ゼロの魔法少女

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第3話 立花くん観察日記

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04月23日 (火)
クラスで隣の立花くんは、いつも1人だ。
いつもムスッとした顔で、外を見ている。
なにがそんなに不満なのだろう。
今日の帰り際。2人の男の子が立花くんに「一緒に帰らない?」と誘っていたが。立花くんは「ごめん、用があるから」といいそそくさと帰っていった。
何故かは分からないけど、立花くんは、いつもこんなふうに人を避けているような気がする。

04月24日 (水)
いつも無口で何を考えているのか分からない立花くんだけど。実は心優しい人なのかもしれない。
今日私は、授業中に消しゴムを落として閉まった。でも、私はそれに気づいて居なかった。
そんな時、左から「星川…」と私を呼ぶ声が聞こえて。私は思わず「えっ」と言った。
「これ、星川のだろ」と私の消しゴムを持つ
立花くんはいった。その顔はいつものムスッとした顔ではなくどこか優しい顔だった。
私は「う、うううん!あ、あありがとう!大事にするね!!」と少しキョドった。
「いや、お前のだろ…」
と立花くんに突っ込まれてしまった。
だって、いきなり話しかけられるなんて思わなかったんだもん。
でも、立花くんに、名前を呼ばれて少し嬉しかった。
消しゴムを渡す時、立花くんの手は何故か少し震えていた。
消しゴムを受け取った後。立花くんに、「星川…何ともないか?」と言われた。
私は意味がよくんからなかったけど、なんともないので「うん、大丈夫だよ」と答えた。
すると、立花くんは「そっか」とだけいった。
何故か少し嬉しそうだった。
授業中にそんなやり取りをしていたものだから。先生に、「お前ら、仲良いし、暇そうだな?」と言われ、誰も立候補しない植物委員に。私と立花くんが任命されてしまった。
いや、別に仲が良いわけではないんですが??(それはそれとして一緒なのは嬉しい)

04月25日 (木)
今日は立花くんの意外な一面を見た。
植物委員として立花くんと共に選ばれてしまった私。正直めんどくさいんだけど、でも立花くんと仲良くなれるチャンスかも知れないのでまぁいいかなって気分だった。

放課後、植物委員の仕事で、花壇に水やりをしていた私たち。特にこれといって会話もなく、図書委員のように静かな時間がすぎる。
そんな時、私の前にネコが現れた。
その猫は全身真っ白で、妙に人懐っこいネコで。皆からは"シロコ"と呼ばれた。
私はシロコにおいでおいでーした。
ふと後ろを見ると。立花くんが シロコから離れて立っていた。
シロコは、私を通り過ぎて立花くんに近づくと立花くんは更に離れる。シロコが近づく、立花くんが離れる。
近づく、離れる、近づく、離れる。近づく、離れる。
…痺れを切らしたシロコは、立花くんに向かって走る!
すると立花くんはズザザーと全力で逃げた!
グランドでグルグルとシロコと立花くんは追いかけっこした。
私はその様が面白くて、思わず「あはははは!」と笑ってしまった。
「わ、わらうな~」と立花くんは走りながら言う。「ご、ごめーん!」と私は叫ぶ。
でも、立花くんの可愛い一面が見れて、少し親近感が沸いた。

私はシロコにおいでおいでーして、近づくシロコを抱えた。
立花くんは、ハアハアと疲れていた。
「ネコ、苦手なの?」と私はきいた。
立花くんは「べ、別に…苦手な訳じゃない。…ただ、俺に近づいて欲しくないだけだ」といった。
…うーん、それって苦手って事なんじゃないのかなぁ、と思ったけど。立花くんには言わなかった。
「大丈夫だよ。シロコは優しいし。こうして私が抱えているから、心配しないで」と私は言った。立花くんは「ありがとう」といい仕事を再開した。
…植物委員の仕事後。
私たちは帰路に着く。
さっきの立花くんを見て少し親近感が湧いた私は。思い切って「あ、あの、立花くん…、
よ、よかったら、一緒に、帰らない?」と言ってしまっまた。
立花くんは、少し、なにかを考えているような感じだったけど、そのうち「…勝手にしろ」とだけ言った。

私は、立花くんの隣で、並んで歩いてみた…。
立花くんは、特に何も言わなかったけど。
時折なにかを確認するかのように、私の方をチラチラと見ていた。その度に私は少しドキッとした。
…ネコに近づかれるのをあんなに嫌がっていたのに。私は良いのかな…と思った。
とりあえず、私は立花くんに拒絶されているわけではないのだな、と安心した。
並んで歩くだけで、特に会話したわけでもないのに。なんだか、とても心地よかった。

04月26日 (金)
今日はお弁当の日だったのだけれど、私はお弁当を持ってくるのを、忘れてしまった!!
し、しまった~
うう、先生に言い出すのもなんか、恥ずかしなぁ…
なんて思ってずーんとしていたら…。
左側から、青い箱が、私に差し出されていた。
それはお弁当が入った箱だった。
それを立花くんが、私に差し出していたのだ。
「え…?」とわたしが言う。
「腹減ってんだろ…やる」
そう言って差し出されたお弁当は、立花くんの半分くらいの量があった。
…ううん、違う、明らかに私の方が量が多い。
「た、立花くん…、嬉しいけど立花くんの分は」と私が言うと立花くんは
「大丈夫だよ、今日は朝食いすぎたから…。それに、昨日助けてもらったから。お礼」と言った。
しかしその瞬間。
ぐぅ~~~と、立花くんのお腹が鳴る。
立花くんは、はっ!とお腹を触る。
私は思わずふふっとわらう。
「い、いやこれは…」と立花くんは言う。
「…優しいんだね。立花くんは。……やっぱり半分こにしよう」と、私が言うと、立花くんも、ふふっと笑い
「…そうだな。せっかくだし、一緒に食べるか」と言った。
私は「う、うん!」と言った。

私たちは席を向かい合わせにした。

まさか、立花くんと一緒に食べられるなんて…!
お弁当忘れてよかった~!

立花くんは相変わらず口数は少ないけど、昨日よりは、色々話が出来た。(お弁当美味しいね、とかくらいだけど)
立花くんのお母さんが作ったというお弁当は、とても美味しかった。
立花くんと一緒にお昼を食べられた嬉しさでその日の午後は、ずっとふわふわした気分だった。

………

…いつもムスッとした顔で窓の外を眺めている立花くん。
でも、そんな彼も、実は優しい一面もある事を私は知っている。
これからもっと、仲良くなれたらいいな。

…来週の月曜日が終わったら、ゴールデンウィークだ。
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