十魔王

nionea

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萬魔の王

3.

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 ナークは、ぼうっとした夢現の日々を送っている。
 眠っていても、目を覚ましていても、頭は常に靄がかかったようで、考えるという事ができない。
 今も、信じられないくらいに膨らんだ自分の腹部を撫でながら、頭はそれが自分の腹だとは理解していないのだ。
 時間の感覚もなく、ただ、日に何度も寝て起きてを繰り返している。起きている時には、たまに顔色の悪いメイドらしい老婆が水を吸呑で渡してくる事があるが、それがどれくらいの頻度であるのか等という事も全く解らない。
 時に白い光の中で、時にオレンジの灯りの中で、だがずっと寝台の上で、彼は目を覚ましても夢を見ているような感覚に飲み込まれていた。その日々の終わりは不意に訪れる。
「いっ!」
 オレンジの灯りの中、突然の腹痛に、彼は身を丸めた。だが、すぐに伸びてきた触手に体を固定される。
「んぅっ…」
 口腔内にも触手は入り、痛みに悲鳴をあげる事もできなくなった。手は体の横に伸ばされ、だが膝は立たせられる。幅の広い触手が腰から上半身にかけて、全体的に傾けるように背後に回った。よく見ると、彼の後孔からさらりとした体液が漏れ出て、寝台に染みを作っている。
「うんんっんぅん」
 痛みを堪えながら、声にならない悲鳴をあげていると、顔色の悪い老婆が室内に入ってきた。
 老婆は涙を浮かべて助けを求める彼の目は一切見ずに、既に白い何かを吐き出そうと広がっている彼の後孔を見つめている。しばらくして、もう一人やってきた同じメイドらしい中年の女の方を向き、頷いた。
 中年女は室内に入ると、手に持っていた藁編みの籠を老婆に渡す。
「んんぅ―――!」
 みちりと、彼の後孔が白い何かに押し広げられた。その白い、鶏卵に似たものの最も太い部分が過ぎ去ると、つるりと彼の中からそれは産み出された。明らかに、卵である。
 老婆は籠に入っていた柔らかい布で恭しくその卵を包むと、そっと籠の中に置いた。
「んっ」
 白い卵を産んだ事で一息ついていた彼をすぐに次の違和感が襲う。ひくひくと開いた後孔が蠢いていたかと思うと、再び腹痛が起こり、涙が滲んだ。痛みに悶えていると、ひくついていた後孔から青い卵が覗いた。
「んんっん」
 白い卵の時と同じように限界まで広がった後、つるりと卵は進んだ。だが、その青い卵は鶏卵状ではなかった。細くなったかと思うと再び太い部分が続いていたのだ。先程よりは太くない、だが苦しみの度合いは対して変わらない部分が過ぎると、ぽとりと待ち構えていた老婆の手で広げられていた布の上に落ちた。
 全体に細いが、瓢箪に似た青い卵である。
 もう嫌だ、もう無理だ、という思いが湧き上がっていた。だが、体は再び違和感と痛みを訴え、閉じられない後孔からは赤い卵が覗き始める。
「んっんぅ…」
 赤い卵はくびれた所が一切なく。太く長い卵で、彼の後孔はみっちりと広がったままひどく長い時間をかけてそれを産み落とした。
「うぅん………」
 ぐったりと彼の体から力が抜けるが、休む暇は無く。再び襲い来る痛みで、また全身が強張った。
「んぅっ!」
 黒いその卵は、今までのつるりとした表面の卵とは違い、ぼつぼつと丸いが明らかな突起が表面に並んでいる。まるで彼の中から出ていく事を拒むように、突起の一つ一つが彼の後孔に引っかかった。赤い卵と同じ程の時間をかけて産んだのだが、大きさは白い卵と変わらない。
 もっともそんな違いは彼には解らない事だ。
 意識を失いかけたところで、まだ終わらない痛みに引き戻される。
「ぅ…」
 初めはすっと進んでいった。まるで巻貝のような紫色の卵は、途中までは抵抗なく進み、最後にまるで栓をするように引っかかる。妊婦の出産を見た事がない彼は、体から力を抜く呼吸法を知らない。ただ痛みに強張る体で、必死に力んで、卵を産もうと苦しんでいた。
「っ!」
 ずちゅり、と紫の卵が産み落とされる。
 その衝撃で彼は失神した。
 だが、既に後孔からは黄色の卵が出始めていて、すぐに意識は浮上する。
「んんっ」
 先程までの苦しみとは違い、波打つような表面を持ちながらも全体に細く長い黄色の卵は、するすると出て行った。力む必要のない卵に、安堵を感じ、体が弛緩する。
 難なく産まれた黄色い卵を籠に置き、立ち上がると、老婆は弛緩してぐったりとする彼を見下ろした。しばらくその姿を観察してから頷くと、籠を抱えた中年女と連れ立って出て行く。それが合図であったかのように、彼を拘束していた触手もするすると寝台の下へ消えていった。
 ほとんど意識の無い彼は、わずかに感じた違和感にも、痛みにも、もう反応できずにいる。ただ、完全に意識を失う寸前、自分の後孔から何かがつるっと漏れ出した事には気付いた。だが、そこまでだった。
 ナークのぐったりと開いた股の間には、ピンク色の繭のような小さな卵がある。溶けるようにじわじわと穴が空き、中からは蛞蝓のようなものが這い出した。それは横たわる彼の体にへばりつき、ゆっくりと這い上がる。全く反応の無い彼の腹部を過ぎ、胸部に辿り付くと、その色の薄い乳首にとりついた。
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