ダメスキル『百点カード』でチート生活・ポイカツ極めて無双する。

米糠

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 大草原を抜けるまでに《ヴァーリ・ウルス》の群れに3度遭遇、合計で13匹の《ヴァーリ・ウルス》を撃退し、ストレージに納めてある。炎のダメージが大きいためギルドに出しても然程買い取り価格は伸びないかもしれないが、それは事のついでなので、買い取り額がいくらでも構わないのだ。

 夕日が山の稜線に沈み始めたころ、俺とリーナは大草原の果てに広がる岩山地帯の前にたどり着いていた。地面は徐々に傾斜を増し、足元には露出した石の多い開けた場所が現れる。

「……この辺りで野営とするか。木も少ないし、見通しがきく」

「はい。……でも、ちょっと冷えますね」

「標高が上がってきたからな。大森林を抜けたから《ヴァーリ・ウルス》はもう出てこないだろう。火が嫌いな奴らだし、焚火をしながらここらで一息つこう」

「はーい!」

「《ゴーレムサモン》! 前方、後方、上空監視。3体展開」

 ごぉぉん……という低い音とともに、土と石が集まり、三体の人型ゴーレムが現れる。それぞれが周囲に目を配るように配置され、守りの陣を作った。

「すごい……こんなに自在に召喚できるなんて」

「慣れればな。あとは焚き火と、簡単な食事にしよう」

 卓郎は、ストレージから簡素な食事キットをとりだし、乾燥肉と根菜のスープを煮始める。リーナも横に腰を下ろし、ひざ掛けを広げる。

「……あの、卓郎さん」

「ん?」

「今日は、ありがとうございました。私、《ヴァーリ・ウルス》に囲まれたとき、すごく怖かったんですけど……卓郎さんがそばにいたから、剣を振るえました」

 卓郎はスープをかき混ぜながら、少し目を細めた。

「リーナ、あれは『勇気』ってやつだ。怖いのは当たり前。だが、逃げなかった。そこが大事なんだ」

「……はい!」

 二人の間に、穏やかな沈黙が落ちる。スープの湯気が上がり、夕闇にかすかに金色に照らされる。

 ――だが。

 その静けさを、突如、風が裂いた。

 ヒュウウウ――ッ。

 まるで鋭利な刃物が空を切るような風音が、背後からリーナの首筋を撫でた。

「……ッ!?  今、風……?」

 リーナが眉をひそめて立ち上がると、卓郎の顔色がすっと変わった。

「魔力の気配……リーナ、離れろ!」

 その言葉と同時に、ゴーレムのひとつが前のめりに崩れ落ちた。

 ――何かが、目に見えぬ速さで通り過ぎた。

 次の瞬間、白い焔が夜の中に現れた。

「……な、に……?」

 開けた岩場の先、月光を受けて揺らめくその姿が、ようやく視認できる。

 2メートルを超える獣人型の影。白銀に燃える炎がその毛皮のように体を包み、黒曜石のように輝く爪が月光を跳ね返す。眼だけは、灼けるように紅く、獲物を見定めるかのようにぎらついていた。

「――《白炎の狩人》、フェルブレイズ……っ」

 卓郎が即座に構える。ミスリルソードが静かに光を帯び、魔力が流れ込んでいく。

「し、白炎……って、これ……本物ですか!?」

「ああ……間違いない。こいつ、魔力を感知して狩る。夜のうちに来るとは……まずい」

 ゴーレムがもう一体、後方から襲われ、瞬時に爪で切り裂かれて崩れ落ちる。

「速い……!」

 リーナが剣を構えるも、目の前の存在に圧倒されて思わず一歩後ずさる。

 その瞬間、フェルブレイズの身がふわりと浮かぶようにして、リーナに向けて跳躍した。

「リーナ、伏せろ!」

「きゃっ――!」

 卓郎の叫びとともに、彼の魔力が爆発的に解放される。

「《ストーンウォール》!」

 リーナの前に地面が隆起し、分厚い岩の盾がせり上がる。フェルブレイズの爪がそれに食い込み、火花と白炎が弾けた。

「くっ……《セラフレイム》!」

 卓郎が前方へと飛び出し、赤熱するミスリルソードを振り抜く。だがフェルブレイズは刃の軌道を見切ったかのように滑らかに後方へ跳び、距離を取る。

「こいつ……動きが完全に狩人だ。読み合いをしてくる……」

 リーナは震える膝を抑えながら、息を整える。

「卓郎さん……どうしますか……?」

「やられる前に仕留めるしかない。あいつは一匹、だが爪の一撃でこっちのゴーレムを倒せる。リーナ、氷結系のスクロールは持ってるか?」

「あります! 一枚だけ……!」

「リーナはそれを決定打に使え。俺が動きを止める。炎属性は効かない……むしろ燃料になる。注意しろ!」

「わかりましたっ!」

「ライフリンク! 防御上昇〈鉄壁〉! 移動速度上昇〈俊足〉! 筋力強化〈剛力〉! 視覚強化〈鷹眼〉!」
 リーナの体が淡い光に包まれ、魔力の波が卓郎の手から走り出し、次々と彼女を強化していく。

「お前にはこれだー! 移動速度低下〈鈍足〉!」

 フェルブレイズにデバフ魔法をかける。

「よし! とらえた!」

 フェルブレイズのスピードがガクンと落ちた。

「得意のスピード攻撃はもう俺には通じないぜ!」

 俺だってスピードのステータスは5494で奴に引けは取らないはず。俺も高速で駆け出しながら剣撃

 岩場を蹴り上げた足元から砂埃が舞い、ミスリルソードが月光を跳ね返す。

「斬光断!」

 刃に込めた魔力が爆ぜるように白炎の魔獣へと伸び、卓郎の一撃がフェルブレイズの肩口を浅く裂いた。白い焔が逆巻くように舞い、地面に火の粉を落とす。

「ぐ、ぅおぉぉぉ……っ!」

 フェルブレイズの口から獣じみた低い唸りが漏れた。獣人型の筋肉がうねり、反撃に移ろうと身構える。

「来るぞ、リーナ!」

 次の瞬間、フェルブレイズが跳んだ。鈍足デバフを受けてなお、その跳躍力は凄まじい。地を裂くような力で卓郎の正面に迫る――!

「遅いッ! 《アースシールド》!」

 卓郎が剣を盾のように構え、《アースシールド》の石板が前に展開する。フェルブレイズの爪がそれを割って突き刺さるが――

「今だ、リーナァ!!」

 リーナは全身を震わせながらも、右手に握りしめた氷結スクロールを広げ、魔力を叩き込んだ。

「《アイス・スパイク・バースト》!!」

 空気が一瞬、凍てついた。

 フェルブレイズの足元から無数の氷柱が一斉に噴き出し、その白炎の体を貫いた。魔力を燃やす炎が、氷の魔力に凍結されていく――白炎が、まるで悲鳴を上げるように、バチバチと音を立てて消えていった。

「ガァ、アアアアアアア――ッ!!」

 白炎の獣人が仰け反る。

 卓郎は迷わず、その隙を突いた。

「影走り! 鋼壁斬!」

 剣が灼けるように紅く光り、魔力が限界まで高められる。刃の光りが変化し、蒼白に輝く、風すら震えるような音を立てながら――

「終われぇぇえええええッ!!」

 彼の剣がフェルブレイズの胸を貫いた。

 爆ぜる魔力。凍りついた白炎が、まるで崩れ落ちる雪のように舞う。フェルブレイズの身体がぐらりと揺れ、膝をついた。

 ――そして、完全に沈黙した。

「……やった?」

 リーナの声が震えていた。卓郎は剣を振り払い、刃から蒼白の輝きが静かに消えるのを見届けて、深く息を吐いた。

「……ああ。終わった」

 風が静かに吹く。焼けた岩と、凍りついた地面の温度差が、まるで戦いの痕跡を語るようだった。

 リーナがよろけるように卓郎の隣に駆け寄った。

「卓郎さんっ……怪我は……!?」

「軽くかすっただけだ。リーナは?」

「私は……全然大丈夫、です。でも……」

 リーナは目の前に崩れた《フェルブレイズ》の骸を見下ろし、息を呑んだ。

「これが、……あんな強さの、魔獣……」

「上級魔獣だ。白炎の核と爪……これは相当な値段になる」

 卓郎は腰を落とし、フェルブレイズの胸元を慎重に切開した。そこには白く光る、燃えさしのような球体――《白炎の核》が脈打っていた。

「これだ……こいつが《白炎の核》だ」

「すごい……魔力がまだ……生きてる」

「高位の魔導触媒になるんだ。装備の強化に使われるんだよ」

 俺は《白炎の核》と爪を慎重にストレージに収納し、静かに立ち上がった。

「リーナ。きみの一撃がなければ仕留められなかったよ。よくやったね」

 リーナは顔を真っ赤にしながら、照れたように笑う。

「え、えへへ……! でも、やっぱり怖かったですよぉ……!」

 俺は、彼女の肩に手を置いた。

 夜空に星が瞬き始めていた。月明かりの下、静寂がようやく戻ってきた。

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