とある隠密の受難

nionea

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プロローグ

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「あ、どうも、隠密です」
 右端の方、何フランクに挨拶してんだよ隠密のくせに、って顔をしましたね。見えてますよ。隠密ですから、前見てるようでも真横くらいまでは見えるように訓練してるんですよ。まぁ、その気持ち、解りますけど。
「見れば解る。それで、どこの手の者だ」
 まぁ、ついさっきまで天井裏にいましたからね、全身柿渋ですからね、そりゃ見たまんまですよね。でも、じゃあ、何者だって質問じゃなくて、初めから何処のだって訊いて欲しかったです。まぁ、答えませんけど。
「いえ、何処って、まぁ、天井裏住まいですけど」
 無言の方が良かったかな、なんか騎士が軒並み殺気立ったな。距離は有るが四人も居るしな。そもそも、全力で逃げても、此処に引きずり出されたのと同じ事されたら意味無いしな。魔法ってどうやったら回避できるんだろうな。
「何時から住みついている?」
 若殿様が軽口嫌いではないのは知ってるが、この状況でもそうなのか。面白い人だな。考える時間が稼げて大助かりだ。
「そろそろ一年になりますね」
 まぁ、ざわつくよな。解る解る。そんだけの期間曲者が天井裏に居たのに気付いてなかったとか、とんだ恥だもんな。でも俺が真実を言ってる保証もまず無いんだぜ。さあさ思考をとっ散らかして下さいなっと。
「そうか、では、金十二枚を払え」
「え? なんで?」
 しまった、予想外過ぎて普通に訊いてしまった。攪乱するつもりが、若殿様たいがいだな。
「家賃だ」
「家賃ですか」
 城下街の一軒家でもせいぜい月銀二枚ってとこが相場なのにな、五倍か。高ぇな、たかが天井裏に住んでたくらいで金一枚かよ。それとも身代金かね、金十二枚出しゃ見逃してくれるつもりなのか。
「あ、じゃあ、急に呼び出されて手持ちがないので、ちょっと取って来ますね」
 そう言って天井を指差すと、鷹揚に頷かれた。軽口や冗談でなく本気で言ってるのか。いや、何にせよこっちには好都合だし、良いか別に。
「然らば、暫し」
 そう言ってさっさと扉から出て行く。閉めた向こうから騎士達の騒ぐ声が聞こえたが、確認はしない。さっさと廊下の一部から壁裏に入り込む。何人か扉から騎士が出てきて探しているらしいが、当然無視だ。
 それにしても、何の魔法だったんだろうか。そもそも、第二王子と騎士連中は魔法は使えなかったはずだよな。魔道具か。でも、何の魔道具だ。そもそも隠密を表に引きずり出すなら、もっと、牢の中とか、囲んでからとか、やりようがるはずだよな。
 まぁ、今は良いや、逃げよう。
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