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2章
第29話 お説教(前編)
ダンジョンから帰った翌日。
我とハートリー、ネレムが学院長室に呼び出された。
理由は学院長室に向かう道すがら、呼びに来た副院長から告げられる。
「あなたたち、ダンジョンに潜ったそうですね。聖クランソニア学院の校則は知っていますか? 特別な理由がない限り、ダンジョンにおける協力者やそれに相当する役目、また金品の授受を禁止するとあります」
神経質そうな顔をした副院長は、時折こめかみの辺りをピクピクさせて、忠告する。
副院長が我を嫌っているのは知っている。
だが、今回の副院長の言葉は、ぐうの音も出ない正論だ。
「全員無事だったからいいものの、もし怪我でもしていたらどうするのですか?」
ん?
その時は、我が回復すればいいのではないか?
「大事なお子さんを我々は預かっている身です。これに懲りたら、冒険者遊びなんてやめるんですよ」
相変わらず手厳しい。
その後もくどくどと副院長のお説教は続く。
それは学院長の部屋のドアの取っ手を握るまで、続いた。
「さあ、学院長にこってりと絞られてらっしゃい」
部屋のドアを開ける。
そこにいたのは、鞭を構え、鬼の形相をした学院長アリアンではなかった。
我らが来たと同時に座っていた椅子から立ち上がると、「まあまあ」と近づき、我らを出迎えた。
アリアンは我の手を取り、子どものように目を輝かせる。
我も驚いていたが、横に立った副院長はさらに驚いていた。
「よく来たわね、ルヴルさん。それにハートリーさんと、ええっと…………」
「ね、ネレムです。この度はご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。つきましては、ルヴルの姐さんと、ハートリーの姐貴のことを許してくれないでしょうか。2人はあたいが誘っただけで、その……すべてあたいが悪いんです。どうかこの通り」
ネレムはいきなりアリアンを前にして、まくし立てる。
「違いますよ、ネレム。これは私の責任です。そもそもネレムもハーちゃんも、私を探していて、ダンジョンに行ってないのでしょ?」
「ネレムさんが悪いなら、わたしも同罪だよ。校則違反ってわかってて、2人を止めなかったんだから」
「これはケジメです。実際、誘ったのは――――」
「おほほほほ……」
突然、アリアンが笑い出した。
ギョッと副院長も含めて、我らは驚く。
校則違反という罪を犯したにも関わらず、『大聖母』といわれるアリアンの顔は、いつも通り穏やかだった。
「あなたたち、とっても仲がいいのね」
そ、そう見えるか?
不謹慎ながら我は目を輝かせずにはいられなかった。
だって他人から見ても、我らが仲の良いということは、それだけ仲が良いということだ。
我としては、これ以上の喜びはない。
強い絆で結ばれているということであろう。
「良い友達をもちましたね、ルヴルさん」
「はい。アリアン様の教えがあったからです」
「そう……。立ち話は疲れるでしょう。どうぞお入りなさい、副院長も」
アリアンは部屋に招き入れる。
紅茶の芳香がすでに満ち満ちていた。
大聖母アリアンから漂う優しい匂いと一緒だ。
「おかけなさい」
部屋の一角にあるソファに、我らは腰を下ろす。
アリアンはニコニコしながら、我らと同じくソファに座る一方、副院長はやや複雑な表情を浮かべたままその後ろに控えた。
「どうして、私があなた方を呼んだかわかりますか?」
「私たちが校則違反をした件ですね」
我は身を乗り出し答える。
すでに謝る準備は出来ている。
校則違反したのは、事実だからだ。
すると、アリアンは「ふふ……」と楽しそうに笑った。
1度紅茶を含み、舌を濡らすとアリアンは語り始めた。
「勿論、それもあるわ。でも、すでに副院長にたっぷり灸を据えてもらったでしょ? 私がお話ししたいのは、そのことではないの」
「え? では――――」
アリアンはティーカップを皿に戻し、柔和な笑顔を我に向けた。
「ルヴルさん、お手柄だったわね」
「はっ?」
何が何だか我にはわからない。
ただただ首を傾げるばかりだ。
お手柄だと? 手柄を立てたつもりはないが……。
「あなたと一緒に行動していた冒険者ね。罪状については控えるけど、有名な悪い冒険者だったの」
「な、なにいぃいぃいいいぃい!?」
我は思わずソファから立ち上がった。
目を丸くする我を見て、アリアンは「ほほほ」と雅に笑う。
対して、副院長は「落ち着きなさい」とばかりに、眉間に皺を寄せて、我を睨んだ。
慌てて我は着席する。
「すみません」
「気にすることないわ。私はいつもあなたに驚かされてばかりだけど、今回はあなたを驚かせることができたようね」
やや意地悪なことを言う。
優しく見えるアリアンだが、意外と子どもっぽいのかもしれぬ。
まあ、我から見れば人間など、皆赤子も同然ではあるがな。
※ 後編へ続く
我とハートリー、ネレムが学院長室に呼び出された。
理由は学院長室に向かう道すがら、呼びに来た副院長から告げられる。
「あなたたち、ダンジョンに潜ったそうですね。聖クランソニア学院の校則は知っていますか? 特別な理由がない限り、ダンジョンにおける協力者やそれに相当する役目、また金品の授受を禁止するとあります」
神経質そうな顔をした副院長は、時折こめかみの辺りをピクピクさせて、忠告する。
副院長が我を嫌っているのは知っている。
だが、今回の副院長の言葉は、ぐうの音も出ない正論だ。
「全員無事だったからいいものの、もし怪我でもしていたらどうするのですか?」
ん?
その時は、我が回復すればいいのではないか?
「大事なお子さんを我々は預かっている身です。これに懲りたら、冒険者遊びなんてやめるんですよ」
相変わらず手厳しい。
その後もくどくどと副院長のお説教は続く。
それは学院長の部屋のドアの取っ手を握るまで、続いた。
「さあ、学院長にこってりと絞られてらっしゃい」
部屋のドアを開ける。
そこにいたのは、鞭を構え、鬼の形相をした学院長アリアンではなかった。
我らが来たと同時に座っていた椅子から立ち上がると、「まあまあ」と近づき、我らを出迎えた。
アリアンは我の手を取り、子どものように目を輝かせる。
我も驚いていたが、横に立った副院長はさらに驚いていた。
「よく来たわね、ルヴルさん。それにハートリーさんと、ええっと…………」
「ね、ネレムです。この度はご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。つきましては、ルヴルの姐さんと、ハートリーの姐貴のことを許してくれないでしょうか。2人はあたいが誘っただけで、その……すべてあたいが悪いんです。どうかこの通り」
ネレムはいきなりアリアンを前にして、まくし立てる。
「違いますよ、ネレム。これは私の責任です。そもそもネレムもハーちゃんも、私を探していて、ダンジョンに行ってないのでしょ?」
「ネレムさんが悪いなら、わたしも同罪だよ。校則違反ってわかってて、2人を止めなかったんだから」
「これはケジメです。実際、誘ったのは――――」
「おほほほほ……」
突然、アリアンが笑い出した。
ギョッと副院長も含めて、我らは驚く。
校則違反という罪を犯したにも関わらず、『大聖母』といわれるアリアンの顔は、いつも通り穏やかだった。
「あなたたち、とっても仲がいいのね」
そ、そう見えるか?
不謹慎ながら我は目を輝かせずにはいられなかった。
だって他人から見ても、我らが仲の良いということは、それだけ仲が良いということだ。
我としては、これ以上の喜びはない。
強い絆で結ばれているということであろう。
「良い友達をもちましたね、ルヴルさん」
「はい。アリアン様の教えがあったからです」
「そう……。立ち話は疲れるでしょう。どうぞお入りなさい、副院長も」
アリアンは部屋に招き入れる。
紅茶の芳香がすでに満ち満ちていた。
大聖母アリアンから漂う優しい匂いと一緒だ。
「おかけなさい」
部屋の一角にあるソファに、我らは腰を下ろす。
アリアンはニコニコしながら、我らと同じくソファに座る一方、副院長はやや複雑な表情を浮かべたままその後ろに控えた。
「どうして、私があなた方を呼んだかわかりますか?」
「私たちが校則違反をした件ですね」
我は身を乗り出し答える。
すでに謝る準備は出来ている。
校則違反したのは、事実だからだ。
すると、アリアンは「ふふ……」と楽しそうに笑った。
1度紅茶を含み、舌を濡らすとアリアンは語り始めた。
「勿論、それもあるわ。でも、すでに副院長にたっぷり灸を据えてもらったでしょ? 私がお話ししたいのは、そのことではないの」
「え? では――――」
アリアンはティーカップを皿に戻し、柔和な笑顔を我に向けた。
「ルヴルさん、お手柄だったわね」
「はっ?」
何が何だか我にはわからない。
ただただ首を傾げるばかりだ。
お手柄だと? 手柄を立てたつもりはないが……。
「あなたと一緒に行動していた冒険者ね。罪状については控えるけど、有名な悪い冒険者だったの」
「な、なにいぃいぃいいいぃい!?」
我は思わずソファから立ち上がった。
目を丸くする我を見て、アリアンは「ほほほ」と雅に笑う。
対して、副院長は「落ち着きなさい」とばかりに、眉間に皺を寄せて、我を睨んだ。
慌てて我は着席する。
「すみません」
「気にすることないわ。私はいつもあなたに驚かされてばかりだけど、今回はあなたを驚かせることができたようね」
やや意地悪なことを言う。
優しく見えるアリアンだが、意外と子どもっぽいのかもしれぬ。
まあ、我から見れば人間など、皆赤子も同然ではあるがな。
※ 後編へ続く
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