ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 祝・『フォーカス』Cランク、卓郎A、明C、女子三人D、ランク昇格!

 ギルド近くの居酒屋「冒険者の鍋亭」は、今夜ひときわにぎやかだった。
 夕暮れ時を過ぎた店内は、冒険者たちの笑い声と食欲をそそる香ばしい匂いで満ちている。

 その一角、長テーブルを囲むようにして、『フォーカス』の面々がずらりと座っていた。
 Cランクへの昇格、そして卓郎のAランク昇格を祝う、ささやかな――しかし気合いの入った――祝賀会である。

「かんぱーいっ!!」
「「「かんぱーーい!!!」」」

 乾杯の声が店内に響き渡り、ジョッキやグラスがぶつかる音が鳴り響く。
 白い湯気を立てる鍋には野菜と肉がぎっしり、テーブルの上には山盛りの山賊焼き、ギルド名物のドラゴンのしっぽ風から揚げ、バケツ入りポテト、骨付きハム……見ているだけで空腹を誘う品々が所狭しと並んでいた。

「いや~、たっくんマジですごかったよぉ~!  完全見切りの動き、ホントに漫画みたいだったっ♡」
 沙耶がキラキラした目で卓郎を見つめながら、唐揚げを一口サイズにちぎってはパクつく。
 彼女は卓郎の隣の席に座り、気づけば距離がどんどん近くなっている。

「い、いや、あれは……その、運も良かっただけで……」
 照れながら卓郎が頭をかくと、次の瞬間、三方向からツッコミが飛ぶ。

「謙遜しすぎ!」「運だけで鉄馬倒せるかっての!」「たっくんかわい~♡」

 場がドッと沸いた。

「マジで言うけどな、あの時の火の玉――ファイアバレット、あれを選ぶ判断力がすげー。俺だったら、パニクって突っ込んで自滅してたな」
 明がリンゴジュースを一気にあおり、テーブルにドンと置いた。
 戦闘狂の異名を持つ彼にしてこの発言、重みが違う。

「明が人褒めるとか、気でもふれた?」
 純子がニヤリと煽る。すでに顔がほんのり赤いのは、ノンアルコール梅ジュースでテンションが上がっているせいだ。彼女は声が大きく、身振り手振りも激しい。

「やかましい、たまには褒めてもバチ当たらねーだろ」
「いやでも、そのうち私もCランク昇格して、今度は主役になる予定だから、よろしくね?」
 純子は胸をドンと叩きながら高らかに宣言した。頼もしいが、ちょっと酔ってる。

「ふふふ……次は誰が昇格するのか、楽しみだね」
 有紗は両手でハーブティーのカップを包み込みながら微笑んだ。
 控えめな口調だが、目にはしっかりとした意志が宿っている。

「……それにしても、あの鉄馬の大旋風、どうやって抜けたんだ?」
 明が不意に真剣な声で問いかけた。
 その言葉に、場の空気がわずかに静まる。

「……見切っただけ、かな」
 卓郎は少し照れながらも、真っ直ぐに答えた。
「旋風の中心は吸い込みじゃなくて、回避できる死角が一瞬だけある。そこを読んで、踏み込んだだけだよ」

「だけって言うなや! 俺、あれ見た時ミンチ確定って思ったからな!」
 明が両手でぐしゃぐしゃに潰すジェスチャーをして、全員が吹き出した。

 その瞬間、笑い声と料理の匂いが、再びテーブルを包み込んだ。 

 そこへ、ギルド職員の礼子が、すっとグラスを掲げながら姿を現した。

「はい、卓郎くん。これがギルドからの正式な認定証よ。おめでとう、Aランク冒険者さん」

 彼女の言葉に、場の空気がふっと静まり返る。皆が注目するなか、礼子が丁寧に差し出したのは、厚手の羊皮紙で作られた証書だった。金箔のギルド印が輝き、その中央には堂々と――

「Cランクパーティ『フォーカス』所属、卓郎、Aランク認定」

 と記されている。

 卓郎は一瞬、呆けたようにそれを見つめた。目の前の現実が、まだどこか夢のように感じられる。

「……ありがとう、ございます」

 静かに、けれど心の底からの感謝を込めて、俺は両手でその証書を受け取った。指先がわずかに震えているのは、興奮か、感動か。

 一礼する俺の背後から、ワッと大きな拍手が湧き上がる。

「うおおおーっ!  たっくん、よっ!  Aランカー!」
「これでギルド内でも目立ちまくりだな!」
「お祝い、第二ラウンドいっくよーっ!」

 誰かの掛け声に応じて、もう一度全員がグラスを掲げた。乾杯の音が重なり、テーブルがガタガタと揺れる。

 その中で、明が立ち上がり、腕を高く突き上げた。

「っしゃあ! じゃあ次は我ら『フォーカス』、ギルド内の合同任務でもぶっちぎっていこうぜ!」

「「「おーっ!!」」」

「やるぞー!」
「肉食べよー!」
「たっくんは食べすぎ注意だよ~?」

 叫びと笑い声、テーブルを叩く音が混ざり合う。居酒屋「冒険者の鍋亭」は、まるでお祭り騒ぎのような熱気に包まれていた。

 そんな喧騒の中、俺はふと目を伏せた。

(俺ひとりじゃ、きっとここまで来れなかった……)

 目を閉じると、さまざまな場面が思い出される。
 訓練で汗を流しながらも声をかけてくれた明。
 失敗して落ち込んだとき、そっと手を握ってくれた有紗。
 どんなときも明るく励まし続けた沙耶。
 いつも口うるさくてうざったいけど、誰より真剣だった純子。

 どれもこれも、大切な思い出だった。

「……ありがとう。みんな、これからもよろしくな!」

 静かな、けれど芯のあるその一言に、場は一気に盛り上がった。

「たっくん最高ー!」
「んだよー、泣かせんなー!」
「よし!  泣いたら罰として大根の辛味漬けね!」
「いや罰ってなによ!?  それ普通にキツいやつでしょ!」

 大笑いの輪の中で、俺の頬にも自然と笑みがこぼれる。

 宴はその後も、深夜まで続いた。

 明が突然「『フォーカス』の応援歌作ってきたから聞いてくれ!」と立ち上がり、いきなり即興のラップ調で謎の歌を披露し始める。
 リズムはめちゃくちゃ、歌詞も無理やりだったが、仲間たちは腹を抱えて笑った。

 だが最後、明が「オレたちの未来は無限大ッ!」と叫んだ瞬間――

「静かにしろぉーいッ! 店が壊れるだろがぁぁぁ!」

 怒鳴りこんできた店主に一喝され、明はあっさりと椅子ごとひっくり返される。そこからの大爆笑と、それをなだめる礼子の苦笑――そんな夜は、誰にとっても忘れられないものとなった。
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