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〜シンデレラガール〜
病弱なお姫様
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ベッドに寝ていると、『ガチャリ』と音がして部屋の扉が開いて誰かが入ってきた。その人は車椅子に座っていて私を見ると弱々しく笑った。
「良かった、気がついたんですね」
「あ……は……はい」
「ルナ、部屋から出て大丈夫なのか」
アルフレッドは心配そうに車椅子の少女に声をかけた。
「はい、お兄様今日は気分がいいんです」
「え? お兄様?」
「ああ、こちら妹のルナだよ」
「はじめましてティアラさん、お会いできて光栄です」
「い……いえ、こ……こちらこそ……すみません王女様なのに分からなくて……」
「はは、良いんですよ。一日中部屋にこもってばかりなので知らなくて当然です」
「え? そうなのですか?」
「ああ、妹は小さいときから体が弱くてね。だから公務にもほとんど顔を出していないんだ」
「そ……そうなんですか……、原因はわからないのですか?」
「いろいろな医者に見てもらったが、原因はわからないと言われたよ」
アルフレッドはそう言うと悔しそうに首を左右に降った。私は車椅子の少女を見た。顔が青白く手足が少し震えているのが見えたおそらくしびれているのだろう。何か?この症状を以前見たような気がしたが思い出せなかった。
◇
私はすっかり体調が良くなりアルフレッドと一緒に部屋を出て城の廊下を歩いていた。
私は不意にある部屋の前で立ち止まった。アルフレッドはいきなり立ち止まった私を見ていた。
「どうしたの? 何かあるの?」
「この部屋は誰の部屋ですか?」
「ああ、ルナの部屋だよ。それがどうかしたの?」
「部屋のドアを開けてもいいですか?」
「ああ、分かった」
アルフレッドは訝しげに私を見たが、部屋をノックして誰も居ないのを確認すると部屋のドアを開けた。ルナの部屋のドアを開けた瞬間私は病気の原因が分かったかもしれない。
私が感じたのは部屋に充満する匂いである。研究所で働いていた時に原油の成分を抽出していた時によくこの匂いを嗅いでいた。それは自分のように何時間もラボでこもっていて研究をしていた人にしか感じることのできない特殊な匂いでもあった。
その匂いの正体は硫化水素だった。このガスを吸い続けるといずれ手足がしびれて動けなくなり、最悪の場合死亡してしまう恐ろしいガスである。このガスの恐ろしいところはガス濃度が低い場合は腐卵臭がして気づくことができるが、逆にガス濃度が濃い場合は臭いがせず気が付きにくくなることである。そのためサイレントガスと呼ばれることもある。
部屋に入ると腐卵臭をかすかに感じることができた。よく温泉地に行くと臭う卵の腐った匂いである。あまり匂いが強くないのでおそらくはかなりの濃度であることが予想できた。これを吸い続けると人体に影響がでるだろうと思った。
私は硫化水素の出どころを探るべく部屋の中に入った。
部屋に入るとまだ日が出ているのも関わらず、窓のカーテンはすべて閉まり、真っ暗な部屋を明るくするためにランプが至るところに設置されていていた。
「まだ外は明るいのになぜカーテンを締め切っているの?」
「ルナは太陽の光が嫌いなんだ。光を浴びると体調が悪くなるんだ」
太陽光アレルギーなのかもしれない。たまにそういう人がいると本で読んだことがあった。太陽の光を浴びるとアレルギー症状が出てしまうと書いてあった。
私はランプに近づいた。すると匂いがしなくなった。つまりかなりの高濃度の硫化水素がランプから出ていると想定できる。
「このランプの燃料はどこから買っているの?」
「ウエスタン商会からだけど、それがどうかしたのかい?」
「一度採掘場所を見せてもらえないかしら」
アルフレッドは疑問に思いながらも大丈夫だと思う、と言ってくれた。私はランプの燃料を触ってみた。黒くネバネバした油を指で摘んで伸ばしているとチョコレートのように固まってしまった。私の予想は当たった。硫黄分を多く含んでいる原油は常温でチョコレートのように固まってしまう。おそらくこの硫黄分を多く含む原油をそのまま燃料にして燃やしていることで原油中の硫黄分が硫化水素となって部屋中に充満してルナの体調不良の原因になっていると思った。
普通原油はそのまま使用せず蒸留装置にかけてLPGなどのガス分とガソリン・灯油・軽油などの白油と重油などの黒油成分というように大まかに分けて使用するのが理想である。ランプの燃料には硫黄分をある程度取り除いた白油成分を使用することが望ましい。
このままランプを使用すると最悪ルナが死んでしまうかもしれないと考えた私はアルフレッドにルナの体調不良の原因を説明するとランプの使用をやめるように言った。アルフレッドは信じられないといった顔をしていたが、それで妹の体調が良くなるのならと言って協力してくれる事になった。
その後ルナの部屋をあとにした私はそのまま城の燃料が保存されている倉庫に行って、ランプに使用されていた原油を少し分けてもらって家路に着いた。
原油には色々な成分がたくさん詰まっている。原油を生成して成分を抽出してすれば安全にランプの燃料にも使用できるし、硫黄を抽出すればマッチなどにも利用できるので、一気に生活水準がアップする。私はこの原油を使ってまた人々の役に立つ製品を作ろうと思った。
「良かった、気がついたんですね」
「あ……は……はい」
「ルナ、部屋から出て大丈夫なのか」
アルフレッドは心配そうに車椅子の少女に声をかけた。
「はい、お兄様今日は気分がいいんです」
「え? お兄様?」
「ああ、こちら妹のルナだよ」
「はじめましてティアラさん、お会いできて光栄です」
「い……いえ、こ……こちらこそ……すみません王女様なのに分からなくて……」
「はは、良いんですよ。一日中部屋にこもってばかりなので知らなくて当然です」
「え? そうなのですか?」
「ああ、妹は小さいときから体が弱くてね。だから公務にもほとんど顔を出していないんだ」
「そ……そうなんですか……、原因はわからないのですか?」
「いろいろな医者に見てもらったが、原因はわからないと言われたよ」
アルフレッドはそう言うと悔しそうに首を左右に降った。私は車椅子の少女を見た。顔が青白く手足が少し震えているのが見えたおそらくしびれているのだろう。何か?この症状を以前見たような気がしたが思い出せなかった。
◇
私はすっかり体調が良くなりアルフレッドと一緒に部屋を出て城の廊下を歩いていた。
私は不意にある部屋の前で立ち止まった。アルフレッドはいきなり立ち止まった私を見ていた。
「どうしたの? 何かあるの?」
「この部屋は誰の部屋ですか?」
「ああ、ルナの部屋だよ。それがどうかしたの?」
「部屋のドアを開けてもいいですか?」
「ああ、分かった」
アルフレッドは訝しげに私を見たが、部屋をノックして誰も居ないのを確認すると部屋のドアを開けた。ルナの部屋のドアを開けた瞬間私は病気の原因が分かったかもしれない。
私が感じたのは部屋に充満する匂いである。研究所で働いていた時に原油の成分を抽出していた時によくこの匂いを嗅いでいた。それは自分のように何時間もラボでこもっていて研究をしていた人にしか感じることのできない特殊な匂いでもあった。
その匂いの正体は硫化水素だった。このガスを吸い続けるといずれ手足がしびれて動けなくなり、最悪の場合死亡してしまう恐ろしいガスである。このガスの恐ろしいところはガス濃度が低い場合は腐卵臭がして気づくことができるが、逆にガス濃度が濃い場合は臭いがせず気が付きにくくなることである。そのためサイレントガスと呼ばれることもある。
部屋に入ると腐卵臭をかすかに感じることができた。よく温泉地に行くと臭う卵の腐った匂いである。あまり匂いが強くないのでおそらくはかなりの濃度であることが予想できた。これを吸い続けると人体に影響がでるだろうと思った。
私は硫化水素の出どころを探るべく部屋の中に入った。
部屋に入るとまだ日が出ているのも関わらず、窓のカーテンはすべて閉まり、真っ暗な部屋を明るくするためにランプが至るところに設置されていていた。
「まだ外は明るいのになぜカーテンを締め切っているの?」
「ルナは太陽の光が嫌いなんだ。光を浴びると体調が悪くなるんだ」
太陽光アレルギーなのかもしれない。たまにそういう人がいると本で読んだことがあった。太陽の光を浴びるとアレルギー症状が出てしまうと書いてあった。
私はランプに近づいた。すると匂いがしなくなった。つまりかなりの高濃度の硫化水素がランプから出ていると想定できる。
「このランプの燃料はどこから買っているの?」
「ウエスタン商会からだけど、それがどうかしたのかい?」
「一度採掘場所を見せてもらえないかしら」
アルフレッドは疑問に思いながらも大丈夫だと思う、と言ってくれた。私はランプの燃料を触ってみた。黒くネバネバした油を指で摘んで伸ばしているとチョコレートのように固まってしまった。私の予想は当たった。硫黄分を多く含んでいる原油は常温でチョコレートのように固まってしまう。おそらくこの硫黄分を多く含む原油をそのまま燃料にして燃やしていることで原油中の硫黄分が硫化水素となって部屋中に充満してルナの体調不良の原因になっていると思った。
普通原油はそのまま使用せず蒸留装置にかけてLPGなどのガス分とガソリン・灯油・軽油などの白油と重油などの黒油成分というように大まかに分けて使用するのが理想である。ランプの燃料には硫黄分をある程度取り除いた白油成分を使用することが望ましい。
このままランプを使用すると最悪ルナが死んでしまうかもしれないと考えた私はアルフレッドにルナの体調不良の原因を説明するとランプの使用をやめるように言った。アルフレッドは信じられないといった顔をしていたが、それで妹の体調が良くなるのならと言って協力してくれる事になった。
その後ルナの部屋をあとにした私はそのまま城の燃料が保存されている倉庫に行って、ランプに使用されていた原油を少し分けてもらって家路に着いた。
原油には色々な成分がたくさん詰まっている。原油を生成して成分を抽出してすれば安全にランプの燃料にも使用できるし、硫黄を抽出すればマッチなどにも利用できるので、一気に生活水準がアップする。私はこの原油を使ってまた人々の役に立つ製品を作ろうと思った。
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