年末年始は温泉で♪

とうこ

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大人チームも色々あるよね

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 てつやと文治がお風呂場に行ったのを確認して、目線をテレビに戻したまっさんが
「文治としっぽりと話したぞ」
 と言ってきた。京介は、お?っと飲みかけのビールを口から外して、見ていた太ももからまっさんへ目をうつす。
「おう、で、どうなった?こっちもてつやと話したわ」
「やっぱ指輪が契約っぽく感じたらしくて、『てっちゃんを京介さんに取られちゃった~』って半泣きしてた」
 クックッと笑って、テーブルに両肘を付いている まっさんはイカくんを口にした。
「なるほどねえ。じゃああまり状況は変わってねえのか」
 京介は文治があけた『しそ巻き』を口にして、何これうま…と立て続けに二つ口に入れた。
 美味いのそれ、とまっさんも一つ食べてみる。
「ああ、かーちゃん好きそう。買ってこう」
「で?」
「変わってなくはないぞ。あいつの中できちんと理解できて落とし込めたみたいだからな。あとは本人がどう行動するかを決められれば落ち着くんじゃね?」
 3個目のシソ巻きを食べて、京介たちが買ってきたビールを『ゴチ』と掲げて開けた。
「そっか」
 2人で缶を当て乾杯して一気に缶ビール一本飲み干す。
 やっぱ風呂上がりのビールはいいねえ
「ただいま~」
 そんな時、銀次が呑気に帰ってきた。
「えらい早くねーか?」
 卓上のスマホで時間を確認して2人は流石にびっくりする。まだ2時間程度だ。
「まあ、上で飲んでただけだし、彼女も温泉に入ってほしいってことでね」
 車でずっと一緒だったからいいんよ~と、浮かれている
「誰か大浴場いかね?」
「あ、じゃあ俺付き合うわ」
 まっさんが立ち上がってタオルを取る。
「京介は?」
「俺はさっきまでそこにいたからいいわ」
 そうなんだ、わかった と銀次とまっさんは大浴場へと向かった。
 京介はぼんやりと紅白を見ながらチーズの味噌漬けを食べては『うまっ』とか、あん肝の味噌漬けを食べては『神』とか独り言を言いながらまた出てきた太腿を見ていたら
「文ちゃんダメだよ!お~い~そっちいったらあんた」
 とてつやの声…それに次いで聞こえたのはバタバタいう足音と
「きょーすけさんも一緒にはいろー」
 という、半ば叫びのような大声
 他の部屋へゆく通路を走ってきたらしい文治は、部屋の前室にびしょ濡れのまま全裸で立っている。
「文治お前なにしt…びしょびしょじゃねえか、そこ畳…こぉら」
 それでも笑いながら立ち上がって近寄ると、文治は
「キャーーー」
と言って浴室へ走ってゆく。5歳児かな?と思いながらも
「待て、ちゃんと拭くんだぞ文治!てかその前に全裸っておまえ」
 と文治の後を滑らないように歩いて追いかけて、京介までもが浴室に連れ込まれた。
「文ちゃん走ったらあぶねーから」
 走ってきた文治をつかまえて、だめだろーと露天に突っ込む
「きょーすけさんもおいでおいで」
 岩風呂になっている露天風呂で、かなりな勢いではしゃいでいる文治を見て2人は確信した
「こいつ酔ってる…」
 道の駅でまっさんが言った『文治の頭ン中は天才すぎてわかんねえ』が、今頭に甦った。
 まっさんと何を話したのかはわからないが、文治がその天才すぎる頭でどこまで納得して理解したのかはわからない。
 でもさっき『一緒にお風呂入ろう』と言ってきたのは、京介も正直嬉しかった。


「寝たか?」
「寝たかな」
 間に文治を寝かせて、両サイドから覗き込むという子供の寝かしつけスタイルの2人は、スースーと寝息を立て始めた文治に安堵した。
 好きでこのフォーメーションになったわけではなく、露天風呂を上がった後文治が2人の間に入っててつやの右手と京介の左手にガッツリしがみついたまま布団に寝転んだからだ。
 2人はそっと腕を抜き、のそのそとテーブルへと寄っていった。
「なんだか今日は文ちゃんに振り回された感じだな」
 既に誰のかわからないグラスにそこにあった綺麗な瓶の『鈴音』を注ぎ、一つを京介に渡し軽く乾杯。
「なんだ?甘いな。文治用か」
 これで酔ったのか、と文治を見てしまう。
「まあ、なんか気持ち落ち着いたようだな文ちゃんは」
 違う酒を注ぎ直して、てつやがさっきのは流石にまいったわと呟いた。
 自分で納得のいく結論を出したのはいいが、酒も手伝って随分と暴れてくれたものだ。
「俺も今度はいきなり懐かれたから、何が何だかだったw」
 と言いながらも、京介は少しほっとしたと笑う。
「お疲れだったな、嫌われ役」
「役じゃねえ、嫌われ者だ」
 こんな広いテーブルに隣り合わせて座って、肩を寄せ合い差しつ差されつついでにキス。
 今日はしないと決めたからこれで我慢。だけどもう一回くらい…と唇が引き寄せ合おうとした瞬間に
 部屋のキーが開く音がして、
「あ~いい湯だった」
「あっち~~」
 との声が響いた。前室があるのでいきなりは部屋にこない。2人はちえっと笑い合って、ほんの少し距離をとる。
「おかえり~」
 と言った直後に
「うわっなんだここ!濡れてる?びしゃびしゃじゃねーかよなんだ?」
 先ほど文治が素っ裸で露天から立ってきた名残…
「あーさっき文治がな…」
 と説明して中に入ってもらい、
「廊下と一緒に一応拭かせたんだけど、畳はなかなか乾かねえなやっぱ」
 そのままってのもあれだなと京介は浴室へ向かい、足ふきのマットを持ってきてそこに敷いた。
「水気もとれるだろ」
 まっさんと銀次もタオルをかけた後テーブルに着き、何回目かの乾杯で飲み会Part何回目かが始まった。
「文治寝ちまったんだな。京介はおつ!」
 銀次が無理矢理グラスを合わせてかかげる。
「風呂でまっさんからその後の話聞いてきたわ」
「どうだった?なんか変わったか?文治(あいつ)」
 まっさんも自分が文治に話していた手前、気にはなる。
「あ~あいつ結構酔っててな、俺にも一緒に入ろうなんて言ってきたけど実際どう変わったかはまだわかんねえな」
「わりぃ、酔わせないと口割りそうになかったからさ。それだって弱々の酒だぜ」
 弱々の酒で『鈴音』を思い出したまっさんは、瓶を振って残りが少しだとわかるとそのままラッパのみ。
「これで酔えるとか、お得だなぁ」
「俺も見てたけど、今日は文治ずんだシェイクの辺りから変だったもんな。なんか気持ちがあふれちまったんだな」
 銀次も常温一歩手前の缶ビールを煽っている。
「意外なところから撃たれた気分だったわ」
 とはてつや、
「扱いとか全く変えたつもりはなかったからさ」
 グラスを手の中で回して、ちょっと神妙な顔。
「まあ…これも文治の成長痛だと思ってさ。多少こんな気持ちになるのもあいつには必要だってこったよ」
 あんま考えんなよと銀次が言う。
「まさにそれ。甘やかされて大事に育てられてっからなあいつ。そして俺らも結構甘い」
「確かに~」
 それは総意だ。
 そしてまた部屋のチャイムが鳴る
 初めてきた旅館でチャイム多すぎねえ?とてつやは笑い今度は銀次が対応に行った。
「え?玲香ちゃん?どしたの」
 もう11時50分。テレビは紅白も終わって、ゆく年くる年を知らぬ間に始めていた。
「スタッフと年明けやってたんですけど、お裾分けにと思って…」
 とホテルシェフのオードブルと、和食の親方の海老真薯やくわいの炊き物等いっぱい持ってきてくれた。
 豪華すぎる内容にちょっと引け目すら感じる。
「なになに?」
 とてつやがやってきて
「うわすげえ、これなに?俺らに?」
「はい、お裾分けに来ました」
 玲香の頬も少しピンク色になっていて、ほろ酔いが伺える。
「じゃあさ、年越し一緒にしない?男所帯だからあんまり長くいてもらうわけにもいかないけど、1時間くらいならいいじゃん?一緒に飲もうぜ」
 めっちゃ軽くてつやが誘うが、ちょっと銀次は渋る。
「俺送ってくからさ、無理に引き込まなくたって…」
 てつやは銀次の背中をバシッと叩いて、
「俺らを舐めんなよってことだろ。仮になんかあったらお前が全力で守ればいいだけのこったろうよ。太くいけよ」
 さあどうぞ~と玲香を部屋へ招きいれると、中では布団を捲り上げ、テーブルの上を慌てて片付けているまっさんと京介。
ー守ればいいって、この中で喧嘩でお前に勝てる奴居ねえだろうがーとも思うが、銀次も一緒に年越ししたいのは一緒で…。
 玲香と銀次を長い一辺に座らせて、あとは離れてすわる。
 そして新しいグラスを出してきて玲香にビールを注いでやると、前口上なしにかんぱーい!
「玲香ちゃんとはこれから長い付き合いになるか、そうじゃないかは銀次次第だけど。取り敢えず、こうして一緒に年を越せるのは嬉しいな」
 グラス一杯飲み干しててつやが今度は手酌で注ぎ足した。 
「本当に。何がご縁になるかわからないですね。私、銀次さんを訪ねて行って本当によかったです」
 ピンクのほっぺでホワンと笑う玲香を、銀次は横からホワンと見つめる。
「文治さんはもう大丈夫になったんですか?」
 玲香も少し心配していたらしく、可愛い嫉妬で済んでいたのかは気になっていたらしい。
「うん、あいつなら多分もう平気だと思う。あんなでいて結構隠しちゃうんだよ気持ちをさ。でもって出し方が下手くそだから今日みたいになっちまう」
 まっさんが話してくれる。
「まあでも、俺らは何も変わらないから、あいつもそれに気づけば全く元通りになれるよ。心配かけて悪かったね。ありがとう」
「いえいえ私なんかはまだまだわからないことばかりなので、ただ心配することしかできずに…」
「助言は結構助かったんだよ。だから俺からもありがとう」
 てつやも神妙な顔つきで軽く頭を下げた。
「ね、ねえやめましょ。私はこれからこのチームの皆さんのことをもっともっと知っていきたいし知っていかなきゃなんですけど、そんないっぺんにいろんな顔されたらパンクしちゃいます」
 両手を頬に当てて目を瞑っちゃう。
「パンクしたら、まっさんに直して貰えばいいんじゃね?」
 銀次が玲香の頭を撫でながらそんなこと言うけど…
「8点」
「10点」
「0.5点」
「厳しくね??」
 ガビーンとなった銀次は、もう少しいい点くれても~と縋っている。
 ぎゃぎゃあと騒いでいる間に、テレビから除夜の鐘が響いてきた。
「お~開けたな~」
 全員が浴衣の前を合わせて座り直し。
「明けましておめでとうございます」
「本年もよろしくお願いします」
 と頭を下げあった。
 一応一緒にはやってみたが、玲香は面白そうに笑っていた。
「毎年これを?」
「やってるわけがない」
 京介がそう言って、全員でゲラゲラと笑いあう。
 一年の始まりを楽しく過ごせて幸先がいい。
 玲香という『仲間』も増えて、今年も楽しくいけそうだ。
 ロードがあったらもっといいのにな、などと各々が考えつつ、今度は『新年会』が始まった。
 文ちゃんは夢で参加ね。

 おまけ

 まっさんと銀次は、大浴場へやってきた。
 もう11時もまわりもう少しで年明けというこの時間に大浴場には誰もいなかった。
 年越しを温泉内で、という人は多分もう少し後から来るだろう。
 露天風呂へ赴き、2人でよっこらしょと入り込む。
「まー文治も落ち着きそうでよかったな」
「ん~多分としか言いようねえけどな。でもま大丈夫かなと思えるような顔つきはしてた。京介が気の毒だったよな」
 言葉と裏腹に顔は笑っている。
「話違うけどあいつらさ、特に美形でもないけどタッパあるぶん目立つじゃん。そんななのに人前でも髪いじったり、肩寄せあったりなんなん!」
 いつものソフトリーゼントも解けて、幾分若く見える銀次が憤っていた。
「まあ、てつやは可愛らしい顔立ちはしてるよな。親父受けする感じの」
 そこは言ってやるなよ…と急にてつや側に立つ銀次。
「しかしさ、てつやあいつ
 まっさんが声出して笑って言葉に詰まる
「なになに?面白えこと?」
「どうかな。でも俺と京介お  れ  らは爆笑したけどさ」
「なんだよ~なんの話?」
「古川インター下りてから、お前が玲香ちゃんの車に行ってた時の話なんだけどさ」
「うんうん」
「京介が『玲香ちゃん可愛いよな。頭良さそうだし』みたいなこと言ったんだわ」
「まあ事実だな」
「で、そんときにてつやがさ…ぶふっ」
 もう笑いが込み上げて仕方がないまっさん
「てつやがさ『でも京介の好みじゃあねえよな』なんて急に言い出してプッ」
「え?なに、やきもち妬いたん?あいつ?ぷぷぷっ」
「そう」
 ゲラゲラ笑い出す2人
「でさ、『京介の好みは、もっと胸のデカい女だもんな』とかまで言い出して」
 腹いてえ ともう息も絶え絶えに笑う2人
「もうさ、必死よあいつ。くくっ んで京介なんか俺に『可愛いだろ?』って、もう余裕ぶっこいてんのにてつや余裕なさすぎだわ。玲香ちゃんに妬くかふつう。あいつ最後まで自分が何言ってるか気づいてなくてさ、すげー面白かったんだよ」 
「なんだよ~そんなおもしれーことあったんだ 乗ってればよかったわ」
 タオルで涙まで拭うまっさんを見て、銀次も漸く笑いがおさまった。
「まあなんにしろ、仲良しでいいこったな。見習わないとだ」
「おいおい、お前らはお前らでいいだろが。誰の手本も要らねえよ」
「まあそうだけどさ。あの仲良しっぷりは賞賛に値する。しかも無意識ときてるからな」
「付き合いが長いだけだろ。あいつら見習うと、道の駅のトイレでヤるはめになんぞ」
「は?あいつら?まさか~」
 いやいや、いくらなんでも~と銀次は言うが、てつやから香った京介のヘアワックスの香りを嗅いでいるまっさんは譲らない。
「確証はないけど、あれは道の駅あそこでヤってる」
「はあぁ~?だとしたら見境ねえなぁ、あいつらも」
「多分、京介が文治のことで心折れかけてたんじゃねえかな」
 ああ、と銀次は声を漏らすのみ。
「今夜もどうこうする気はないって言ってたからまあいんじゃね?ってかんじだけどさ」
「まあ、お盛んも仲良しのうちだな」
 銀次はタオルを頭に乗せてお湯を肩にかける
「お前らはどうなんよ。いや別にやったやらないは言わんでもいいけどさ。仲良しなん?」
「ん~~?」 
 と ちょっと意味ありげな銀次の顔
「まあさっきてつやが玲香ちゃん見て『京介は胸のでかい女がどうの』って言ってたらしいけど、彼女の名誉のために言っとくと…そんなに小さくねえよ」
 と言ってニヤッと笑った
「はい~ご馳走様でしたっ!クッソ!」
 頭を下げて悔しそうにまっさんが少し大きな声で言う。
 銀次は声を出して笑っていた。
「宿泊券ゴチっした」
「はいはい。なんだよ~本格的に俺だけかよ~」
 そう言うまっさんは笑っている。
 玲香のいう、好みに頑ななのは本当なので何も言えない。
 早く好みの女性出てこないかなって…待ってるだけじゃダメなのもわかりつつ、仲間が幸せでよかったなあと思ってしまうまっさんだった。
(水面下で京介の計画が静々と進行中なのはまた別の話)
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