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2章
第31話 おそろい
「どれにしようかな?」
ハートリーは様々な金銀、宝石を見ながら目移りする。
実に楽しそうだ。
人間の女たちは、綺麗なものが好きだからな。
まあ、かくいう我もそうなのだが……。
「どれでも持っていてもよろしいのではないのでしょうか? 私たちが先に見つけたのですし。これなんてどうですか? 露店で売ってたネックレスと似たようなデザインですし、嵌まってる宝石も本物のようですよ」
自分で言ってて、商人みたいだなと思ってしまった。
意外と我、商才があったりするのだろうか。
「ほ、ホントだ! 綺麗……」
「いいんじゃないですか? それで」
ハートリーはうっとりと眺める。
ネレムも「おお」と感心していた。
これなら3つある。
露店で買わずとも、ここで揃えるのも悪くないだろう。
「でも、やめておこうかな」
ハートリーは苦笑い浮かべた。
まさかハートリーがやめると言い出すとは思わなかった。
良いデザインだと思うのだが……。
「お気に召しませんでしたか、ハーちゃん」
「ううん。とっても素敵だよ。でも、この宝石や財宝って昔誰かのものだったんでしょ。それを取っちゃうのは、悪いかなって」
「ははは……。ハートリーの姐貴は優しいですね」
うむ。
確かにハートリーは優しい。
ジャアクと言われている我と、最初に友達になってくれたのもハートリーだった。
この金銀財宝は我に挑み散った勇者たちから接収した物や、魔族から貢がれた物など様々な理由でここに留め置かれた物ばかりだ。
それが日に当たる場所にないことは惜しいが、それでも我らが勝手に持ち運び、金品に変えてもいいようなものではない。
ハートリーはおそらくそう言いたいのだ。
「それにわたしは、あの露店に売っていた硝子玉のネックレスも好きだよ」
ハートリーは数々の宝石を見ながら呟いた。
「ハートリーがそういうのであれば、仕方ないな」
「でもどうするんですか? 何も持っていかないんじゃ、またお金に困ることになりますよ」
ネレムの言うことはもっともだな。
さて、どうするか。
すると、ハートリーは何かに気付いた。
手を伸ばしたのは、羊の乳のように白い香炉だ。
手の平に収まるほどの香炉は、ところどころ赤みがかっていたり、青くなっていたりする部分もある。
おそらく色々な鉱石が混ざってできた石材を利用しているのであろう。
白磁器よりもややくすんで見えるが、趣深い。
だが、周りの宝石と比べれば、いささか煌びやかさに欠ける。
ハートリーは気に入ったのだとしたら、なかなか渋い選択だ。
「ハートリーの姐貴、それを持って帰るんですかい? だったらもっと高く売れそうな宝石にしませんか? ほら、これなんかどうですか?」
「ふー。ネレムは何もわかっていませんね」
「す、すみません、ルヴルの姐さん」
ネレムは地面に額を付けて謝る。
別にそこまで謝る必要はないのだが……。
時々、ネレムのことがわからなくなる。
「この香炉に使われている石はネフライトですね。特に白い物は珍重されると聞きます。確か宝石言葉があって……」
我は少し考える。
いかんな。
最近、物忘れが激しい。
「慈悲と許し……」
呟いたのは、ハートリーだ。
「ハーちゃん、知ってたんですね」
「うん。これならダンジョンから持ち出しても、許してくれるかなって。ちょっと勝手な解釈だけど」
「なるほど。それを知ってて、香炉を選んだんですか?」
「え? う、うん……」
ハートリーは照れくさそうに頷く。
「凄いですよ、ハートリーの姐貴。あたい、全然知らなかった」
「うち、商家でしょ。こういう珍重品も時々扱うの。だから――――」
「ほう……」
うん?
おかしいな。
ハートリーの家は下町にあると言っていたが。
たとえ、商家でもこんな貴重品を扱うのだろうか。
よく考えて見れば、ハートリーの家に行ったことないな。
無理強いするのは好まぬが、ハートリーの生家がどんな場所かというのは、友達的に気になる。
「じゃあ、それを持って帰りましょうか?」
我らは元来た道を引き返し、ダンジョン探索は終わった。
次の安息日。
我らの胸元には、色違いのネックレスが揃っていた。
ふふふ……。
やはりいい。
硝子玉だが、我には金剛石以上の輝きを感じる。
ハートリーの見立ては正しかったということか。
いや、それもあるが、おそらく3人お揃いで身に着けているからであろう。
我の笑いが止まらなかった。
「ふっふっふっ……」
「ご機嫌ですね、ルヴルの姐さん」
「ええ……。こんな風に他人と同じ物を共有するのは初めてなので」
「そう言えば、わたしも」
「考えてもみれば、そうですね。聖騎士になるための鍛錬ばかりしてましたし」
なんだ。
皆も同じか。
「やはり、私たちは仲がいいですね」
我はニコリと笑う。
何かぬるま湯に浸かっているような気持ちだ。
魔王時代に味わえなかった心の温かさ。
友ができるということは、こういうことなのか。
今ならアリアンが言ったことがわかる。
我はおそらく今癒やされている。
2人の友が出来たことによって。
これがアリアンが言った回復魔術の深奥の一端か……。
うん。
確かに心地よい。
心が洗い流されていくようだ。
我がこう気持ちがいいのだ。
他の2人も我のように癒やされているのであろうか。
できれば、同じ気持ちを共有していると、我はもっと幸福なのだが。
ただ我は回復魔術を使った覚えはないのだがな。
もしかしたら、回復魔術の深奥とは回復魔術を使わないことだったりするのだろうか。
剣術の深奥が、剣を持たないことであることのように……。
うむ~。やはり奥が深い。
だが今は、この時間がずっと続けば良い……。
夢心地の中で、我は切に願う。
しかし、その願いは聞き届けられることはなかった。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
次回は外伝。
そして最終章に当たります、3章になります。
ちょっとシリアスな内容が続きますが、読んでいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
ハートリーは様々な金銀、宝石を見ながら目移りする。
実に楽しそうだ。
人間の女たちは、綺麗なものが好きだからな。
まあ、かくいう我もそうなのだが……。
「どれでも持っていてもよろしいのではないのでしょうか? 私たちが先に見つけたのですし。これなんてどうですか? 露店で売ってたネックレスと似たようなデザインですし、嵌まってる宝石も本物のようですよ」
自分で言ってて、商人みたいだなと思ってしまった。
意外と我、商才があったりするのだろうか。
「ほ、ホントだ! 綺麗……」
「いいんじゃないですか? それで」
ハートリーはうっとりと眺める。
ネレムも「おお」と感心していた。
これなら3つある。
露店で買わずとも、ここで揃えるのも悪くないだろう。
「でも、やめておこうかな」
ハートリーは苦笑い浮かべた。
まさかハートリーがやめると言い出すとは思わなかった。
良いデザインだと思うのだが……。
「お気に召しませんでしたか、ハーちゃん」
「ううん。とっても素敵だよ。でも、この宝石や財宝って昔誰かのものだったんでしょ。それを取っちゃうのは、悪いかなって」
「ははは……。ハートリーの姐貴は優しいですね」
うむ。
確かにハートリーは優しい。
ジャアクと言われている我と、最初に友達になってくれたのもハートリーだった。
この金銀財宝は我に挑み散った勇者たちから接収した物や、魔族から貢がれた物など様々な理由でここに留め置かれた物ばかりだ。
それが日に当たる場所にないことは惜しいが、それでも我らが勝手に持ち運び、金品に変えてもいいようなものではない。
ハートリーはおそらくそう言いたいのだ。
「それにわたしは、あの露店に売っていた硝子玉のネックレスも好きだよ」
ハートリーは数々の宝石を見ながら呟いた。
「ハートリーがそういうのであれば、仕方ないな」
「でもどうするんですか? 何も持っていかないんじゃ、またお金に困ることになりますよ」
ネレムの言うことはもっともだな。
さて、どうするか。
すると、ハートリーは何かに気付いた。
手を伸ばしたのは、羊の乳のように白い香炉だ。
手の平に収まるほどの香炉は、ところどころ赤みがかっていたり、青くなっていたりする部分もある。
おそらく色々な鉱石が混ざってできた石材を利用しているのであろう。
白磁器よりもややくすんで見えるが、趣深い。
だが、周りの宝石と比べれば、いささか煌びやかさに欠ける。
ハートリーは気に入ったのだとしたら、なかなか渋い選択だ。
「ハートリーの姐貴、それを持って帰るんですかい? だったらもっと高く売れそうな宝石にしませんか? ほら、これなんかどうですか?」
「ふー。ネレムは何もわかっていませんね」
「す、すみません、ルヴルの姐さん」
ネレムは地面に額を付けて謝る。
別にそこまで謝る必要はないのだが……。
時々、ネレムのことがわからなくなる。
「この香炉に使われている石はネフライトですね。特に白い物は珍重されると聞きます。確か宝石言葉があって……」
我は少し考える。
いかんな。
最近、物忘れが激しい。
「慈悲と許し……」
呟いたのは、ハートリーだ。
「ハーちゃん、知ってたんですね」
「うん。これならダンジョンから持ち出しても、許してくれるかなって。ちょっと勝手な解釈だけど」
「なるほど。それを知ってて、香炉を選んだんですか?」
「え? う、うん……」
ハートリーは照れくさそうに頷く。
「凄いですよ、ハートリーの姐貴。あたい、全然知らなかった」
「うち、商家でしょ。こういう珍重品も時々扱うの。だから――――」
「ほう……」
うん?
おかしいな。
ハートリーの家は下町にあると言っていたが。
たとえ、商家でもこんな貴重品を扱うのだろうか。
よく考えて見れば、ハートリーの家に行ったことないな。
無理強いするのは好まぬが、ハートリーの生家がどんな場所かというのは、友達的に気になる。
「じゃあ、それを持って帰りましょうか?」
我らは元来た道を引き返し、ダンジョン探索は終わった。
次の安息日。
我らの胸元には、色違いのネックレスが揃っていた。
ふふふ……。
やはりいい。
硝子玉だが、我には金剛石以上の輝きを感じる。
ハートリーの見立ては正しかったということか。
いや、それもあるが、おそらく3人お揃いで身に着けているからであろう。
我の笑いが止まらなかった。
「ふっふっふっ……」
「ご機嫌ですね、ルヴルの姐さん」
「ええ……。こんな風に他人と同じ物を共有するのは初めてなので」
「そう言えば、わたしも」
「考えてもみれば、そうですね。聖騎士になるための鍛錬ばかりしてましたし」
なんだ。
皆も同じか。
「やはり、私たちは仲がいいですね」
我はニコリと笑う。
何かぬるま湯に浸かっているような気持ちだ。
魔王時代に味わえなかった心の温かさ。
友ができるということは、こういうことなのか。
今ならアリアンが言ったことがわかる。
我はおそらく今癒やされている。
2人の友が出来たことによって。
これがアリアンが言った回復魔術の深奥の一端か……。
うん。
確かに心地よい。
心が洗い流されていくようだ。
我がこう気持ちがいいのだ。
他の2人も我のように癒やされているのであろうか。
できれば、同じ気持ちを共有していると、我はもっと幸福なのだが。
ただ我は回復魔術を使った覚えはないのだがな。
もしかしたら、回復魔術の深奥とは回復魔術を使わないことだったりするのだろうか。
剣術の深奥が、剣を持たないことであることのように……。
うむ~。やはり奥が深い。
だが今は、この時間がずっと続けば良い……。
夢心地の中で、我は切に願う。
しかし、その願いは聞き届けられることはなかった。
~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~
次回は外伝。
そして最終章に当たります、3章になります。
ちょっとシリアスな内容が続きますが、読んでいただければ幸いです。
よろしくお願いします。
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