若い聖女が現れたから私はお役御免！？それならこっちから婚約破棄します！ ～今更私の力に気づいて戻ってきてと言ってももう遅いです～

遅刻してきたフィリス

「はぁはぁ……！セーフ！」
滑り込むように教室に入り、私は息を整える。
チラッと壁に掛かっている時計を見れば、ホームルーム開始のチャイムが鳴る三十分前だった。
「あれ……？確か部屋を出た時は遅刻ギリギリの時間だったような……」
首を傾げながら、私は自分の席へと移動する。
どうやら、あの時は寝ぼけていたようで時計を見間違えたのかもしれない。
ふと、隣の席を見るといつもこの時間にいるはずのフィリスがいない。
私は不思議に思い、クラスメイトの子にフィリスは？と聞いてみたけれど、まだ来てないと返され
高木さん何か知らない？とまで言われてしまった。
私は首を横に振り、何も分からない事を伝える。
するとそのクラスメイトは、そっか……と少し残念そうな表情を浮かべた後
そろそろ先生が来るから席に着かないと……と言って席に着く。
私も慌てて自分の席に座ったけれど、未だにフィリスが来ていないのが気がかりだった。
「フィリス……どうしちゃったんだろ……」
*******
フィリスが来ないまま、朝のホームルームは終わり
クラスメイト達は、授業の準備をしだした。
もしかしたら、体調を崩したのかもしれない……放課後にフィリスの様子を見に行こう。
そんな事を考えながら、私も授業の準備を始めた。
授業開始を知らせるチャイムと共に、先生が現れ授業が始まる。
フィリスがいないまま、いつも通りの授業が進められていく。
お昼休みに一度連絡してみよう、そう思ったその時だった。
教室のドアが勢いよく開き、息を切らしたフィリスが立っていた。
フィリスの姿に、私は驚き立ち上がる。
先生やクラスメイト達も驚いた様子で、フィリスを見ていた。
「申し訳ありません……その、寝坊をしてしまって……」
そう言いながら、フィリスは先生に頭を下げる。
その様子を見た先生は慌てて、頭を上げさせ大丈夫だと言い自分の席に座りなさい。
とフィリスに伝える。
それから、いつもの様に授業が開始されたが……私はフィリスが心配で仕方がなかった。
*******
「フィリス……！」
「沙羅……おはようございます……」
「おはよう……ねぇ、どうして今日遅刻なんか……」
授業が終わり、私は隣のフィリスに声をかける。
遅刻なんて珍しい、何かあったの？と、するとフィリスはただ寝坊しただけ、と答える。
「昨日色々あったでしょう？それで、少し疲れてしまったみたい、です」
そう言って苦笑いを浮かべるフィリスに私は、そっか……と返事を返して
お昼にまたお話聞かせて、というとフィリスも、分かりました。
と返事をして次の授業の準備をし始める、遅刻はびっくりしたけど
フィリスに何かあった訳じゃ無さそうで、少しだけ安心した
確かに、昨日色々やったわけだし、疲れて動けなかったって言うのは
私にもわかるから。
そんな事を考えながら、私は次の授業の用意を進める。
そして、迎えたお昼休み……私達は中庭のベンチでご飯を食べる事になり ベンチに座りながら、お弁当を食べ始めた。