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2章

第24話 王都探索(前編)

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「はあ……。面白かった……」

 腹の奥底から声を上げたのは、ハートリーだった。
 やや顔を上気させながら、満足した顔をしている。
 おかげで眼鏡が曇っていた。

 最初にやってきたのは、演劇場だ。
 最近『鬼、滅ぼすべし刃』という演目が流行ってるらしく、ハートリーたちとともに観賞してきた。
 演劇を見るのは、これで3度目だが、内容が頭に入ってきたのは、これが初めてだ。
 最初は演劇というものがどういう物なのかわからず、観劇していたため、ちんぷんかんぷんだった。
 2度目はターザムに同行したのだが、演劇を見る際の注意点や姿勢をくどくどと説かれ、観賞どころではなかったのだ。

 正直トラウマになりかけていたのだが、3度目にしてようやく内容が頭に入ってきた。

 ただ正直、内容にはちょっとがっかりした。
 ラストで鬼王が、鬼死きしという言わば勇者のような者に倒されてしまうのだ。
 何故だ、鬼王よ。
 前半、あれほど鬼死を無双していたというのに……。
 我が言うことではないが、おそらく油断をしていただろう。

「ルーちゃん、面白くなかった?」

「ちゃんと観賞できたことは嬉しかったのですが、内容がちょっと……」

「ラスト。『鬼王、頑張れ!』って叫んでましたね(さすがルヴルの姐さん、徹底してジャアクだ)」

「何か言いましたか、ネレム」

「な、何でもありません」

「だって、可哀想じゃありませんか? 鬼死には仲間がいるのに、鬼王は1人で戦っていたんですよ」

「「――――ッ!!」」

「どうしました? 2人とも」

 突然、立ち止まった2人に我は振り返る。

「いや……。言われてみれば、そうだなって。さすが姐さんっす」

「ルーちゃんは優しいね」

 何故か褒められてしまった。
 我は思ったことをそのまま述べただけなのだが。

「次、どこ行こっか?」

「今度は、あたいがいいですか?」

 ネレムが自信満々といった様子で手を上げる。

「絶対ルヴルの姐さんが、喜んでくれると思います」

「じゃあ、そこ行こっか。いいかな、ルーちゃん」

「私は構いませんよ」

 今度は、ネレムのオススメの場所へと行くことになった。




 やってきたのは、随分と薄暗い店だった。
 若干すえた匂いがする。
 こういうのもなんだが、年若き乙女が来るような場所ではなかった。

「どうですか、ルヴルの姐貴」

 自信満々のネレムが勧めた店にあったのは、拷問道具を扱う店だった。

 定番の鉄の処女アイアンメイデンに、僭主ファラリスの雄牛。
 断頭台ギロチン石抱責いしだきぜめなどもある。
 どれも、我が魔王城にあった拷問道具ばかりだ。

 これを使って、よく魔族どもが人間を玩具にして遊んでいた。
 正直、我は拷問が好かん。
 拷問するぐらいなら、いっそ打ち倒した方が良い。
 そもそも無抵抗なものに、鞭打つなど我のポリシーに反する。

「うっ……」

 ハートリーは明らかに嫌悪感を露わにしていた。
 年頃の娘には、少し刺激が強すぎるだろう。
 なのに、ネレムはなんでこんな場所を紹介したのだろうか。

「どうですか、ルヴルの姐さん。最高でしょ?」

「はは、あはははは……。ネレムさんは、こういうところが好きなんだ?」

「ネレム、あまりこういうことは言いたくないのだけど……。ちょっと趣味が悪いわよ」

「ガーーーーーーーーーーーーン」

 謎の言葉とともに、ネレムは石のように固まってしまった。
 今のはどういう意味なのだろうか。
 魔術か、それとも新手の訓練であろうか。
 ここに並んでいる拷問道具よりも、そっちの方が気になるぞ。

「出よっか、ハーちゃん」

「そうだね、ルーちゃん」

 我らは何故か頭から紙袋を被った店主に別れを告げ、店の外に出たのだった。




※ 後編へ続く
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