ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 ざわついた空気がようやく収まり、再び静寂が訪れる。

 聖女・由里が小さく咳払いをして、視線を会議全体へと向け直した。

「では、今後の対応についてご意見をいただきたいと思います。まずは、封印の再構築を最優先とし、周辺地域への瘴気の拡散を防ぐための結界を――」

「待ってください」仁がすっと手を上げ、言葉を割った。「封印の再構築だけでは不十分だと思います。問題は、棺の中の何かが意志を持って動いているという点です」

 場の緊張が再び高まる。仁は立ち上がり、テーブルに地図を広げた。村の周囲に点在する遺跡や、古の祭祀場が記されている。

「この村を中心に、古代文明期の儀式場がいくつか点在している。そして、それらの多くで、近年立て続けに『霊的障害』や『黒霧の発生』が報告されている」

「連動している可能性がある、ということ?」由里が問い返す。

「はい。封印は一か所ではなく、複数の拠点を抑えることで成立していたのかもしれない。そのうちの一つが、ここで破られた。……つまり、次もある」

「なら、我々は分散して警戒にあたるべきです」勇人が重々しく言った。「だが兵力には限りがある。全てを守りきるのは難しい。――聖女様、どの拠点を優先とするか、神託に示されてはいませんか」

 由里は静かに首を振る。

「神託は『霧が戻る』としか……ただ、卓郎くんが鍵であるなら、彼の行動が、道を照らすかもしれません」

 不意に、キルシュが短く口笛を吹いた。

「結局、彼に任せるって流れか。だったら、私たちも行動を共にした方がいいわね。少なくとも、私は面白そうだと思ってるし」

「勝手なことを……!」勇人が睨むが、仁がそれを手で制した。

「それが彼女のやり方です。……それに、私も同行する」

 会議がざわつく。だが仁は迷いなく続けた。

「これは単なる調査ではなく、次なる危機への対応になる。最前線に立つ覚悟がなければ、真実にはたどり着けない。――卓郎くん、君も、来るか?」

 仁の目が、まっすぐに俺を見つめていた。

 俺は、一瞬、言葉を失った。

 心の中で、何かが揺れていた。

 ……なぜ、自分なのか。なぜ『鍵』と呼ばれるのか。

 村の祠で見たあの黒い影。何もできず、ただ逃げ出した自分。

 弱かった。それが、答えだった。今なら……どうだろう。

 『白火の峰』でも一人では封印も討伐もできなかった。

 でももう逃げたくない。

「……行きます。俺も、戦います。鍵かどうかは分からないけど、俺が動くことで、何か変わるなら、やってみせます」

 自分でも驚くほど、はっきりとした声だった。

 仁が頷く。リディアも、微かに表情を緩めた。

「それでは決まりですね」由里が微笑む。「卓郎くん、仁、リディア、キルシュ、そして『フォーカス』の皆さんと共に、最も危険度の高い次の拠点――『呪詛の谷』へ向かっていただきます」

 静かに、会議が締めくくられていく。

 その時だった。

 村の外から、けたたましい鐘の音が鳴り響いた。

「何だ!?」

 兵士が駆け込んできた。

「報告! 西の森から、黒霧が発生! 数十体の“動く死者”がこちらへ向かって接近中!」

 一気に会議が騒然とする。

「くっ……またか!」仁が立ち上がる。「卓郎、すぐに準備を!」

「はい!」



 村の広場に出ると、すでに防衛隊が動き始めていた。村を囲む木柵の上に弓兵が登り、魔法陣を描く神官たちが急いで結界の準備に取りかかっている。

 空気が――重い。

 瘴気が、確実に近づいてきているのが分かる。肌が粟立ち、喉の奥が焼けるようだった。

 俺は腰のミスリルソードを確かめると、背後から駆け寄ってきた仲間たちと目を合わせた。

「卓郎、大丈夫?」純子が言う。弓を握る手はわずかに震えていたが、目は真剣だった。

「うん。やるしかないよな。今は、それだけだ」

「いい心構えじゃん」明がにやりと笑う。「どんな死者でも、ぶった斬れば動かない。それだけだろ?」

「そう単純じゃないわよ。あれは、ただのゾンビじゃない」有紗が静かに口を挟む。「魂を引きずられて動いてる。意志がなくても、呪いがある」

 沙耶が唇を引き結び、頷いた。
「じゃあ、全部浄化して、元に戻してあげよっか。たっくんそういう効果の矢をちょうだい」

「はいはい、前向きでよろしいこと」純子が苦笑する。

 俺はいそいで『浄化の矢(光魔法浄化が付与された矢)』を30本づつ取り寄せて手渡す。

 そのやりとりの向こうで、仁とキルシュ、そしてリディアが前線の方へ向かっていた。

「卓郎、来い!」仁が手招く。

 俺たちは走り出す。木柵の南門――そこが突破される可能性が高い。

 そして、見えた。

 霧の奥に、ゆっくりと現れる異形の影たち。

 人の姿を保ちながらも、皮膚は黒く腐り、眼窩には赤黒い光が灯っていた。身にまとうはずの鎧や布はすでに腐食しており、骨のように尖った武器を手にしている。

「――動く死者」俺は無意識に呟いた。

 リディアが鋭く指を鳴らすと、風が巻き起こり、霧の一部を吹き飛ばした。

「数は三十……いや、四十以上。前衛は六体、特に大きい。骨格が違う」

「下位個体と上位個体……分断できれば、戦えるな」
 仁が剣を引き抜き、周囲に声をかけた。

「前衛、俺と明で引き受ける! 弓隊は距離を取って援護! 」

「『フォーカス』は俺たちの左に!」

「了解!」

 剣を抜いた。緊張で手が汗ばんでいる。

 けれど、怖さはあった。あったけれど、それでも。

 ――もう、逃げたくない。

 俺は、自分のスキル『セイントシールド(味方一人を光の盾で包み、防御力を上昇させる)』の詠唱を心の中で繰り返す。明、純子、有紗、沙耶が光の盾で包まれる。

 目の前の敵が、地を震わせて迫ってくる。

 そして。

「来るぞ! 備えっ!」

 仁の怒声とともに、咆哮を上げる亡者が跳んだ。

 俺は剣を構え、目の前に迫る一撃に、踏み込んだ。

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