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最初に、この物語に描かれる『地球』はフィクションの舞台であり、現実の地球や実在の国々とは関係ありません。
===================
異世界に勇者として召喚される。
最近のアニメやラノベなどでよく扱われているテーマではあるが、まさか現実に起きるとは思ってもみなかった。
あれは学校帰り、突如足元に現れた魔方陣によって、気が付いたら神殿みたいな場所にいた。
何事かとパニックになりながらも目の前には見たこともないような金髪碧眼の美少女。
それも、これまた見たことがないような豪華なドレスを身にまとっており、見た瞬間にどこかのお姫様かと思った。
まぁ、実際にお姫様というやつで、話を聞くとその世界は魔王が居り人間と争っているために、俺という勇者を呼んだのだという典型であった。
そうして、約2年の月日を数多くの冒険の末に魔王と対峙したのだった。
「ララ!」
「任せて!!」
「今だ! トーヤ!!」
「おう、これで、終わりだぁ!!!!!!」
「グギャァァァァァッ!!」
魔王と対峙してまる3日、俺たちはついに魔王を討伐した。
「はぁ、な、長かったぁ!」
「やっと、終わったぁ!」
「はぁ、もうだめ……」
「3人とも今回復するね」
「ああ、悪いなミリア」
俺、魔導士のララ、槍使いのカンザス、神官でありながら弓使いのミリアの4人とも旅の途中で出会った大切で信頼できる仲間たち。
彼らが居たからこそ魔王を討伐できたといっても過言ではないだろう。
「ようやく終わったか、待ちわびたぞ。ほぉ、それが魔王の剣か、素晴らしいな」
「はいその通りでございます殿下」
命がけで戦っていた俺たちを無視するように素通りして、魔王が使っていた剣を手に取ろうとする男がいる。
こいつは、これでも俺を召喚した国アルキャンサス王国の第二王子で、1か月前に俺が魔王を討伐すると国に伝えたところ、なぜか同行してきたというわけだ。
それにしてもこの王子、本当に厄介で道中もわがまま放題、やりたい放題でとにかく俺たちの旅の邪魔ばかりだった。
それから王子は疲れ果てた俺たちを放置して魔王城の探索、魔王がため込んだと思われる宝を根こそぎ確保したところで帰還すると言い出し、何とか歩けるまでに回復していた俺たちも重い足取りで歩き出した。
歩くこと2時間弱、、魔王城からある程度離れたところで夕方となり今日は野営をすることに、ここでも王子は文句を言ってたが、こればかりはどうしようもなくしぶしぶ騎士たちが張った天幕に引っ込んでいったことで、俺たちもようやくひと息をついた。
「ほんと、あの王子には困ったもんだな」
「あははっ」
「うーん」
「まっ、仕方ねぇって」
俺以外は何とも言えない感じに答えるが、これは仕方ない。俺は異世界から召喚され、この後元の世界に帰る予定だが、この3人は王子の国の国民だからさすがに王子の悪口は言えないからな。
それから少し経ったのち俺たちもそれぞれ天幕に引っ込み眠りについたのだった。
どれだけ時間が経った頃だろうか、何やら急な浮遊感から目を覚ました。
何事かと思って目を開けるが、どういうわけか体が全く動かない。
それでも何とか周囲を確認すると、俺の脚やわきの下を誰かが持って運んでいることが分かった。
意味が分からず、とりあえず抵抗しようとするがやはり体が動かない。これはいったいどういうことだ。
そう思いながらもなすがままになっていると、今度はせーのと投げ落とされた。
そしてやってくるさらなる浮遊感……って、ちょっと待った。えっ、どういうこと、えっ!?
もはや意味が分からず混乱していると視界に入ってきたのは、こちらを見下ろしてほくそ笑む第二王子と騎士。
さらに体が回転して落ちる方向が見えて、愕然とする。
カンザス、ミリア、ララ!
そう、どうやら俺は崖に落とされたようだが、そのがけ下にはすでに仲間3人が血だらけの状態でそこにいた。
つまり、俺より先に3人は投げ落とされているみたいだ。
おいっ! これは、どういうことだよ!!
叫びたい気持ちがあるが、なぜか声も出ない。
この状況から考えて、何か毒か何かを盛られたとみていいと思う。
それにしても、俺たち4人は強い耐性を持っているから本来毒はおろか、このぐらいの高さから落とされたぐらいではどうにもならないはず。
でも、俺たちは魔王と3日間戦い続けたことで疲弊し、各種耐性が切れた状態となっている。
くそっ、あの野郎もしかしたら同行してきた理由はこれか、魔王を討伐したという功績を俺たちからかすめ取るつもりだったんだな。
ふざけやがってっ!!
底知れない怒りがこみあげてくるが、すでに地面と接触寸前、俺は3人に向かって手を伸ばし覚悟した瞬間であった。
突如光が見えたと思ったら、次の瞬間地面とキスしていた。
よくわからないがそのまま気を失ったのだった。
そうして、次に気が付いたとき、目の前には真っ白な天井が見えた。
「登也! ああ、良かった目を覚ましたのね」
「か、母さん?」
目を覚ますとふいに心配そうに見つめる母さんが居た。
「ここは?」
「ここはお母さんが務める病院よ。あんたが運ばれてきてほんとびっくりしたのよ」
「そ、そうなんだ」
母さんによると、俺は召喚された場所から3つぐらい隣にある小さな路地に倒れていたところを、近くを通りかかった女子大生に発見され通報。その後救急車によって母さんが務めるこの病院に運ばれた。
そして、たまたま救急に応援に来ていた母さんが救急隊から俺を受け取ったということらしい。
まさか行方不明の息子が搬送されてきたんだからそれはびっくりするよな。
ちなみに俺が行方不明だったのは2年で、向こうで過ごした時間と同じであった。
また、俺の状態だけどいくらかのけがなどがあり、体内から未知の毒物のようなものが検出されたことで何らかの事件に巻き込まれた可能性があるとのことで、警察から事情聴取を受けることになった。
といっても、異世界に召喚されて魔王と戦い、王子の裏切りで殺されかけたとは言えずどうしようかと思ったが、だからといって特にストーリーは思いつかないので、結局正直に話した。
尤も、警察は一切信じず俺が何らかの薬でもやっているんじゃないかと、夢を見ていたのだと断じて無駄な捜査を始めてしまった。
ちなみに、同じく話を聞いていた母さんは信じてくれ、他にもどこからか話を聞きつけたマスコミが食いついてきたことで、回復後何度かテレビに出る羽目となってしまったのは勘弁してほしかったよな。
まあ、こうして騒がしい時を過ごしながらもやはり思い出すのは、ともに戦った仲間たち、カンザス、ララ、ミリアである。彼らを助けることもできず、俺だけがこうして生きている。この事実が時々無性につらくなる。
それでも、何とか生き続けること2年、マスコミの騒動も収まり、のんびりと過ごしていたそんな毎日であった。
俺は召喚されたとき高校2年であったが、高校は退学扱いとなっており復学はできないという。また、今更高卒資格を取って大学に行ったところで何を勉強するのかという問題もあり、すぐに就職しようとした。
しかし、マスコミが騒ぎ立てたことで顔と名前が知られており、夢ばかり語る男という認識になってしまいどこも雇ってはくれなかった。
結果として無職、バイトすらできない始末であった。では、どうやって生活していたのかというと、仕方なしに母さんに頼るしかなかった。
でも、そんなときであった。
母さんが倒れたと、病院から知らせが届いた。
そして、俺が病院に駆けつけて少ししてからというもので、母さんが死んだという信じられない知らせが……
あまりに、あまりに突然のことで意味が分からないし、何より母さんと話すことすらできなかった。
最後に話したのは朝、いつもの簡単な会話をしただけだった。
母さんはもともと天涯孤独の身で、父さんは俺が幼いころに病死、その両親である祖父母も近い時期に亡くなっていて、それぞれ兄弟もいない。つまり、現在の俺には親戚すらいないまさに天涯孤独となった。
といっても俺も今や20歳と大人なので問題はないが、就職できない俺の生活が難しいという問題だ。
そこで、苦肉の策として異世界から持ち込んでいる宝石があるのでこれを換金して生活をすることにしたのだった。
そんな生活をすること1年が経過したわけだが、この間母さんと過ごしたアパートを引き払い田舎に引っ込んだ。
そこは、父さんの実家があったという地域で、子供ころに遊びに来たことがあった。尤も父さんや祖父母が死んだことで来ることはなくなったが。
さて、それはともかくそんな俺に突然の訪問者が現れた。
「えっと、何か?」
「多々良登也さんですね」
「えっと、そうだけど」
「海外での宝石窃盗容疑により逮捕状が出ています。国際的ブランドからの被害届を受け、これから逮捕するとともに家宅捜索を行います」
「はっ?」
訪問者は警察が数名、先頭に立つ人物がそう言って何やら書類を見せてきたが、それはドラマなどでよく見かけるものではあるが、全く身に覚えがないので意味が分からない。
それから、意味の分からないまま逮捕され連行、取り調べを受けたのち件の国へ送られることに、というか取り調べも行ったが、俺はこれまでの人生で海外なんて行ったことはない。まさか初の海外が犯罪者として送られることになるとは夢にも思っていなかった。
そして、その国でも取り調べを受け裁判となったわけだが、これがまためちゃくちゃだった。俺は無実だと何度も言っても信じず、ではどうやって手に入れたとなれば異世界というがこれも信じない。結局俺が盗んだのだという結果となり、俺が全く反省していないということで窃盗としては最大の10年を食らうことになった。
というかあいつら最初から俺が犯人であると決めつけていやがった。これは明らかに公正な裁判じゃないだろ。
その後、俺は異議申し立てとして幾度か裁判を起こした。そのたびに俺に付く現地の弁護士は全く使えず、大使館を通して本国の国際弁護士を雇い頑張ってもらったがやはり異世界ということで俺のものであるという証拠がないという。
逆に向こうのものであるという証拠が大量に出されている始末だ。もちろん俺からしたらその証拠はすべて偽造、でも相手は国際的にも有名なブランドであり、この国を代表する大企業、そんな相手に俺個人ができることなんてない。
そうして、3年の月日が流れた。
「おらっよ」
「ごほっ」
俺は今、刑務所の中で屈強な男に殴られている。
どうして、殴られているのか、その理由は俺が日本人だからだ。より正確にはアジア人だからだろう、つまり、単純な人種差別ってやつだな。なにせ俺は奴らに対して体が小さいからいじめの対象として持って来いだったんだろう。
そして、このいじめを見た居る看守はというと特に何もしない。むしろ俺が反抗するとなぜか俺を懲罰房に押し込めやがった。
まあ、こうして手厚くもてなされている俺ではあるが、最近は看守も俺に対する暴力に加わってきた。
ちなみに、俺がどうしていくら屈強とはいえ普通の人間の攻撃にダメージを受けているのかというと、これは単に異世界でこの世界に戻って以降異世界で手に入れたスキルやステータスをオフにしていたというだけ、なにせこの世界では役に立つどころか面倒ごとになりそうだったからだ。
「ぎゃはははははっ」
俺を警棒で殴った看守は汚く笑っている。その姿を目にした瞬間、俺の中の何かがブチッという音を立てて切れた。
よくキレることを表現するのに何かが切れる音を使うが、まさか本当に聞こえてくるとは思はなかったが、確かに俺は今キレた。
そして、その瞬間俺の中にどす黒い何かが爆誕、一気に俺の心を満たしていく。
その結果、俺は先ほど警棒で殴ってきた看守の頭部をがチリとつかむ。
「なっ、何をする。はな……」
最後まで言葉を話すことはできなかった。それというのも俺によってその頭部が握りつぶされたからだ。
「えっ?」
何が起きたのか、意味の分かっていない屈強な囚人、今度はそいつの頬めがけて軽く裏拳を放つ。
すると、あり得ないほど頭部が回転をはじめスポンという間抜けな感じで首が回転しながら天井めがけて飛んでいき、そのまま天井にぶつかり弾けた。
「『ヘル・フレア』」
先ほどまで俺を囲っていた連中が逃げ出し始めたので、炎系上級魔法『ヘル・フレア』を発動。これは、名前に地獄とあるように、この地上にあるどんな炎よりも高温になる地獄の業火。
つまり、これに触れたものは燃えるのではなく、蒸発する魔法である。
それを俺を中心に発動したので次の瞬間には俺の周囲200mは何もない空間となっていた。
「さて、次は……」
==========================
次回は1/10予定となっています
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最初に、この物語に描かれる『地球』はフィクションの舞台であり、現実の地球や実在の国々とは関係ありません。
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異世界に勇者として召喚される。
最近のアニメやラノベなどでよく扱われているテーマではあるが、まさか現実に起きるとは思ってもみなかった。
あれは学校帰り、突如足元に現れた魔方陣によって、気が付いたら神殿みたいな場所にいた。
何事かとパニックになりながらも目の前には見たこともないような金髪碧眼の美少女。
それも、これまた見たことがないような豪華なドレスを身にまとっており、見た瞬間にどこかのお姫様かと思った。
まぁ、実際にお姫様というやつで、話を聞くとその世界は魔王が居り人間と争っているために、俺という勇者を呼んだのだという典型であった。
そうして、約2年の月日を数多くの冒険の末に魔王と対峙したのだった。
「ララ!」
「任せて!!」
「今だ! トーヤ!!」
「おう、これで、終わりだぁ!!!!!!」
「グギャァァァァァッ!!」
魔王と対峙してまる3日、俺たちはついに魔王を討伐した。
「はぁ、な、長かったぁ!」
「やっと、終わったぁ!」
「はぁ、もうだめ……」
「3人とも今回復するね」
「ああ、悪いなミリア」
俺、魔導士のララ、槍使いのカンザス、神官でありながら弓使いのミリアの4人とも旅の途中で出会った大切で信頼できる仲間たち。
彼らが居たからこそ魔王を討伐できたといっても過言ではないだろう。
「ようやく終わったか、待ちわびたぞ。ほぉ、それが魔王の剣か、素晴らしいな」
「はいその通りでございます殿下」
命がけで戦っていた俺たちを無視するように素通りして、魔王が使っていた剣を手に取ろうとする男がいる。
こいつは、これでも俺を召喚した国アルキャンサス王国の第二王子で、1か月前に俺が魔王を討伐すると国に伝えたところ、なぜか同行してきたというわけだ。
それにしてもこの王子、本当に厄介で道中もわがまま放題、やりたい放題でとにかく俺たちの旅の邪魔ばかりだった。
それから王子は疲れ果てた俺たちを放置して魔王城の探索、魔王がため込んだと思われる宝を根こそぎ確保したところで帰還すると言い出し、何とか歩けるまでに回復していた俺たちも重い足取りで歩き出した。
歩くこと2時間弱、、魔王城からある程度離れたところで夕方となり今日は野営をすることに、ここでも王子は文句を言ってたが、こればかりはどうしようもなくしぶしぶ騎士たちが張った天幕に引っ込んでいったことで、俺たちもようやくひと息をついた。
「ほんと、あの王子には困ったもんだな」
「あははっ」
「うーん」
「まっ、仕方ねぇって」
俺以外は何とも言えない感じに答えるが、これは仕方ない。俺は異世界から召喚され、この後元の世界に帰る予定だが、この3人は王子の国の国民だからさすがに王子の悪口は言えないからな。
それから少し経ったのち俺たちもそれぞれ天幕に引っ込み眠りについたのだった。
どれだけ時間が経った頃だろうか、何やら急な浮遊感から目を覚ました。
何事かと思って目を開けるが、どういうわけか体が全く動かない。
それでも何とか周囲を確認すると、俺の脚やわきの下を誰かが持って運んでいることが分かった。
意味が分からず、とりあえず抵抗しようとするがやはり体が動かない。これはいったいどういうことだ。
そう思いながらもなすがままになっていると、今度はせーのと投げ落とされた。
そしてやってくるさらなる浮遊感……って、ちょっと待った。えっ、どういうこと、えっ!?
もはや意味が分からず混乱していると視界に入ってきたのは、こちらを見下ろしてほくそ笑む第二王子と騎士。
さらに体が回転して落ちる方向が見えて、愕然とする。
カンザス、ミリア、ララ!
そう、どうやら俺は崖に落とされたようだが、そのがけ下にはすでに仲間3人が血だらけの状態でそこにいた。
つまり、俺より先に3人は投げ落とされているみたいだ。
おいっ! これは、どういうことだよ!!
叫びたい気持ちがあるが、なぜか声も出ない。
この状況から考えて、何か毒か何かを盛られたとみていいと思う。
それにしても、俺たち4人は強い耐性を持っているから本来毒はおろか、このぐらいの高さから落とされたぐらいではどうにもならないはず。
でも、俺たちは魔王と3日間戦い続けたことで疲弊し、各種耐性が切れた状態となっている。
くそっ、あの野郎もしかしたら同行してきた理由はこれか、魔王を討伐したという功績を俺たちからかすめ取るつもりだったんだな。
ふざけやがってっ!!
底知れない怒りがこみあげてくるが、すでに地面と接触寸前、俺は3人に向かって手を伸ばし覚悟した瞬間であった。
突如光が見えたと思ったら、次の瞬間地面とキスしていた。
よくわからないがそのまま気を失ったのだった。
そうして、次に気が付いたとき、目の前には真っ白な天井が見えた。
「登也! ああ、良かった目を覚ましたのね」
「か、母さん?」
目を覚ますとふいに心配そうに見つめる母さんが居た。
「ここは?」
「ここはお母さんが務める病院よ。あんたが運ばれてきてほんとびっくりしたのよ」
「そ、そうなんだ」
母さんによると、俺は召喚された場所から3つぐらい隣にある小さな路地に倒れていたところを、近くを通りかかった女子大生に発見され通報。その後救急車によって母さんが務めるこの病院に運ばれた。
そして、たまたま救急に応援に来ていた母さんが救急隊から俺を受け取ったということらしい。
まさか行方不明の息子が搬送されてきたんだからそれはびっくりするよな。
ちなみに俺が行方不明だったのは2年で、向こうで過ごした時間と同じであった。
また、俺の状態だけどいくらかのけがなどがあり、体内から未知の毒物のようなものが検出されたことで何らかの事件に巻き込まれた可能性があるとのことで、警察から事情聴取を受けることになった。
といっても、異世界に召喚されて魔王と戦い、王子の裏切りで殺されかけたとは言えずどうしようかと思ったが、だからといって特にストーリーは思いつかないので、結局正直に話した。
尤も、警察は一切信じず俺が何らかの薬でもやっているんじゃないかと、夢を見ていたのだと断じて無駄な捜査を始めてしまった。
ちなみに、同じく話を聞いていた母さんは信じてくれ、他にもどこからか話を聞きつけたマスコミが食いついてきたことで、回復後何度かテレビに出る羽目となってしまったのは勘弁してほしかったよな。
まあ、こうして騒がしい時を過ごしながらもやはり思い出すのは、ともに戦った仲間たち、カンザス、ララ、ミリアである。彼らを助けることもできず、俺だけがこうして生きている。この事実が時々無性につらくなる。
それでも、何とか生き続けること2年、マスコミの騒動も収まり、のんびりと過ごしていたそんな毎日であった。
俺は召喚されたとき高校2年であったが、高校は退学扱いとなっており復学はできないという。また、今更高卒資格を取って大学に行ったところで何を勉強するのかという問題もあり、すぐに就職しようとした。
しかし、マスコミが騒ぎ立てたことで顔と名前が知られており、夢ばかり語る男という認識になってしまいどこも雇ってはくれなかった。
結果として無職、バイトすらできない始末であった。では、どうやって生活していたのかというと、仕方なしに母さんに頼るしかなかった。
でも、そんなときであった。
母さんが倒れたと、病院から知らせが届いた。
そして、俺が病院に駆けつけて少ししてからというもので、母さんが死んだという信じられない知らせが……
あまりに、あまりに突然のことで意味が分からないし、何より母さんと話すことすらできなかった。
最後に話したのは朝、いつもの簡単な会話をしただけだった。
母さんはもともと天涯孤独の身で、父さんは俺が幼いころに病死、その両親である祖父母も近い時期に亡くなっていて、それぞれ兄弟もいない。つまり、現在の俺には親戚すらいないまさに天涯孤独となった。
といっても俺も今や20歳と大人なので問題はないが、就職できない俺の生活が難しいという問題だ。
そこで、苦肉の策として異世界から持ち込んでいる宝石があるのでこれを換金して生活をすることにしたのだった。
そんな生活をすること1年が経過したわけだが、この間母さんと過ごしたアパートを引き払い田舎に引っ込んだ。
そこは、父さんの実家があったという地域で、子供ころに遊びに来たことがあった。尤も父さんや祖父母が死んだことで来ることはなくなったが。
さて、それはともかくそんな俺に突然の訪問者が現れた。
「えっと、何か?」
「多々良登也さんですね」
「えっと、そうだけど」
「海外での宝石窃盗容疑により逮捕状が出ています。国際的ブランドからの被害届を受け、これから逮捕するとともに家宅捜索を行います」
「はっ?」
訪問者は警察が数名、先頭に立つ人物がそう言って何やら書類を見せてきたが、それはドラマなどでよく見かけるものではあるが、全く身に覚えがないので意味が分からない。
それから、意味の分からないまま逮捕され連行、取り調べを受けたのち件の国へ送られることに、というか取り調べも行ったが、俺はこれまでの人生で海外なんて行ったことはない。まさか初の海外が犯罪者として送られることになるとは夢にも思っていなかった。
そして、その国でも取り調べを受け裁判となったわけだが、これがまためちゃくちゃだった。俺は無実だと何度も言っても信じず、ではどうやって手に入れたとなれば異世界というがこれも信じない。結局俺が盗んだのだという結果となり、俺が全く反省していないということで窃盗としては最大の10年を食らうことになった。
というかあいつら最初から俺が犯人であると決めつけていやがった。これは明らかに公正な裁判じゃないだろ。
その後、俺は異議申し立てとして幾度か裁判を起こした。そのたびに俺に付く現地の弁護士は全く使えず、大使館を通して本国の国際弁護士を雇い頑張ってもらったがやはり異世界ということで俺のものであるという証拠がないという。
逆に向こうのものであるという証拠が大量に出されている始末だ。もちろん俺からしたらその証拠はすべて偽造、でも相手は国際的にも有名なブランドであり、この国を代表する大企業、そんな相手に俺個人ができることなんてない。
そうして、3年の月日が流れた。
「おらっよ」
「ごほっ」
俺は今、刑務所の中で屈強な男に殴られている。
どうして、殴られているのか、その理由は俺が日本人だからだ。より正確にはアジア人だからだろう、つまり、単純な人種差別ってやつだな。なにせ俺は奴らに対して体が小さいからいじめの対象として持って来いだったんだろう。
そして、このいじめを見た居る看守はというと特に何もしない。むしろ俺が反抗するとなぜか俺を懲罰房に押し込めやがった。
まあ、こうして手厚くもてなされている俺ではあるが、最近は看守も俺に対する暴力に加わってきた。
ちなみに、俺がどうしていくら屈強とはいえ普通の人間の攻撃にダメージを受けているのかというと、これは単に異世界でこの世界に戻って以降異世界で手に入れたスキルやステータスをオフにしていたというだけ、なにせこの世界では役に立つどころか面倒ごとになりそうだったからだ。
「ぎゃはははははっ」
俺を警棒で殴った看守は汚く笑っている。その姿を目にした瞬間、俺の中の何かがブチッという音を立てて切れた。
よくキレることを表現するのに何かが切れる音を使うが、まさか本当に聞こえてくるとは思はなかったが、確かに俺は今キレた。
そして、その瞬間俺の中にどす黒い何かが爆誕、一気に俺の心を満たしていく。
その結果、俺は先ほど警棒で殴ってきた看守の頭部をがチリとつかむ。
「なっ、何をする。はな……」
最後まで言葉を話すことはできなかった。それというのも俺によってその頭部が握りつぶされたからだ。
「えっ?」
何が起きたのか、意味の分かっていない屈強な囚人、今度はそいつの頬めがけて軽く裏拳を放つ。
すると、あり得ないほど頭部が回転をはじめスポンという間抜けな感じで首が回転しながら天井めがけて飛んでいき、そのまま天井にぶつかり弾けた。
「『ヘル・フレア』」
先ほどまで俺を囲っていた連中が逃げ出し始めたので、炎系上級魔法『ヘル・フレア』を発動。これは、名前に地獄とあるように、この地上にあるどんな炎よりも高温になる地獄の業火。
つまり、これに触れたものは燃えるのではなく、蒸発する魔法である。
それを俺を中心に発動したので次の瞬間には俺の周囲200mは何もない空間となっていた。
「さて、次は……」
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次回は1/10予定となっています
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