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後のお話
2.白蓉城
突然フォーゲン家に養子に入った事以外特筆すべき事も特にないまま、卒業し、ニアさんと一緒に白蓉城にやって来た。
立ち居振る舞いの素敵な老紳士、かつ、俺の義父であるボイルさんは普通に部下への教育も徹底していたので、正直この城で俺がやる事はほぼない。せいぜい期末に一週間くらいかけて帳簿の確認をするくらいだ。
そんなんで良いんですか、と疑問符いっぱいで訊き返したら、
「殿下からそう手配するよう言われておりますので」
と、言われた。
アデル様よ、俺に何をさせたいんだ。
益々疑問符が頭を埋め尽くしたが、ニアさん曰くどうもアルカリ・ジャック三世を手元に囲い込んでおきたい、ということらしい。この国の王族は、自分が好きな相手のエロ本書く能力を持つ者を優遇し過ぎだろう。まぁ助かりますけども。
そんな訳で、俺とニアさんは白蓉城でのんきにお茶を飲んでいた。
「お茶美味しいね」
「そうですね」
「庭も綺麗だね」
「そうですね」
「暇だね」
「ですね」
俺達以外はみんな働いているのだ。王太子妃の入城に当たって、事前に様々な準備は終えているが、いざ入ったとなれば、連日連夜挨拶をしにお客様がやって来る事になるから。そんな人々の応対やら、滞在の世話やら、記録やら、各所各人、暇、など無く立ち働いている訳だ。
「ニアさんは、解りますけど…俺本当に何もしなくて良いんですかね」
「心配しなくてもルイ君はちゃんと仕事してるよ」
「どこがですか?」
「貴人のお喋り相手」
「………ああ。自分も楽しいし気を遣う事がないので微妙に認識してませんでしたが、普通はありましたねそういう仕事」
「日本なら御伽衆とかともいうよね」
もう良いか。そういう仕事に就いたのだと自分を納得させよう。
「お話中失礼いたします」
ニアさんの身の回りを世話する侍女達の長である、侍女長が話しかけてきた。ちなみにこの人侯爵家の人なんだぜ。名目上俺の部下だけど。やっぱり、この仕事、色々辛いかも。
「王太子殿下より御下知のありました、白蓉城に配置する近衛騎士が到着いたしました。妃殿下にお目通りを願っております」
「解りました。では、こちらで会います」
「畏まりました」
元々城だから、白蓉城には騎士が常駐している。ただ、王族が居住する時には更に追加で騎士か近衛騎士が配置されるらしい。本来ならニアさんと一緒に入場するもんだが、アデル様直々の手配だとかで、道中の近衛騎士と、今後城に配置される近衛騎士は違うらしい。まだ会ってもいないけど、アデル様が絡んでいるというだけで不安感が湧くから不思議だ。
俺がそんな思いをニアさんと、解りみが深い、とか話している間に、近衛騎士達が到着した。
「…ん?」
「おやまあ」
思わずわざとらしいまでに瞬きをしてしまった。
「本日より妃殿下の身辺警護の任に就きます。近衛騎士団第三部隊長アクス・イールズ、並びに部隊員十二名。目通りが叶いました事、まことに光栄に存じます」
「よろしく頼みます」
「はっ」
「………」
俺のアクスが格好良過ぎて辛い。
ナンダコレ。アデル様の新手の罠か。攻撃なのか。確かに心臓と脳がもの凄い負荷を受けてショートしそうではあるけども。こんなんもうご褒美だろうが。ありがとうございます。
今、俺は割と初めて心の底からアデル様にお礼を言った気がする。
アクス、背が伸びてる。それどころか、体が出来上がってる。鎧姿似合い過ぎる。跪いて挨拶とか完璧構図過ぎて泣けそう。てか部隊長って何だ。聞いてない。情報過多で尊死の危機なんだが、とりあえず、今後この城で一緒に居られるって理解でおkなのか?
「ル・イ・君」
「っ!」
ニアさんにつつかれて、ようやく現実に引き戻った。アクスは既に退室している。正確にはニアさんの護衛だから、前室に詰めてるんだろうけど。
「…ニアさん、俺、顔壊れてないですかね?」
「大丈夫。むしろ、どうした? ってくらい『無』だったよ」
「この事態は…えっと、ニアさんは知ってました?」
「知ってたらルイ君に隠し通せてなかっただろうね」
あーまーですよねー。ニアさんびっくりするほど友人相手には腹芸出来ない人だからな。
「アデル様は何の企みがあってこの人事なんですかね…」
「うーん。いつかも言ったけど…あの腹黒とことん我々を利用する気みたいだから、首輪のつもりじゃないかな」
「ニンジンでもなく…首輪っすか」
「ニンジン…のつもりもあるかもしれないけど。どちらかというと、我々が自堕落に生きれる快適な場所を作り上げて逃げ出そうなどとは夢々思わないようにする、的な…柵?」
「策でもなく柵…自分の事を割と正確に把握されててそこはかとなく気持ち悪いというか居心地悪い感じで、既に逃げ出したいという思いは有るのですが、確かに此処から具体的に逃げ出す情熱が湧くかと言われると、無理だ」
「ねー本当に、実行力のある権力者って気持ちわ…怖いよね。私もいつも逃げ出したい思いが何処かに有る」
それが貴方の旦那ですが、という言葉はご本人が深く理解しているだろうから、飲み込んだ。
立ち居振る舞いの素敵な老紳士、かつ、俺の義父であるボイルさんは普通に部下への教育も徹底していたので、正直この城で俺がやる事はほぼない。せいぜい期末に一週間くらいかけて帳簿の確認をするくらいだ。
そんなんで良いんですか、と疑問符いっぱいで訊き返したら、
「殿下からそう手配するよう言われておりますので」
と、言われた。
アデル様よ、俺に何をさせたいんだ。
益々疑問符が頭を埋め尽くしたが、ニアさん曰くどうもアルカリ・ジャック三世を手元に囲い込んでおきたい、ということらしい。この国の王族は、自分が好きな相手のエロ本書く能力を持つ者を優遇し過ぎだろう。まぁ助かりますけども。
そんな訳で、俺とニアさんは白蓉城でのんきにお茶を飲んでいた。
「お茶美味しいね」
「そうですね」
「庭も綺麗だね」
「そうですね」
「暇だね」
「ですね」
俺達以外はみんな働いているのだ。王太子妃の入城に当たって、事前に様々な準備は終えているが、いざ入ったとなれば、連日連夜挨拶をしにお客様がやって来る事になるから。そんな人々の応対やら、滞在の世話やら、記録やら、各所各人、暇、など無く立ち働いている訳だ。
「ニアさんは、解りますけど…俺本当に何もしなくて良いんですかね」
「心配しなくてもルイ君はちゃんと仕事してるよ」
「どこがですか?」
「貴人のお喋り相手」
「………ああ。自分も楽しいし気を遣う事がないので微妙に認識してませんでしたが、普通はありましたねそういう仕事」
「日本なら御伽衆とかともいうよね」
もう良いか。そういう仕事に就いたのだと自分を納得させよう。
「お話中失礼いたします」
ニアさんの身の回りを世話する侍女達の長である、侍女長が話しかけてきた。ちなみにこの人侯爵家の人なんだぜ。名目上俺の部下だけど。やっぱり、この仕事、色々辛いかも。
「王太子殿下より御下知のありました、白蓉城に配置する近衛騎士が到着いたしました。妃殿下にお目通りを願っております」
「解りました。では、こちらで会います」
「畏まりました」
元々城だから、白蓉城には騎士が常駐している。ただ、王族が居住する時には更に追加で騎士か近衛騎士が配置されるらしい。本来ならニアさんと一緒に入場するもんだが、アデル様直々の手配だとかで、道中の近衛騎士と、今後城に配置される近衛騎士は違うらしい。まだ会ってもいないけど、アデル様が絡んでいるというだけで不安感が湧くから不思議だ。
俺がそんな思いをニアさんと、解りみが深い、とか話している間に、近衛騎士達が到着した。
「…ん?」
「おやまあ」
思わずわざとらしいまでに瞬きをしてしまった。
「本日より妃殿下の身辺警護の任に就きます。近衛騎士団第三部隊長アクス・イールズ、並びに部隊員十二名。目通りが叶いました事、まことに光栄に存じます」
「よろしく頼みます」
「はっ」
「………」
俺のアクスが格好良過ぎて辛い。
ナンダコレ。アデル様の新手の罠か。攻撃なのか。確かに心臓と脳がもの凄い負荷を受けてショートしそうではあるけども。こんなんもうご褒美だろうが。ありがとうございます。
今、俺は割と初めて心の底からアデル様にお礼を言った気がする。
アクス、背が伸びてる。それどころか、体が出来上がってる。鎧姿似合い過ぎる。跪いて挨拶とか完璧構図過ぎて泣けそう。てか部隊長って何だ。聞いてない。情報過多で尊死の危機なんだが、とりあえず、今後この城で一緒に居られるって理解でおkなのか?
「ル・イ・君」
「っ!」
ニアさんにつつかれて、ようやく現実に引き戻った。アクスは既に退室している。正確にはニアさんの護衛だから、前室に詰めてるんだろうけど。
「…ニアさん、俺、顔壊れてないですかね?」
「大丈夫。むしろ、どうした? ってくらい『無』だったよ」
「この事態は…えっと、ニアさんは知ってました?」
「知ってたらルイ君に隠し通せてなかっただろうね」
あーまーですよねー。ニアさんびっくりするほど友人相手には腹芸出来ない人だからな。
「アデル様は何の企みがあってこの人事なんですかね…」
「うーん。いつかも言ったけど…あの腹黒とことん我々を利用する気みたいだから、首輪のつもりじゃないかな」
「ニンジンでもなく…首輪っすか」
「ニンジン…のつもりもあるかもしれないけど。どちらかというと、我々が自堕落に生きれる快適な場所を作り上げて逃げ出そうなどとは夢々思わないようにする、的な…柵?」
「策でもなく柵…自分の事を割と正確に把握されててそこはかとなく気持ち悪いというか居心地悪い感じで、既に逃げ出したいという思いは有るのですが、確かに此処から具体的に逃げ出す情熱が湧くかと言われると、無理だ」
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それが貴方の旦那ですが、という言葉はご本人が深く理解しているだろうから、飲み込んだ。
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