消えた日常

Scottie

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非日常

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僕の名前は高石トオル。私立駿河丘高校の1年生だ。この学校は生徒もそこそこいる普通の学校だ。だけど、入学してからというもの、友達も少なく、冴えない日々を過ごしている。
「こんな日常はつまらない。」
ある日の教室、僕はこんな事を呟いた。
「はぁ?どうした?急にw」
そう言って僕の席に振り返るのは僕の数少ない友達の飯島カズマ。クラスの人気者で僕とは大違いだ。本当に羨ましい。
「毎日毎日、ただ学校に来て勉強して帰るだけの生活は退屈なんだよ。漫画やアニメのような退屈しない非日常を送りたいんだよ俺は。」
そう言うとカズマは呆れた顔で
「まだそんな事言ってんのかよ、いい加減諦めろ。そんな世の中上手くいく訳がないんだよ。」
と言って、溜息をついた。
だけどまさかこんな事になるとはこの時まだ誰も知る由もなかった。

午前中の授業が終わって昼食をとろうとした時だった。突然、隣のクラスから悲鳴が聞こえた。
その時
教室に血だらけの男が姿を現した。その男の腕には噛みちぎられた痕があり、骨が露出していた。
「うわぁぁあああ!!!!」
教室全体がパニック状態となり、クラスの生徒が一斉に教室から廊下へ飛び出した。
僕は急いで外に飛び出したが、校庭には血まみれの生徒達で溢れかえっていた。
「!!!!」
だけど様子がおかしい。首の骨が折れている人もいれば、内蔵が飛び出してしまっていて、引きずっている人もいる。
大体予想はできた。 映画や漫画によくある「アンデット」つまり、今ここは、ウイルスによってゾンビとなった奴に支配されようとしている。
「嘘、、、だろ。」
いや、でも、目の前の事は、現実だ。これは夢でもなければ妄想でもない。
本当に訪れた非日常。今まで望んできたもの。僕は笑った。笑うしかなかった。
「まさかこんな事になるなんて」そんな事を言っていても仕方がない。とりあえず、まずは武器を手に入れようと思い、体育館に向かって走った。
体育館は幸運にも奴らの姿は無かった。校庭には奴らと逃げまどう生徒が見える。体育館は校庭よりも上の方にあるので、ここからなら見通しも良い。その時、僕を呼ぶ声が聞こえた。カズマだ。
「おーい、お前も無事か、良かった。あとのみんなは、、、、。」
そう言ってカズマは下を向いて
「チクショウ、何なんだよ!何でこんな事になったんだよ!!」
涙を流しながら壁を力一杯殴った。手から血が流れている。
僕は何も言えなかった。もしかしたら自分があんな事を望んだばっかりに、、、そう思うと、胸の辺りがえぐられるような、嫌な感覚が込み上げてくる。
「トオル、とりあえず携帯で、今日本はどうなっているのか調べてくれ。俺は何か武器になるようなものを探す。」
「分かった。頼んだ。」
そう言って、倉庫の中にカズマが武器を探している間に、携帯でニュースを調べた。
[世界で謎のウイルステロ発生!!被害状況は現在確認中]
どうやら今海外でも同じことが起こっているらしい。詳しい事はまだ分かっていないらしい。ついでに、両親に電話をかけてみたが、繋がらない。
「おーい、トオルー、どうだ?何か分かったか?」
カズマが戻ってきた。
「いや、何も分かってないらしい。そして、電話が繋がらない。」
「そうか、分かった。とりあえず武器だ。」
そう言って、カズマは俺に斧を渡した。誰だよ、体育館に斧なんて置いてたやつは…。まぁ場合が場合だ。使える物は使おう。
カズマは木刀を選んだらしい。カズマは剣道二段を持っているので、カズマなら木刀だな。いい選択だ。
「よし、行くか。」
カズマが歩き出し、僕もそれに続く。
「どこへ行くんだ?」
「俺の家、食糧もそこそこあるし、ソーラーパネルで電気も多少はなんとかなる。」
「分かった。」
そう言っていると前の向こう側から、奴らが近づいてきている。
「いくぞ!!」
カズマの掛け声と同時に走り出した。目の前にいる奴の頭にめがけて、斧を振り下ろした。
「グシャ!!」
ウヴゥと唸り声をあげて、倒れていく。カズマも木刀で奴らの頭を破壊しながら、門に向かって走る。
「うおおぉぉおおおお!!!」
とにかく目の前の奴らを殺しながら、必死に走った。カズマの家は学校から割と近いので、すぐについた。相変わらず外は奴らが歩きまわっている。
「これでしばらくは安心だな」
カズマがそう言って、リビングに寝そべっている。見たところ、まだカズマの両親は外に出かけているらしい。
「お前の親大丈夫か?電話繋がらないから心配だな。」
「そんなのおたがいさまだよ。信じるしかない。」
「それもそうだな、信じるしかない。」そう言って僕は横になって目を閉じた。
これからいつまで生きられるのか、どこまでこんな地獄が続くのか、非日常を望んでいた頃の自分がとても情けない。だけど信じるしかない。どんなに愚かでも、どんなに今が過酷でも。やるしかない。信じるしかない。
やってやろうじゃないか、やれるとこまで。
僕は静かに祈った。
「もとの日常が戻ってきますように。」








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