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第1話 代行者と裏仕事
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「ようこそ!聖エストリル王国中央ギルドへ!」
今日も美しい受付嬢が冒険者たちを迎える。
ここは聖エストリル王国。
唯一神女神エストリルを崇める宗教国家でありながら自由と冒険を掲げる他種族国家でもある。
この王国の中央に位置するのが、中央ギルド。
ここには平民から果ては王族まで幅広く委嘱された任務が集っていて、この任務を達成し武勲を立てようと、今日も数多の冒険者たちが訪れる。
…だが、そんな任務の中に『一般の冒険者』には受託できない任務が存在する。
それが、異世界ギルドの裏仕事であるーーーー
ーーーー息を切らし裏路地を逃げ回る。後方から発砲された弾丸が右足を掠め、痛みに顔を歪めながらもひた走る。なんで俺が、こんな目に。そんなことを考えてももう遅い。なぜなら彼は、あの『代行者』に追われているのだから。
「クソったれェ!」
狭い路地に山積みになって置かれている空き樽を後方へ叩き払う。ガラゴロと転がる樽により塞がる道。逃亡者は追っ手の静止を確認しニヤリと笑う。へっなんだ、代行者ってのも大した事ねぇじゃねぇか。と、九死に一生を得たような気分…も束の間。
弾丸を掠めた右足が突然爆発した。
「ぐぅァあ!?!」
バランスを失い派手に壁に衝突する。全身を強打し、身動きが取れなくなる男。そこへカツ、コツと足音がゆっくりと近づいてくる。
やめろ、やめろ。近づいてくるな。
なんとか立ち上がろうとするも右足が動かない。必死にもがいて逃げようしても足音は段々と近づいてくる。
間も無くして裏路地に拡がっていた爆煙が晴れると、仮面と黒のローブを身にまとった代行者は銃口を男に向けて静かに見下ろしていた。
「な…何なんだよお前はァァァ!!」
焦りと恐怖。咄嗟に上級氷魔法『アイシクルランス』を無詠唱で唱え、代行者を攻撃する男。八本の氷槍が空中に現れ代行者へと放たれる。一本でも壁を貫通する威力を持つ氷槍は…
「…」
全弾命中。代行者の腹部へと完全に突き刺さり、男は勝利を確信する…。筈が、次の瞬間には代行者は何も無かったかのように男へと近づいてくる。1歩1歩、その足取りは乱れることなく。
「く…来るなッ…」
切り札の魔法が全く通用しなかった男の表情は絶望へと染まって行く。ここまでなのか。代行者とは、ここまでの強さなのか。
静かに歩み寄ってきた代行者は、男の額に銃を突きつけ、静かに語った。
「………任務、完了」
機械のように無機質で無性別的なその声は恐ろしい程に無感情であった。
「…あ、やだ…ぁ…」
パシュンと小さな発砲音と共に男の声は途切れ、裏路地は束の間の喧騒から解放された。
ーーー2時間後。
聖エストリル王国立カンパネラ聖堂内 第四 告会部屋にて。仮面とローブを身にまとった『代行者』は、その席に静かに座っていた。
「貴方が神に告白したい罪はなんですか」
カーテンで仕切られた小窓の奥から優しい声をした司祭が信者の罪を尋ねる。
代行者はトントントントンと小窓を四回ノックした後、
「………開けゴマ」
静かに謎の言葉を告げる。
「……………お疲れ様でした。下で副ギルド長がお待ちです」
代行者の謎の言葉、合言葉を受けた司祭は代行者の任務達成を労った。
パチンと司祭が指を鳴らすと、告会部屋の床はゆっくり静かに地面へと沈み始めた。
ズズズとゆっくり告会部屋の床は下がって行き、間も無くして最下層に到達する。
ガタンと床に降りた告会部屋。椅子の前にはひとつの大きな扉が現れゆっくりとその扉に手を掛け、開いていく。
「おっかえり~ ルカクン 待ってたよ~」
開けた途端、黒縁眼鏡をかけた長身の獣族の女性が仮面の代行者に飛び込みハグをしてきた。
「……あ…あー。ちょ、苦しいです アキハさん」
仮面を外した代行者、ルカはアキハと呼んだ眼鏡の女性の肩を掴み、体から引き剥がす。
仮面を外したルカは、男でありながらどことなく中性的な顔立ちをした白髪の少年であった。
「それで?どうだったかい!?ボクの自慢の変声器付仮面は!!」
「んー…バッチシでした」
「だろう?!そうだろう!?ハッハッハ!何せボクの作品だからね!いやぁボクってば、天&才?」
小瓶や謎の機械類の沢山着いた白衣を着たアキハはルカの背中をバシバシと叩いて高笑いをする。
愛想笑いでもしておこうと、あはは…と薄い笑顔をみせるルカ。にゃ~っと拳をにぎりしめるアキハの奥から1人の女性がゆっくり近づいてくる。
「此度の任務ご苦労だった。ルカ」
現れたエルフ族の女性は副ギルド長、リリガーノ・ラ・ロベリア。
「任侠組織、氷烈組組長直々の若頭暗殺依頼。よく達成したな」
…そう。これこそがギルドの裏仕事。決して表に出してはいけない、『一般の冒険者』には依頼出来ない任務を秘密裏に処理する、これが中央ギルド裏組織の仕事。
『代行者』の任務である。
今日も美しい受付嬢が冒険者たちを迎える。
ここは聖エストリル王国。
唯一神女神エストリルを崇める宗教国家でありながら自由と冒険を掲げる他種族国家でもある。
この王国の中央に位置するのが、中央ギルド。
ここには平民から果ては王族まで幅広く委嘱された任務が集っていて、この任務を達成し武勲を立てようと、今日も数多の冒険者たちが訪れる。
…だが、そんな任務の中に『一般の冒険者』には受託できない任務が存在する。
それが、異世界ギルドの裏仕事であるーーーー
ーーーー息を切らし裏路地を逃げ回る。後方から発砲された弾丸が右足を掠め、痛みに顔を歪めながらもひた走る。なんで俺が、こんな目に。そんなことを考えてももう遅い。なぜなら彼は、あの『代行者』に追われているのだから。
「クソったれェ!」
狭い路地に山積みになって置かれている空き樽を後方へ叩き払う。ガラゴロと転がる樽により塞がる道。逃亡者は追っ手の静止を確認しニヤリと笑う。へっなんだ、代行者ってのも大した事ねぇじゃねぇか。と、九死に一生を得たような気分…も束の間。
弾丸を掠めた右足が突然爆発した。
「ぐぅァあ!?!」
バランスを失い派手に壁に衝突する。全身を強打し、身動きが取れなくなる男。そこへカツ、コツと足音がゆっくりと近づいてくる。
やめろ、やめろ。近づいてくるな。
なんとか立ち上がろうとするも右足が動かない。必死にもがいて逃げようしても足音は段々と近づいてくる。
間も無くして裏路地に拡がっていた爆煙が晴れると、仮面と黒のローブを身にまとった代行者は銃口を男に向けて静かに見下ろしていた。
「な…何なんだよお前はァァァ!!」
焦りと恐怖。咄嗟に上級氷魔法『アイシクルランス』を無詠唱で唱え、代行者を攻撃する男。八本の氷槍が空中に現れ代行者へと放たれる。一本でも壁を貫通する威力を持つ氷槍は…
「…」
全弾命中。代行者の腹部へと完全に突き刺さり、男は勝利を確信する…。筈が、次の瞬間には代行者は何も無かったかのように男へと近づいてくる。1歩1歩、その足取りは乱れることなく。
「く…来るなッ…」
切り札の魔法が全く通用しなかった男の表情は絶望へと染まって行く。ここまでなのか。代行者とは、ここまでの強さなのか。
静かに歩み寄ってきた代行者は、男の額に銃を突きつけ、静かに語った。
「………任務、完了」
機械のように無機質で無性別的なその声は恐ろしい程に無感情であった。
「…あ、やだ…ぁ…」
パシュンと小さな発砲音と共に男の声は途切れ、裏路地は束の間の喧騒から解放された。
ーーー2時間後。
聖エストリル王国立カンパネラ聖堂内 第四 告会部屋にて。仮面とローブを身にまとった『代行者』は、その席に静かに座っていた。
「貴方が神に告白したい罪はなんですか」
カーテンで仕切られた小窓の奥から優しい声をした司祭が信者の罪を尋ねる。
代行者はトントントントンと小窓を四回ノックした後、
「………開けゴマ」
静かに謎の言葉を告げる。
「……………お疲れ様でした。下で副ギルド長がお待ちです」
代行者の謎の言葉、合言葉を受けた司祭は代行者の任務達成を労った。
パチンと司祭が指を鳴らすと、告会部屋の床はゆっくり静かに地面へと沈み始めた。
ズズズとゆっくり告会部屋の床は下がって行き、間も無くして最下層に到達する。
ガタンと床に降りた告会部屋。椅子の前にはひとつの大きな扉が現れゆっくりとその扉に手を掛け、開いていく。
「おっかえり~ ルカクン 待ってたよ~」
開けた途端、黒縁眼鏡をかけた長身の獣族の女性が仮面の代行者に飛び込みハグをしてきた。
「……あ…あー。ちょ、苦しいです アキハさん」
仮面を外した代行者、ルカはアキハと呼んだ眼鏡の女性の肩を掴み、体から引き剥がす。
仮面を外したルカは、男でありながらどことなく中性的な顔立ちをした白髪の少年であった。
「それで?どうだったかい!?ボクの自慢の変声器付仮面は!!」
「んー…バッチシでした」
「だろう?!そうだろう!?ハッハッハ!何せボクの作品だからね!いやぁボクってば、天&才?」
小瓶や謎の機械類の沢山着いた白衣を着たアキハはルカの背中をバシバシと叩いて高笑いをする。
愛想笑いでもしておこうと、あはは…と薄い笑顔をみせるルカ。にゃ~っと拳をにぎりしめるアキハの奥から1人の女性がゆっくり近づいてくる。
「此度の任務ご苦労だった。ルカ」
現れたエルフ族の女性は副ギルド長、リリガーノ・ラ・ロベリア。
「任侠組織、氷烈組組長直々の若頭暗殺依頼。よく達成したな」
…そう。これこそがギルドの裏仕事。決して表に出してはいけない、『一般の冒険者』には依頼出来ない任務を秘密裏に処理する、これが中央ギルド裏組織の仕事。
『代行者』の任務である。
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