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副団長にはどうやら秘密が沢山あるようです
17 副団長には秘密が沢山あります
翌日の午後。
コンコン——ノックの音が響く。
執務室に団員たちが打ち合わせにやって来た。
本来だとルカが一人で行う予定だったのだが、早めに用事を終わらせて帰って来たバルナバーシュも一緒だ。
「おう。入って来い」
団長の許可を得て、ゾロゾロと男たちが執務室の中へと入って来る。
「明後日からの任務について詳しく説明する。バルトロメイ、ヤン、カレル、ベドジフ、お前たち四人はホリスキーから夜光石を運ぶ商人たちの護衛に当たってもらう」
こうしてバルナバーシュが団員たちに話をしている間も、二対の目がじーーーっとルカを観察している。
昨夜、男娼街でルカを口説いた団員の疑いの視線が痛い。
(でもこの顔を見たら、さすがに同一人物とは思わないだろ)
朝からバッチリ三十四の地味なおっさんの顔を作って来たので、ルカはバレない自信があった。
声だって副団長の時は喋り方を変え声色も硬いモノにしている。
吟遊詩人にとってはこんなもの朝飯前だ。
そしてもう一人、玄関で鉢合わせした熊男が難しい顔をしてこちらを見ている。
昨夜はバルナバーシュの肩に担がれていて半ケツ状態になっていた所を目撃された。
きっと熊男にはゲルトの力作の下着が見えていたはずだ。
バルナバーシュは適当に胡麻化していたが、たぶんこの熊男も「あの男はもしかしたら、副団長だったのではないか?」と疑っている。
副団長を目の当たりにした熊男の頭の中は、たぶん今こんな感じだ。
団長と同じ二階の住人で、担いでいた男と同じ髪の色をしている。背格好も同じだ。
だが、こんな地味で堅物なおっさんがあんなパンツを穿くわけがない。
以前にも馬鹿弟子のせいで、この男にパンツを拾われたことがあるが、それがルカの物だとは全く思ってもいなかった。
(大丈夫、バレるはずがねえ)
「おい、お前たちさっきから俺が喋ってるのによそ見しやがって、やる気あんのかっ!」
バルナバーシュの一喝で、二人の視線がルカから逸らされる。
「——では今から出発の準備をして、明日の夕方には現場に到着するように」
打ち合わせが終わり団員たちは一礼し退室すると、執務室はいつも通りバルナバーシュと二人っきりとなった。
「やっぱり、あの二人怪しんでましたね。まあこの顔見て首を捻ってましたけど」
ルカは先程の二人の煮えきれない顔を思い出し、笑いを零す。
「あいつらもまだまだ青いな。面の皮一枚で人を判断するからコロッと騙されるんだ」
年長者の余裕を見せて、バルナバーシュは片方だけ口角を上げて笑う。
「ああ、なるほど……団長様は顔じゃなくて尻で判断するんですね」
十数年一緒にいて、昨夜初めて知った男の性癖を思い出し軽口を叩く。
「お前な……絶対、あいつらの前でサーコートは脱ぐんじゃねえぞ。顔は騙せても、尻は騙せないからな」
どうやらバルナバーシュは本気でそう思っているようだ。
(この、尻フェチめ……)
力説する男を横目で眇めると、ルカーシュは溜まっている書類の処理に戻った。
室内にはカサカサと紙の音が響き、開けられた窓からは馬丁の声が聞こえる。
『おいっコラッ!? ……帽子を取るんじゃねえッ!』
厩舎で作業をしている馬丁の帽子を馬が咥えて投げたのだろう。
「あの馬鹿馬め……飼い主の躾がなってねえな……」
すぐに犯人がわかったバルナバーシュがぼそりと呟く。
「馬鹿な子ほど可愛いもんです。それは弟子にも言えてますけどね」
ルカはバルナバーシュの方を見てニヤリと笑った。
いつも通りの穏やかな午後だ。
「おい、運び屋から仕事が来てるぞ」
バルナバーシュが仏頂面をして書類の山から一つの封筒をルカに差し出す。
「……面倒なものじゃないといいんですけど」
いつもこの仕事は、護衛の依頼の態を装いやって来る。
「俺だって本当は行かせたくねえよ。あいつお前のことずっと狙ってるだろ?」
「でも仕方ないでしょ、異国人が副団長になるための条件だったんですから。言っておきますが、団長が勘繰っているような関係はあの人とは一切ありませんから」
リーパ護衛団は先代王の意向によって創立された。
あくまでも私設だが王の意向なので、国にも色々とお伺いを立てないとならない。
異国人であるルカが副団長になる時にも、ある条件を飲まされた。
それが、この仕事だ。
不定期にやって来る依頼は、危険なものが多い。
『運び屋』と呼ばれる男は、限りなく怪しいものでも金さえ積めばなんでも運ぶ。
だから常に危険が伴った。
そんな人物の護衛をルカは専属で請け負っている。
だが本当の仕事はそれではない。
話せば長くなるので、割愛するが——
そう、副団長は人に言えない秘密が沢山あるのだ。
『END』
===============
本編はこちらで終了ですが、明日からはこのまま続けて『副団長の秘密のお仕事』を連載していきます
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