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ゴロツキと要心棒
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「おーい!アリスちゃーん!ビール3つー!」
「はーい!」
今日は忙しいな、常連客に混じって新規の客が多い。
「こっちにもビールをくれ」
「はーい!ちょっと待っててくださいねー!」
はぁ、つまらない人生だ。
6才の頃に私はこの酒場兼宿屋、小山羊亭に口減らしに売られた。
最初は親を恨んだ。
だけど、食うにも困るぐらいだったから仕方なかったんだろう。
今はそんな風に思っている。
幸いにここのマスターはとてもいい人で、奴隷のように働かされる事もないし週一回は休みももらえるし、おこずかい程度だが給料ももらえる。
休みもなく働かされて給料もなく、最悪、夜は泊まりの客を相手に売られる。
そんな話はざらにある。
だから私は恵まれている方なのだ。
だけどこのままここで一生を終えるのかと思うと気が滅入る。
本当は色んな所を旅したい。
叶わぬ夢なのだろうか?
はぁ、そんなことを考えながらそれでも笑顔で働くのだ!
「ヨイショ」
そう言ってカウンターから大ジョッキ4つを持ち上げて振り返ると通路を歩いていた客にぶつかってしまった
「おい!何しやがる!」
身長190㎝程の図体のデカイ男だ
「おーおー、ねーちゃん気を付けないとー」
男と一緒に飲んでいた連中も立ち上がった
「すみません!すぐに拭くもの持ってきます!」
取りに行こうとすると手首を掴んで引っ張ってきた
イッテェなコノヤロウ!
心で舌打ちをした。
「そんなもんですませれるか!こっちはいい気分で酒を飲んでたのに台無しじゃねぇか!」
凄まじい剣幕で凄んでくる
だったらそんなところでボーッとつったってんじゃねぇよ!
座って飲んでろ!
心で悪態をつきまくる。
「お客さん悪かったね!一杯奢るから勘弁してくれっ!」
酒場のマスターが割ってはいる
「そんなもんじゃ気がすまねぇな!」
ちっ、面倒な輩に捕まったそう思ったのもつかの間。
「その辺で勘弁してくれないか?一杯奢るからさ」
そう言って店の奥からやって来たのはこの店の用心棒。
客の肩に手を乗せながら声をかける。
「だからそんなもんじゃ気がすまねぇって言ってんだろ!誰だテメェ!」
男は凄みを効かせる、つまりは金を出せと言うことだろう。
「後ろから見ていた、わざとぶつかっていただろう?こっちも客商売だ、一杯奢る、それで気にくわないなら帰ってくれ」
男は私を掴んでいた手を放し、用心棒の方に向き直った。
「わざとぶつかったって?随分な言いがかりじゃねぇか!もう勘弁ならねぇ!慰謝料だ!銀貨100枚出してもらおうか!」
やっぱり金か。
「わざとは心外だな。こっちは気持ちよく飲んでたってのに」
男の連れも加勢してくる。
にしてもビールを被って銀貨100枚とは大きく出たものだ。
「わかった、払わせてもらうから帰ってくれ」
マスターがこれ以上のいざこざを嫌って払おうとする。
「ん?マスター、つまみ出しちゃまずいのか?」
用心棒が不思議そうに聞いてきた。
用心棒は身長170半ば程、体は引き締まり筋肉質ではあるが相手は5人で図体もデカイ。
この場の誰も用心棒が勝てるとは思っていないだろう。
「テメェ!」
男がいきりたって用心棒に殴りかかった。
用心棒は男の拳をするりと避けて腕をつかみ、背後に回って腕を締め上げた。
「いぃっつ!放しやがれ!」
男は痛みに顔を歪めながらなおも虚勢を張っている。
「おいっ!悪いのはそっちだろうが!何しやがる!」
「マスター、このままつまみ出しちゃまずいのか?」
用心棒は涼しい顔でマスターに問いかける。
「いや、あー、良し、つまみ出して差し上げろ…」
この用心棒が店に来てから一週間程、まさかここまで腕っぷしが強いと思っていなかったのでマスターは呆気にとられている。
「クソッ!離せってんだよ!」
男はまだ大声を上げている。
「まだ懲りないのか?良し、表で相手してやろう」
そう言って手を離し男を自由にしてやるとテーブルの間を通り、ドアを開けて出ていってしまった。
「上等だコノヤロウ!」
男達は用心棒の後について出ていった。
「アリス!大丈夫?」
心配してミーナが声をかける。
彼女は近所に住む女の子で私の一番の友達だ。
「うん、大丈夫。」
そう言って店の外まで様子を見に行った。
店にいた客も従業員も外の見える窓に我先に集まった。
「このやろう!」
男は用心棒に殴りかかった。
さっきのような大振りのパンチではなく脇を締めて手を体の前で構えてモーションの少ない速いパンチだ。
一発目で痛い目にあったので警戒しているのだろう。
「やっちまえドック!」
連れの連中が囃し立てる。
用心棒は男のパンチを最小限の動きで何の苦もなく避け続けている。
そして男の拳を上体を反らせて避けながらみぞおちに前蹴りを入れた。
強い!
「スゴいね!」
ミーナが眼を真ん丸にして驚いている。
男は腹を抱えて座り込んだ。
「あんまり暴力は好きじゃないんだ、こんな所で帰ってくれないか?」
強い上にセリフがカッコいい!
「いいぞー!にーちゃーん!」
「やれやれー」
酒場のギャラリーが面白がって騒ぎ始めた。
もちろん用心棒の味方である!
「なめやがって!」
取り巻きの男達が懐からナイフを取り出した!
「ぶっ殺してやる!」
男達が一斉に襲いかかる!
用心棒は腰の剣を抜きもせずに男達に向かっていった!
切りかかってきた男のナイフを持った手を左手で掴み右手で男の顎を裏拳で打ち抜いた、そのまま向かってきた別の男に伸びた男を投げつけて右から襲いくる相手を上段蹴りで蹴り飛ばし、また別の男の突いてきたナイフを中段回し蹴りで蹴り飛ばして回転しながら距離を詰めて肘でみぞおちを打ち抜いた!
一瞬の早業で三人を仕留てしまった!
「もういいだろう?」
用心棒が言うと男達は動けないやつを担いで悪態をつきながら去っていった。
「スゲーなにーちゃん!」
「マスター!あんな用心棒どこで雇ったんだ?凄腕じゃないか!」
誰が見てもスカッとする撃退劇だった。
私がお礼を言おうと近づいていくと用心棒は何事も無かったようにポケットに手を突っ込み月を見上げてボンヤリ眺めている。
カッコつけてるのか?
ウケでも狙っているのか?
唐突に笑いが込み上げてきたがグッと我慢した。
「はーい!」
今日は忙しいな、常連客に混じって新規の客が多い。
「こっちにもビールをくれ」
「はーい!ちょっと待っててくださいねー!」
はぁ、つまらない人生だ。
6才の頃に私はこの酒場兼宿屋、小山羊亭に口減らしに売られた。
最初は親を恨んだ。
だけど、食うにも困るぐらいだったから仕方なかったんだろう。
今はそんな風に思っている。
幸いにここのマスターはとてもいい人で、奴隷のように働かされる事もないし週一回は休みももらえるし、おこずかい程度だが給料ももらえる。
休みもなく働かされて給料もなく、最悪、夜は泊まりの客を相手に売られる。
そんな話はざらにある。
だから私は恵まれている方なのだ。
だけどこのままここで一生を終えるのかと思うと気が滅入る。
本当は色んな所を旅したい。
叶わぬ夢なのだろうか?
はぁ、そんなことを考えながらそれでも笑顔で働くのだ!
「ヨイショ」
そう言ってカウンターから大ジョッキ4つを持ち上げて振り返ると通路を歩いていた客にぶつかってしまった
「おい!何しやがる!」
身長190㎝程の図体のデカイ男だ
「おーおー、ねーちゃん気を付けないとー」
男と一緒に飲んでいた連中も立ち上がった
「すみません!すぐに拭くもの持ってきます!」
取りに行こうとすると手首を掴んで引っ張ってきた
イッテェなコノヤロウ!
心で舌打ちをした。
「そんなもんですませれるか!こっちはいい気分で酒を飲んでたのに台無しじゃねぇか!」
凄まじい剣幕で凄んでくる
だったらそんなところでボーッとつったってんじゃねぇよ!
座って飲んでろ!
心で悪態をつきまくる。
「お客さん悪かったね!一杯奢るから勘弁してくれっ!」
酒場のマスターが割ってはいる
「そんなもんじゃ気がすまねぇな!」
ちっ、面倒な輩に捕まったそう思ったのもつかの間。
「その辺で勘弁してくれないか?一杯奢るからさ」
そう言って店の奥からやって来たのはこの店の用心棒。
客の肩に手を乗せながら声をかける。
「だからそんなもんじゃ気がすまねぇって言ってんだろ!誰だテメェ!」
男は凄みを効かせる、つまりは金を出せと言うことだろう。
「後ろから見ていた、わざとぶつかっていただろう?こっちも客商売だ、一杯奢る、それで気にくわないなら帰ってくれ」
男は私を掴んでいた手を放し、用心棒の方に向き直った。
「わざとぶつかったって?随分な言いがかりじゃねぇか!もう勘弁ならねぇ!慰謝料だ!銀貨100枚出してもらおうか!」
やっぱり金か。
「わざとは心外だな。こっちは気持ちよく飲んでたってのに」
男の連れも加勢してくる。
にしてもビールを被って銀貨100枚とは大きく出たものだ。
「わかった、払わせてもらうから帰ってくれ」
マスターがこれ以上のいざこざを嫌って払おうとする。
「ん?マスター、つまみ出しちゃまずいのか?」
用心棒が不思議そうに聞いてきた。
用心棒は身長170半ば程、体は引き締まり筋肉質ではあるが相手は5人で図体もデカイ。
この場の誰も用心棒が勝てるとは思っていないだろう。
「テメェ!」
男がいきりたって用心棒に殴りかかった。
用心棒は男の拳をするりと避けて腕をつかみ、背後に回って腕を締め上げた。
「いぃっつ!放しやがれ!」
男は痛みに顔を歪めながらなおも虚勢を張っている。
「おいっ!悪いのはそっちだろうが!何しやがる!」
「マスター、このままつまみ出しちゃまずいのか?」
用心棒は涼しい顔でマスターに問いかける。
「いや、あー、良し、つまみ出して差し上げろ…」
この用心棒が店に来てから一週間程、まさかここまで腕っぷしが強いと思っていなかったのでマスターは呆気にとられている。
「クソッ!離せってんだよ!」
男はまだ大声を上げている。
「まだ懲りないのか?良し、表で相手してやろう」
そう言って手を離し男を自由にしてやるとテーブルの間を通り、ドアを開けて出ていってしまった。
「上等だコノヤロウ!」
男達は用心棒の後について出ていった。
「アリス!大丈夫?」
心配してミーナが声をかける。
彼女は近所に住む女の子で私の一番の友達だ。
「うん、大丈夫。」
そう言って店の外まで様子を見に行った。
店にいた客も従業員も外の見える窓に我先に集まった。
「このやろう!」
男は用心棒に殴りかかった。
さっきのような大振りのパンチではなく脇を締めて手を体の前で構えてモーションの少ない速いパンチだ。
一発目で痛い目にあったので警戒しているのだろう。
「やっちまえドック!」
連れの連中が囃し立てる。
用心棒は男のパンチを最小限の動きで何の苦もなく避け続けている。
そして男の拳を上体を反らせて避けながらみぞおちに前蹴りを入れた。
強い!
「スゴいね!」
ミーナが眼を真ん丸にして驚いている。
男は腹を抱えて座り込んだ。
「あんまり暴力は好きじゃないんだ、こんな所で帰ってくれないか?」
強い上にセリフがカッコいい!
「いいぞー!にーちゃーん!」
「やれやれー」
酒場のギャラリーが面白がって騒ぎ始めた。
もちろん用心棒の味方である!
「なめやがって!」
取り巻きの男達が懐からナイフを取り出した!
「ぶっ殺してやる!」
男達が一斉に襲いかかる!
用心棒は腰の剣を抜きもせずに男達に向かっていった!
切りかかってきた男のナイフを持った手を左手で掴み右手で男の顎を裏拳で打ち抜いた、そのまま向かってきた別の男に伸びた男を投げつけて右から襲いくる相手を上段蹴りで蹴り飛ばし、また別の男の突いてきたナイフを中段回し蹴りで蹴り飛ばして回転しながら距離を詰めて肘でみぞおちを打ち抜いた!
一瞬の早業で三人を仕留てしまった!
「もういいだろう?」
用心棒が言うと男達は動けないやつを担いで悪態をつきながら去っていった。
「スゲーなにーちゃん!」
「マスター!あんな用心棒どこで雇ったんだ?凄腕じゃないか!」
誰が見てもスカッとする撃退劇だった。
私がお礼を言おうと近づいていくと用心棒は何事も無かったようにポケットに手を突っ込み月を見上げてボンヤリ眺めている。
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