ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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「やっと……久しぶりに福佐山都市に帰ってこれたんだから、少しは自宅に戻ってのんびりしたいような気がするんだけど」

 有紗がそっと背伸びをしながら、柔らかな口調でつぶやく。その横で、純子が両手を腰に当ててうなずいた。

「そうよね。少しは休みを入れてもいいわよね?」

「さんせーい!」

 沙耶が勢いよく手を挙げ、明るく賛同の声を上げる。三人の女子たちは、まるで申し合わせたように顔を見合わせ、笑みを浮かべた。

 その雰囲気をぶち壊すように、明が眉をひそめて言い放つ。

「なんだよ。そんなん時間の無駄じゃねーか!」

 純子が即座に睨み返し、腕を組んで一歩前に出る。

「あんた、馬鹿! 女の子は色々準備をすることがあるんだから。お休みももらって、色々買いそろえたいものだってあるのよ!」

 明は目をそらしながら、つまらなそうにぼやく。

「そんなん、卓郎に『お取り寄せ』してもらえばいいじゃんか」

 その一言に、純子の顔が一気に赤く染まる。

「お、おとこに見せられないものを買うことだってあるでしょう! 恥ずかしいこと言わせないでよ!」

 言い終えるや否や、純子は頬を抑え、そっぽを向いた。

「……あっ、いや、ごめん」

 さすがの明も、純子の反応にたじろいで視線を泳がせる。

 その横で、沙耶がくすくす笑い、有紗がふんわりとした声で仲裁する。

「まあまあ、明君も。私たち、ちょっとだけ休んだら、すぐまた合流するから。ね?」

「……分かったよ。ちゃんと明日、時間通りに来いよ?」

「はーい!」

 沙耶がぴょんと跳ねるように手を振った。

 そして三人の女子たちは、それぞれの家路へと足を向ける。背中には軽い荷物、けれど、胸の中には何かときめく予定が詰まっているようだった。

 残された卓郎と明は、ぼんやりとその背中を見送っていた。

「なあ卓郎……女子って、めんどくせぇな」

「……だな。でも、まあ……楽しそうではあるよな」

 二人はふと顔を見合わせ、苦笑いした。



 ――純子・自宅

「はぁ……」

 カチャリ、と鍵を閉める音と同時に、純子はその場に背をもたれかけた。壁にずるずると滑り落ちて床に座り込む。遠征から帰ったばかりの身体は鉛のように重たく、足の裏がじんじんと痛む。

「つっかれたぁ……もう、今日は何もしたくない……」

 しばらくそのまま放心していたが、やがて「はっ」と我に返った。

「ダメダメ、こんなとこで寝てたらまた明日バタバタすることになるじゃん……」

 立ち上がると、足元のブーツをようやく脱ぎ捨てて、リビング兼自室へ向かう。扉を開ければ、そこは淡いベージュのカーテンに、ラグが敷かれたささやかな空間。ぬいぐるみが並んだ棚の前には、戦闘用の弓と予備の矢束が無造作に立てかけられていた。

「……片付けるのも明日でいっか」

 ベッドにダイブするように身体を投げ出す。ふかふかの毛布が肌に心地よい。けれど、脳裏にふと、戦闘中のある記憶がよみがえる。

「よし。まずは下着買いに行かなくちゃ……」

 ぽつりとこぼれた言葉は、だんだんと熱を帯びていく。

「あのバカ男共の前でボロボロのまま戦ってたとか……もう、思い出すだけで泣きたい……!」

 ぐるぐると布団に顔を埋めてじたばたしながら悶絶する。髪がぐちゃぐちゃになったのを感じて、しぶしぶ顔を出し、勢いよく跳ね起きた。

「もう我慢できない……!」

 彼女はまるで一大決心をするかのようにクローゼットの扉を開け放った。中には、遠征中に酷使された衣類が無理やり詰め込まれている。どれもこれも、毛羽立ちやらほつれやら、見るも無残。

「っていうか、もう全部限界来てるじゃない……。遠征長すぎなんだっての!」

 怒りまじりに服を引っ張り出しては、ベッドの上に次々と放り投げる。

 そしてふと、手にしたシャツの柄に目を止めた。

「……これ、最初の討伐前に買ったやつだっけ」

 指先で柄をなぞる。まだ冒険者になりたての頃、少しでも気分を上げたくて、勇気を出して選んだ、ちょっと可愛い服。

「……それに、ちょっと可愛い服も欲しいかも」

 ぽつりと呟いて、鏡の前に立つ。乱れた髪を櫛でとかしながら、自分の顔を見つめる。

「いや、別に誰のためでもないけど? 自分のテンション上げるため!」

 鏡の中の自分に言い聞かせるように笑い、だけどその頬はほんのりと赤い。

 そう、戦うための準備だけじゃない。自分のために、ちゃんと整えたい。そんな当たり前のことを、ようやく思い出したような気がした。


 ――有紗&沙耶・自宅

「たっだいまーっ!」

 玄関のドアを開けるや否や、沙耶の元気な声が響き渡った。その後ろから、有紗がふわりと微笑んで続く。

「ただいま、帰ったよ」

 二人は靴を並べて脱ぎ、慣れた様子でリビングへと入る。家具は必要最小限だが、観葉植物や小さな雑貨が並ぶ室内には、姉妹の個性がバランスよく溶け込んでいる。

 沙耶は荷物をそこら中に放り投げ、すぐにソファに倒れ込んだ。

「あー、つかれたぁ! でもーっ、ちょっと休んだら、買い物行くぞー! ね、姉さん?」

「うん。リスト作っておいたよ。矢羽根の補充と……あと、沙耶の爆竹もまた買うの?」

「もちろんでしょ! 今回はもっとドカーンってやつ買うんだから!」

 沙耶は腕を振り上げて満面の笑み。有紗はそんな妹を見て、肩をすくめつつもどこか楽しげだった。

「……それと、少し可愛い服も見たいかな」

 沙耶がぱちっと目を瞬かせた。

「へ? 姉さんが服にこだわるなんて珍しいじゃん!」

「……次の遠征、草原のほうに行くって言ってたから。風に揺れるような、軽い布の服があったらいいなって……」

 有紗は視線を落としながら、髪を耳にかけてごまかす。

「べ、別に……気分転換よ。ただの」

 ――たとえば、何かの拍子に、あの人が見ていたら。

 そんな考えが頭をよぎって、有紗の頬にほんのり朱が差す。

「ふーん……誰かに見せたいのかな? もしかしてぇ~……」

 沙耶が意地悪く笑いながら、じりじりと距離を詰めてくる。

「ち、違うっ。誰にも見せないし、ただの自己満足!」

「ふーん……でも、似合うと思うよ。姉さん、そういうの」

 沙耶はニッと笑ってソファに転がり直した。

 その言葉に、有紗はちょっとだけ笑って――でも、すぐに表情を引き締めた。

 二人の会話が続く中、台所からはポットの湯が湧きはじめる音が聞こえていた。

 戦いの合間の、双子だけの穏やかな時間。言葉にせずとも、次の冒険に向けて、それぞれの心が静かに高まっていく。




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