますが、彼女の実力はAクラスに入ってもおかしくないものでした」
「ジャアクが、Aクラス……」
「そして、ルヴルさんの実力はAクラスにも留まらないでしょう。『八剣』、いえ現役の聖剣使いたちですら、太刀打ちできるかという実力なのですよ」
「げ、現役の聖剣使い…………」
「この意味はわかりますか、ミカギリ君。つまり、ルヴルさんはこの学院最強……。おそらく『八剣』の第一席を取るに足る実力なのです」
「ちょ、ちょっと待ってください、学院長殿。今、聖剣の空きは『暴君の風切り』のみ……。それはつまり――――」
「そう。その所有者にもっとも近いのは、彼女だということです。……とはいえ、彼女は聖女候補生。聖剣使いになれるのは、聖騎士のみです。むろん『八剣』に所属することもできませんが……」
「くそっ!」
「どこへ行くのですか、先輩?」
「あ゛あ゛??」
「今の話はともかく……。また再戦できるのですよね」
「チッ!」
ミカギリは最後に舌打ちだけを残して、その場を去る。
我はその後ろ姿を笑顔で見送る一方、アリアンはやれやれと首を振った。
「暴走がなければ、良い聖騎士になれるのですが……。レプリカとはいえ、聖剣が持つ魔力に当てられたのでしょうか」
「気に病むことはありません、学院長様。その聖剣は私が粉みじんにしておきましたので」
それを聞き、アリアンは微苦笑を浮かべる。
そして我の肩に手を置いた。
「あなたには苦労をかけますね」
「いえ……。これもまた回復魔術を極める道に続いていると信じておりますので」
我が答えると、アリアンはまた何か苦しそうに微笑んだ。
そして、教官たちとともに下がっていく。
何かご病気だろうか。
ならば、いずれ我の回復魔術で癒やしたいものだが……。
「ルーーーーーーーーーちゃーーーーーーーーーん!」
いきなり後ろから飛びついてきたのは、ハートリーだった。
その目には涙が浮かんでいる。
どうやら、心配をかけたようだ。
我はハートリーの手を取る。
「心配をかけてごめんなさい、ハーちゃん」
「いいんだよ。ルーちゃんなら大丈夫って思ってたから」
ハートリーは涙を拭いながら答えた。
「ルヴルさん、凄かったわ」
「あのミカギリ先輩に勝つなんて」
「首を切るとか言い出した時は焦ったけど」
「学院長にも認められてたよね」
「凄いよね。現役の聖剣使いに匹敵するって
口々に絶賛する。
すると、ハートリーが心配そうに見つめた。
「ルーちゃん、『八剣』になるの?」
質問する。
皆の視線が、我の方に向いた。
どうやら、学院長の言葉が気になるらしい。
我は首を振って、否定する。
「それはありえません。私は聖女。回復魔術を極めたいだけです。『八剣』とか聖剣には、全く興味ありませんので。だから、皆さんと一緒にこれからも勉強させて下さい」
これは偽らざる我の本心だ。
さっきも言ったが、『八剣』だの聖剣だの我には無用。
我が欲しいのは、回復魔術の神髄なのだから。
「さすがは、ルヴルの姐さんです。そうこなくちゃ」
続いて現れたのは、ネレムだった。
こうしてクラス対抗の模擬戦は終わった。
色々とあったが、我にとっては収穫の多い戦いであったと思う。
1つ不満があるとすれば、まだまだ我の回復魔術は未熟だということぐらいであろう。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
一先ず区切りとなります。
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